MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

なぜ、あの人に部下はついていくのか(ニコラオス・ディミトリアディス他)

『なぜ、あの人に部下はついていくのか』(ニコラオス・ディミトリアディス、アレクサンドロス・サイコギオス)(◯)

 

 本書は、リーダーシップを発揮できる脳を理解し、従来のリーダーシップやビジネスの考え方も活用して、脳をリーダーシップ向きに強化する実行可能な方法を明らかにしています。

 本書では、適応リーダーシップ(BAL)という考え方が提案されています。 BALは、脳(brain)、適応(adaptive)、リーダーシップ(leadership)の頭文字で、①思考、②感情、③脳の自動制御、④人間関係という4つの柱から成り立っています。この4つの観点から、理論と実践をまとめた一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯思考

①脳のパワーを節約する

1)意志力を鍛える3つの鍵

・高次の思考

・強固な価値観

・即座のフィードバック

2)脳のパワーを節約する方法

・自己消費に対処する

燃え尽き症候群に対処する

マルチタスクに対処する

 

②明晰に考える

 積極的な質問→脳の理性的部位に、多くのエネルーを送れる

(質問する際の4つの型)

1)最も優れた質問者

2)聞き上手

3)悪意ある尋問者

4)気難しい一匹狼

 

③遂行能力に重点を置く

1)強力な目的:進むべき方向の見極め、決定内容の理解に有効

2)フロー状態:より多く、より素早く成果を挙げることができる

3)フロー状態に入るには

・内的条件

⇨より大きな目的

⇨高度な専門技能

⇨不安の軽減

・外的条件

⇨新たな課題

⇨ある程度の権限

⇨重大性

4)想像力と遂行能力を強化するには

・問題の背景を理解する

・過剰な分析を避ける

・最も単純な分析ツールを用いる

・実行プロセスを絶えず見直す

・結果を継続的に評価する

・プロセスをできるだけ何度も繰り返す

 

◯感情

①感情スタイルを絶えず改善する

 「感情の自己認識」の改善方法

・状況を詳しく記述する

・その感情を引き起こした行動反応を詳しく説明する

・似たような行動をもたらした出来事のリストを作る

・できるだけ中断せずに、本当の関心を持って自分自身の内面を見つめる

・他の人たちの話に注意深く耳を傾け、彼らの視点の理解に努める

・自分の内外を絶えず精査し、感情のシグナルを探す

②気分を自覚する

・自分を常にポジティブな側に置き、徐々に高エネルギー側に移動する

・自分の気分を頻繁に検討して、適切な感情を体験する機会を自分に与える

③基本感情のパワーに気づく

1)リーダーが注意を払うべき9つの感情

 楽しみ、関心、驚き、怒り、苦しみ、恐れ、恥、ディスガスト(嫌悪)、ディススメル

2)核となる感情への対応方法

・ささやかな成功でも、あなた自身とチームを祝う席を設ける

・新しいデータや人、状況など、別の可能性を探る

・特に予想外の変化を体験している時には、立ち止まって考える

・怒りでいっぱいのときは、これが前進のための最善の道なのかどうかよく考えて、充電に努める

・違う方向の行動が必要なときは、あなた自身と同僚に注意を呼びかける

・驚異の実態を調べることによって、落ち着きを取り戻し、戦略を立て直す

・チームとしての能力と今後の好機に対して、あなた自身とチームに自信を持たせる

・できるだけ距離を置きたいという衝動の理由を念入りにチェックする

④幸福感を高める

・感謝しお礼を述べる

・経験し分かち合う

・ボディーランゲージと行動で示す

 

◯脳の自動制御

①プライミングがどのように働くのか理解する

1)プライミング

 特定の思考や行動へ向かうように脳を準備させることができる(本人がその作用に気づいていない時に最も効果が大きい)

2)適切なプライミング条件を作る5つの方法

・組織の価値観を強調する

・メッセージの前後関係を意識する

・シンボルを無視しない

・言葉遣いに気をつける

・沈黙を過小評価しない

②習慣を維持または変更する

1)習慣を身につけ、維持する3つの段階

・探求:新しい行動を見つけ、検討し、受け入れる

・習慣形成:報酬によって強化される行動を絶えず繰り返す

・刷り込み:習慣が定着する

2)週間サイクルの中のきっかけを取り除いたり、同じ報酬を得られる別のルーティンを選んだりすることによって、好ましくない習慣を変え、より望ましい習慣を身につけることができる。

 

◯人間関係

①集団としての取り組みに重点を置く

・個人的な取り組みよりも強力に重点を置く。
②つながりが重要

・他者との繋がり→脳機能に目覚しい影響を及ぼし、リーダーシップの遂行にも影響を与える可能性がある。

③他の人々の考えを理解する

・他者と直接関わる(安心できる雰囲気、率直な対話、積極的な傾聴を意識する)
④説得する

・三位一体脳アプローチ

1)合理的な指示を出す

2)感情に訴えてやる気を出させる

3)環境を整える
⑤集団脳を評価する

・集団脳を評価す3大骨子診断ツール

1)社員は何を知っているか

2)社員はどう感じているか

3)社員は何をするか
⑥影響を意識する

・影響の原則

1)相互性

2)関与と整合性

3)社会的証明

4)権威

5)好意

6)希少性
⑦脳に話しかける

・迅速な影響を及ぼす具体的な言葉

1)「それだけではありません」

2)「なぜなら・・・」

3)「◯◯をしてもらわなければなりません」

4)「選ぶのはあなたです」
⑧フィードバックを意識する

・重視するのは・・

1)非公式なフィードバック

2)具体的なフィードバック

3)利益指向型のフィードバック

 

 やはり科学的な裏付けがあると安心感が生まれます。あっという間に線だらけ!リーダーシップという身近なテーマについて、論理的に掘り下げてみるいい機会になりました。この本は再読してみたいです。

なぜ、あの人に部下はついていくのか~最新脳科学が明かすリーダーシップの本質

なぜ、あの人に部下はついていくのか~最新脳科学が明かすリーダーシップの本質

 

f:id:mbabooks:20190113084756j:plain