MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

茶色のシマウマ世界を変える(石川拓治)

『茶色のシマウマ世界を変える』(石川拓治)(〇)

 ちょっと感動的な一冊でした。本書は、日本初の全寮制インターナショナル高校ISAK(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢)をつくった、小林りんさんのノンフィクションドラマです。小林りんさんは2年前のあすか会議に出席されたことでお名前とお取組みは知っていたのですが、まさかこんなにたくさんのドラマがあったとは。生い立ちから社会人へ、そしてインターナショナル高校設立の様々な障壁を乗り越えていく物語。いつかきっとドラマ化されそうな予感!

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇小林りんさん(1974年生)のご略歴

・高校を中退し、ユナイテッド・ワールド・カレッジのカナダ校、ピアソンカレッジに留学。帰国後、東大入学。卒業後、モルガン・スタンレー日本法人、ラクーン(ベンチャー企業)、国際協力銀行、UNICEFを経て、無休でインターナショナルスクールの設立に向けて活動。2014年9月ISAK開校。

 

〇留学しても得意だったはずの英語は全くついていけなかった経験の先に・・

 会話についていけなかった時は、自分の英語の能力の生にすることができた。けれど、英語でのコミュニケーションに不自由しなくなり、誰とでも気楽に話せるようになると、逆に自分の取り柄の無さが際立った。自分はこれから一体何をしていけばいいのか、よく分からなくなった。英語はタダの道具であって、自分がやるべきことはその先にあるのではないか。だとしたら、自分の伸ばすべき長所とはいったい何だろう。壁に頭をぶつけて人は初めて本当の自分を知る。

 

〇留学中に友人のメキシコのスラムにある実家を訪ねて

 スラムの存在は知識としては知っていた。けれどそれでも、実際に自分の目でその光景を見つめ、その臭いにさらされるのは、まったく別の経験だった。自分はきっとこの世界を変えられる。少なくとも変えるための手伝いはできる。そう思った。こういう人たちが教育を得ることは、すごい大事だよなと思い始めた。それが教育の大切さを本気で考えた最初の経験でした。

 

〇留学から帰国して

 自分は日本のことをどれだけよく知っているかって言われたら、ほとんど知らなかった。それがある意味で一番大きな発見だったかもしれない。外国のことが知りたくてカナダに行ったのに、一番よくわかったことは、自分が日本のことをよく知らないということだった。

 

〇UNICEF職員としてストリート・チルドレンの保護に携わって

 ストリート・チルドレンのためにやらなければならないことは今自分がやっていることの何十倍・何百倍もあるのに、そのほとんどが予算と人員の壁に阻まれた。それはどうにもならなかった。それが国連職員としてのりんの限界だった。つまりそれが、りんの無力感の本当の理由だった。

 

〇学校を作る仕事に巡り合う

 マルチタスク型人間ですべての職場で大きな成果を上げてきた彼女が学校を作るというこのプロジェクトに取り組むようになってから、他のことをやっている暇が無くなったと言うのだ。しかも嬉しそうに。りんはついに全力疾走出来る仕事に巡り合った。彼女はすでに何年も無休でその仕事をしていた「このプロジェクトを成功させるには、それしか方法がなかった」。

 

〇作りたい学校

 フィリピンの教育支援活動では1日1ドルで暮らす子供の生活を1日2ドルとか3ドルとかにしてあげることができるかもしれない。だけどそれは対処療法であって、問題の根本的な解決にならないことをフィリピンで知った。それを10ドル、100ドルと大きく挙げていくためには、貧困という問題を根本から解決するには、国のリーダーを育てなければならない。そういうリーダーを育てるための学校を私はつくりたい。

 

 ここでは紹介しきれませんが、開校までの苦労話は山ほど書かれています。それでも協力者が現われ、震災で計画がとん挫しかかっても、逆にサマースクールの開校という形で経験・ノウハウが蓄積されそれが振り返ってみれば結果的には良かったり。自分だけではどうしようもない力が働いているような、そんな周りを惹きつける魅力があるのも小林りんさんなのでしょう。

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