『志高く 孫正義正伝新版』(井上篤夫)(◯)
本書はソフトバンクグループ代表の孫正義さんの米国留学から起業、ソフトバンクループが形成されていく過程が様々なエピソードとともに紹介されています。ものすごいエネルギーが行動で示されていることがよく伝わってくる内容で、孫正義さんがどんな方かを垣間見れる良書だと感じました。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯米国留学〜編入〜特進(高校生時代)
「いますぐ三年生にしていただけませんか?」
四年生のセラモンテ高校一年生は日本の中学三年生にあたる。日本の中学を卒業している孫は高校二年生に編入していた。
「でも、一刻も早く大学に進みたいんです」
翌日、孫は高校三年生に進級した。
五日間、彼は食事中も、トイレでも、片時も教科書を離さず猛勉強した。
その様子を見たトルヒーロ校長の英断で、三年生からさらに四年生になる特例を認められた孫は、間髪容れず暴挙とも思えることに挑んだ。いきなり大学入学のための検定試験を受験したのである。
⇨試験管に辞書の使用と時間の延長を申し入れ、試験の3日間午前零時ごろまで回答を続け、結果、高校生活をわずか三週間で終え、大学生になることができた。
・半年余りで「孫食堂」は廃業ということになったが、いい経験になった。ビジネスは一人ではできないが、パートナー選びは慎重でなければならない。
・「金儲けは、いいことだ。金にキレイ、キタナイはない」と藤田は言い切っている。孫はこの本によって、日本人的な儒教倫理に縛られて、「金儲けはキタナイこと」と思い込んでいた固定観念を粉砕されたのである。
◯発明王
・一日に五分間だけ、自分に勉強以外の時間を許そうと考えた。一日に五分間の仕事をして、
・1ヶ月に100万円以上稼げる仕事はないものか。発明のプロセスは大きく3つの方法がある。
①問題解決法
何かの問題や困難が生じたとき、それを解決するための方法。問題を発見し、それを三段論法で解決策を考える方法。
②水平思考
逆転の発想。従来丸かったものを四角にしてみる。赤いものを白くする。大きいものを小さくしてみる。
③組み合わせ法
孫が追求し続け、大量に発明できたのは3番目の方法による。
⇨「一日に一つ発明をする」
英単語カードに思いつくままに名刺を書いた。例えば「みかん」「くぎ」「メモリー」など。カードが300枚ほどできたら、それをトランプのようにめくって三枚抜き出す。3つを組み合わせると新しい商品が誕生する可能性がある。まるっきり意味のない組み合わせが、奇抜な発想を生む。
◯数字
・当時から孫は大きな数字をつかむのに極めて優れていたが、細かい数字は初めから眼中になかった。
・お金を持たずして家を飛び出し、町中を闊歩することもある。そもそも財布を持つという習慣がない。
◯行動
・躊躇するということがない。すぐさま行動に移す。これは孫を貫く行動原理である。
◯能力
・「孫には並外れた能力が2つある」(ソフトバンク・アメリカの社長を務めたテッド・ドロッタの)
①問題の本質を見極める驚くべき能力。本質を見極めて素早く対処する。
②信じがたいほど一所懸命に仕事をする。これは孫の並外れた生き方だが、ただ一所懸命に仕事をしている人ならばいくらでもいるだろう。孫が常人と違うのは次々と新しい視点を引き入れること。そうした能力に長けている。
◯約束は守る
・「例えば、たかが500億円やそこらで友情を裏切ったら、所詮その程度の人間なんだ。そういう人間に僕はなりたくない。
◯日本での起業
・とりあえず会社を作ったがやることが決まっていない。たちまち20を超える事業のアイデアを思いついた。孫のユニークさは、選択肢のそれぞれに独自の指数をつけたことにある。事業ごとに作成した書類の束が、それぞれ40センチ近くになった。最終的には40種類あったから合わせれば10数メートルになった。
・「売上高は5年で100億、10年で500億」「いずれは豆腐のように、一丁(兆)、二丁(兆)と数えたい」
◯肝炎で入院
・自宅療養を許された孫は、自宅にパソコンを入れ、一日に七、八時間も仕事をした。当然のように体調を崩し、病院に舞い戻ることになった。病院の孫は孤独だった。
・その時に徹底的に考えた。自分は何のために仕事をしているのかと・・。その結論が人に喜んでもらえる仕事がしたいということでした。
◯NTTとの戦いの日々
・ 孫は夜中の3時、4時まで、土曜も日曜も盆も正月もなく働いた。まさに20年前の創業の時と同じ、昂揚感に満ちていた。「会社に命をかけてやっているんです。お客さんをまたしているから繋がなきゃいけないだということで、銭金は関係ない。損得も関係ない。なんぼ赤字を出しても構わない」
・「いつも頭が朦朧としていました」。だが孫に悲壮感はなかった。NTTと戦っている時から、実は楽しくてしょうがなかった。苦しいけど楽しい。自分がやりたい方向性がはっきりと見えた。それに全力投球できて、完全燃焼できるということが楽しかった。
◯事業化孫正義
・「僕にとっての事業家とは、道路を作る、電力のネットワークを作る、社会のインフラそのものを作ること。つまり社会の枠組みを変えることだ」。そこが孫の一番の生き甲斐であり、喜びであり、血湧き肉躍ることなのだ。世界で最先端のもの、画期的なものを作り出す喜びは・何者にも代えがたい。
・創業者型の経営者というのは、縮小均衡の後に成長シナリオを描いて、もう一度、国全体を拡大均衡に引っ張り直すことだ。「そうでなきゃ、暗いぞ、つまらないぞ、悲しいぞ。真のリーダー、真の船長というのは、みんなに相談して行き先を決めるものじゃない。もう沈没しそうで後がないのなら、船員を少々ぶん殴ってでも、マストの一本や二本、のこぎりで切り倒したとしても、いうことを聞かんやつについては、『じゃあ、お前、船から飛び降りろ、ボケ』と言ってでも、船に乗った残りの人間を、残りの大多数の人を、ちゃんと大陸に送り届けなくちゃいけないんだ」
・「多少紆余曲折があろうが関係ない。とにかくたどり着くことだ。要は拡大均衡にもう一度引っ張れる力、見た目の優しさというもの、僕に言わせればしようもないこと。人気取りは何にもならん」
今を生きるビジネス界の改革型リーダーとして、代表的な存在である孫さん。その生き様を振り返ること、起業前の10代の頃から、すでに熱意や行動力に現れていて、エピソードの数々がすごい!ぞっこんだった彼女との結婚式を2度もすっぽかすなんて、普通ありえないことがありえてしまうのが、孫さんなのか。とにかく興味深くワクワクしながら読めました。