『言いにくいことを言わずに相手を動かす魔法の伝え方』(加藤アカネ)
元ANA CAマネジャー/TOP VIP部門責任者である著者が、VIP担当者に代々伝わる、言いにくいことを言わずに相手に気持ちよく動いてもらう方法をまとめた本書。気まずいお願いをするとき、双方をまるく収めるとき、優劣をつけるとき。仕事をしていると必ず起こるこれらのシーン。解決策を「言いにくいことをいかに上手に伝えるか」ではなく、「いかに言わずに動いてもらうか」に見出した方法とは。トラブルが多そうなお仕事だけに、役立つ要素がたっぷりです。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇反対意見の人に、主張を通す
・NG:「ルールですから」
・OK:「何かお困りですか」
⇒正論を振りかざすと気分を害す。反対意見の人の心を動かすには、別の意見をぶつけるのではなく、相手がその結論に至った経緯や理由を聞く。「正しい、正しくない」ではなく、相手の感情がどのように振れているのかに焦点をあてて、伴走者になる。
〇会議中、自分の意見を言わずに思い通りの結論に導く
・NG:「私としては・・・」
・OK:「今〇〇さんがおっしゃったのはこういうことですね」
⇒自分に近い人の発言を受ける。相手が自分の意見のどこに引っ掛かってこの意見が通らないのか、どうしたらその引っ掛かりを取り除くことができるのか、回避できるのかを相手の立場に立って考える。
〇話の弾まない相手が気持ちよく話し出す。
・NG:「今日はこんなことがあって」
・OK:「キドニトチカケ」
キ)気候
ド)道楽(趣味)
ニ)ニュース
ト)土地
チ)知人
カ)家族
ケ)健康
⇒「挨拶+一言」をお客様との会話のきっかけとするためには、相手が語りたくなる質問を心がけること。そして、深追いをしないこと。
〇怒っている人に正論を言わずになだめる
・NG:「ご迷惑をおかけします」
・OK:「不快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ありません」「今後、改善に勤めます」
⇒先味、中味、後味の使い分け。先味として、こちらから「気にしています」というサインを発することで、怒りが頂点に達するのを少しだけ引き留めておくことができる(「何かお困りのことがございましたら、お気軽にお声掛けください」)。
〇騒ぐ人を静かにさせる
・NG:「他の人の迷惑なので」
・OK:(声のトーンを下げて)「だいぶにぎやかになってきちゃっています」
⇒サービス側が目指すべきなのは、すべてのお客様が不快を感じる要素を速やかに取り除くこと。先味をにぎやかな人に対しても使う(「ご旅行でいらっしゃいますか、どちらまで行かれるのですか」⇒目的は「私があなたに目配りしていますよ」と暗にお伝えすること)。注意をするときは、声のトーンを落として、「とっても楽しそうですね」「だいぶにぎやかになってきちゃっていますので」と話しかける。こちらの声の大きさを小さくする。これがとても重要。
〇泣き叫ぶ赤ちゃんのクレームをつけるおじさん、どちらも立ててまるく収める
・NG:「お静かにお願いします」
・OK:「できることがないか確認してまいります」
⇒両方の気持ちに寄り添うこと。ご両親には、「飛行機は初めてですか?もしかしたら、気圧差で耳が痛いのかもしれませんね」などとお声掛けし、言葉と行動で「大丈夫ですよ」「いつでもお手伝いできますよ」というメッセージを伝える。クレームを言うお客様には、「申し訳ございません。ただ今ご様子をうかがって、できることがないか確認してまいります」と言って、お怒りの方の心のささくれを少しでも軽くできるように配慮する。「ご迷惑をお掛けしております」など、赤ちゃんの連れのご家族に責任を負わせるような言い方はNG。
〇意見の違う部下のやる気を削がずに仕事をさせる
・NG:「細かいことは気にするな」
・OK:「さらに」「ますます」「もう一段」
⇒「素晴らしいね」と褒めた後の一言。「ただ」「でも」「しかし」は、小言の印象が残る。「さらに」「ますます」「もう一段」などのポジティブな言葉で繋ぐ。
〇先約をしている人に「別の約束が入ってしまった」と角を立てずに断る
・NG:「ご相談に乗っていただけますか?」
・OK:「こちらとこちらの日であれば、すぐに伺うことができます」
⇒先約の相手に対してすべきは、「相談」ではなく「お願い」。正攻法は、「折り入ってお願いがあります。大変申し上げにくいのですが、この日の予定を変更いていただけませんでしょうか」。
うっかりパターンは、「せっかく大切なお話を頂いていたにもかかわらず、私の不手際でこの日に先約があったことが判明しました。大変申し上げにくいのですが、予定を変更していただけませんでしょうか」。
本来の約束より早い日程を伝えるパターンは、「もし、可能でしたら、明日以降、ご都合のよろしい時間を教えていただけないでしょうか。私はこちらとこちらの日であれば、すぐに伺うことができます」
対お客様だけでなく、社内で使う言い回しについても多く記載されていたのが印象的です。物の言い方ひとつで結果が随分変わってくることってありますよね。あとで、「もっとこういう風に言えばよかった」と。その場ではこちらも感情が高ぶって、冷静には言えない心の状態。こういった書籍で着眼、発想を得ておくことも大事かなと思いました。
ANAのVIP担当者に代々伝わる言いにくいことを言わずに相手を動かす魔法の伝え方
- 作者: 加藤アカネ
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2016/07/11
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