MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

アリエリー教授の「行動経済学」入門(ダン・アリエリー)

『アリエリー教授の「行動経済学」入門』(ダン・アリエリー)(◯)

 最近、セミナーなどの集客をすることも多くなったので、行動経済学を学び直してみたくなり、著者の本を4冊買ってきました。その中で、最も読みやすい印象だったのが本書。これはわかりやすい!行動経済学で一つの領域になっていますが、これまでに読んだ他の本と比較してもわかりやすいです。ここからコンテンツにつながる要素もたくさんありました。この分野に手をつけていない方は、一度、行動経済学を学んでみることをお勧めします。いかに、日常生活でこの分野を知っている人にハマっているかわかりますよ。

 

(印象に残っているところ・・本書より)

◯デフォルト

・「臓器提供プログラムに参加したい人はチェックしてください」

・「臓器提供プラグラムに参加したくない人はチェックしてください」

⇨どちらのチェックが多いか?人はこれほどの難題に直面するとどうなるだろうか?なんと、何もしない。デフォルトは一番楽。削除するのも加えるのも面倒。デフォルトはお勧めだとみなされる。あとは、選択した方に合うような理由を考え出す。

 

◯ダイエット

・私たちは目でも食べている。胃袋では食べた量がわからず、目でも判断している。だから、お皿の大きさは重要。

 

◯ソーシャル・プルーフ

・「他の人はどうしているだろう。他の人がやっていることは素晴らしいことに違いないからやってみよう」と考えてしまう。

・「行列店の方が美味しいに違いない」と思うのは、人間は本能的に、他の人がやっている行動は正しいはずだと思い込んでしまうから。

・人が周囲に同調しがちだという性質を利用したいなら、人が真似したいと思うような効果的な集団を考えることが重要。ホテルの連泊客のタオル再利用であれば、「この部屋に泊まったお客様の75%が再利用しました」というメッセージ。

 

◯バケツの中の一滴

・問題が把握できる規模ならば、自分も何かの役に立てるかもしれないと思えるが、問題があまりに大きいと、自分に一体何ができる?と思ってしまう。

・問題が大きくなるほど、人の関心は小さくなる。

 

◯感情と数字

・物事を統計的に数字の問題として捉えた途端、私たちの感情のスイッチは切れてしまう。「一人の死は悲劇だ。しかし100万人の死は統計学上の数字に過ぎない」

・相手が一人なら気にかけるが、大勢なら関心がなくなる。

・より多くの寄付金を集めようとした場合、つい問題の大きさを強調したくなるだろう。でも実際は、大きな問題は人々の感情のスイッチを切ってしまい、単なる統計的な数字に過ぎないと思わせてしまう。

・感情に訴える方法は統計を使う方法とは共存できない。相乗効果は得られない。

 

◯双曲割引

・ものの価値というのは、今と明日とでは大きく異なる。でも7日後と8日後ではあまり違わない。「今」と「少し後」の間にものの価値は急な角度で下がるが、「後」と「さらに後」では価値の下がる角度はなだらかだ。

 

◯代替報酬

・私たちの目標は、人々の良い行いに導くためのいわば「歯磨き粉」を見つけることだと考えて欲しい。人は歯を守りたいから歯磨きをするわけではなく、歯磨き粉を味わいたいから歯を磨く。それが代替報酬の本質。

・歯磨きをする時、歯磨き粉が口の中に運ばれる。人が欲しいのは爽やかなミント味だ。なぜフロスは習慣になりにくいのか?代替報酬がないからだ。ミント味のフロスもあるが、歯磨き粉で十分なミント味を味わっているから、それ以上必要だとは思わない。

 

◯お金の不思議「相対性」

・15ドルのペンが5ブロック先のお店では7ドルで売っていれば、わざわざ歩いて買いに行くが、1015ドルの高級スーツが5ブロック先のお店で1007ドルで売っていてもわざわざ買いに行かない。同じ8ドルの差だ。でも私たちはつい、お金を割合で考えてしまう。だから、大きな買い物になるとたちまち、よく考えずに決断してしまう。

・クレジットカードがこれほど普及している理由は相対性。クレジットカードの支払い額は全体としてかなり大きなものなので、少しぐらい増えも構わないと思ってしまう。

 

◯お金の不思議「支払いのタイミング」

・消費と支払いのタイミングが同時だというのが、現金払いが嫌な理由の一つ。

 

◯お金の不思議「心の中の財布」

・心の会計とは、お金が用途ごとに、別々の財布に厳格に分けられていると思ってしまう。一つの封筒に入れたお金より、4つの封筒に分けて入れたお金の方が、使うお金が減る。

・ポイントというのは心の中に新たな別の財布を作る手段。「こいつは別の方法で手に入れたものだから、何か特別なことに使ってもいいだろう」と思わせる。

 

 脳って不思議ですね。旅行に行けば普段買わない単価のものでも買ってしまうのは、「心の中の財布問題」でかなり腹落ちしました。行動経済学マーケティングにも使えますし、自分の行動を改める(立ち止まる)際にも役立ちますね。他にもいろいろ知ってみたい欲求が湧いてくる一冊でした。

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