MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

リーダーシップとは何か(リー・クアンユー)

『リーダーシップとは何か』(リー・クアンユー

 グローバル・パースペクティブDay1のケースで学んだシンガポール初代首相リー・クアンユー氏。本書は、1959から90年まで首相在任、その後も2011年まで要職を歴任された長年にわたる著者の政治生活からまとめられた語録です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇リーダーシップ

士気を高めたければ、基準を高めなければならない。基準を高めたければ、法を公正かつ断固として執行しなければならない。1年365日、徹底的かつ適正な浄化が行われる。我が国の労働力を蝕んでいる不正行為の一層に役立つ法案も成立させなければならないだろう。つい一昨年前まで仮病や怠業や妨害行為によって時間外労働を生み出し、休日出勤に対する賃金を3倍に増やすことが当たり前のように行われていた。規律と効率を回復させなければならない(1968年)

 

〇国を治める

・政治とは、人間とその生活を扱うものである。技術であり、科学ではない。可能性を探る技術である。シンガポールでは何を意味するのだろうか?それは、勤勉な国民に恵まれてはいるが、経済基盤が弱く、社会的な規律と効率の高さが必要であるという現実を理解したうえで、賃金が低く天然資源が豊富な他の発展途上国よりも先を行くために何ができるのかを探ることを意味する(1955年)

 

(日本について・・)

・日本が影響力を持つためには、国際感覚を高め、視野をもっと外向きにし、自己中心度を下げなければならない。そして外国人を、特に日本が下にみている仲間のアジア人を、よりオープンに快く歓迎しなければならない。礼儀正しいが温かみと親しみやすさに欠ける社会は、なかなか受け入れられにくく、賞賛されにくく、手本とされにくいものである(1991年)

 

〇経済大国への道

・今日われわれが抱える問題の一つは、繁栄と成長はシンガポールの本質の一部であると一部の若者が考えていることである。天然資源の無い場所に繁栄と成長が自ずと訪れることはない。そのことを彼らに気付かせる必要がある。繁栄と成長は、人間の努力と創意工夫の賜物なのだ。

 

〇自国の文化を守る

・最も重要なのは、言語と教育の問題を政府の命令ではなく親の自由意思によって解決するのである。われわれの務めは、あらゆる母国語の習得機会を平等化する一方で、国語(マレー語)の習得と使用を奨励することにより、国家の団結にむけた道筋を示すこと。そのうえで、子供に対する教育と訓練をどう行うべきかを決めるのは、われわれの地域の父親・母親たちの責任である(1961年)

 

シンガポールでは華人が人口の大多数を占めるが、市民となった者には民族のいかんにかかわらず、平等な権利と平等な機会が与えられる。われわれが高学歴で有能な中国人、インド人、ヨーロッパ人などの移民を大量に引き付けていることができているのは、そのためだ。

 

〇家族と教育を問う

・医療と教育を無償化するのは、そうするだけの余裕がある社会では何の問題もないことである。しかし、発展途上国には、人口を大幅に増やすような余裕はない。急激すぎる人口増がもたらす病弊を防ぐには名ばかりのわずかな金額を払うだけではこれらのサービスを利用できないようにすべきである。親はこうしたサービスのコストを認識しなければならない。4人目以降のこどもについては、無責任な者が自分の子供の養育費を勤勉で経済的生産力のある者に負担させるのを阻止するような財政政策を考案しなければならない。

 

 

 いくつかの言葉を取り上げてみましたが、このほかにも、ご紹介したい言葉が多数ありました。開発途上国を近代国家に導いたリーダーは、冷静に自国を見つめ、シンガポールの国力や地勢、各国との関係、国民(民族)感情を分析し、これだという道を自信をもって示し、あとは多少強引にも体制を整えて国を牽引するというようなイメージでした。

 シンガポールの歴史を学んだあとに読むと、さらに学びが深まると思います。

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