『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン)<2回目>(〇)
最近コーチング関係で話題にのぼったため、再読してみました。最小時間で成果を最大にする。コアな部分に特化して、周辺部分を切捨て、ど真ん中に集中する。でも実際には、切り捨てる部分が気になって、切り捨てることができない。そんな誰にでもある思いに切り込んだ本書。「やらなくては」ではなく「やると決める」、「どれも大事」ではなく「大事なものはめったいにない」、「全部できる」ではなく「何でもできるが全部はやらない」へ。大胆に発想を切り替えるための一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇エッセンシャル思考モデル
①考え方(選択)
適当に全部やろうとは考えない。トレードオフを直視し、何かを取るために何かを捨てる。
②行動(ノイズ)
世の中の大半はノイズである。流されずに、たくさんの些末なものごとの中から、少数の本質的なことだけを選び取る。
③結果(トレードオフ)
全てを手に入れることはできない。何かを選ぶことは、すなわち何かを捨てること。自分でコントロールし、質の高い仕事をする。
■何をやるか
「すべて」⇒「正しいこと」
■なぜやるか
「他人の期待」⇒「正しい理由」
■いつやるか
「今すぐ」⇒「正しい時期」
〇エッセンシャル思考の人は自らトレードオフを選び取る
・何かを諦めなくてはならない→何に全力を注ぐか
「完璧な答えなど存在しない。あるのはトレードオフだけだ」(ドラッカー)
「偉大な企業をつくるか、偉大な思想をつくるか、どちらかだ。両方は選べない」(ジム・コリンズ)
〇正しく減らす技術
①見極める
・声の大きい意見に反応する→ノイズの中のシグナルを探す
・話のすべてを聞こうとする→語られないことに耳を傾ける
・情報の渦に呑み込まれる→情報の本質をつかみ取る
・遊びを軽視する→遊びを重視する
・1時間の睡眠を削れば1時間の仕事ができる→1時間眠れば数時間分の生産性が手に入る
・何でもyesという→上位10%にだけyesという(90点ルール)
・「みんながやっていることだから」→「自分の求めていることだから」
・突然舞い込んだチャンスへの対処‥最低限の基準を3つ書く、理想の基準を3つ書く。すべてを満たすものだけを検討する。
②捨てる
・プレッシャーに負けてyesという→きっぱり上手にNoという
・何でも引き受ける→本当に重要なことだけを引き受ける
・こんなにお金(時間)をかけたのだからやめられない→これから投資するとしたら投資するか(サンクコスト)
・失敗を認めたくない→進んで損切りする
・良くすることは何かを加えること→良くすることは何かを削ること
・あらゆる細部に愛着がある→不要な細部は冷徹に切り捨てる
・Noと言うのに苦労する→Noと言わなくてもいいようにあらかじめルールを設定する
③仕組化する
・最善のケースを想定する→最悪のケースを想定する
・土壇場にならないと頑張らない→準備と計画に全力を注ぐ
・応急措置を積み重ねる→本当の障害を取り除く
・多くを望み得るものが少ない→小さくはじめて大きな成果を得る
・派手な勝利を求める→地味でも着実に勝ちにいく
・昨日や明日の問題について考える→目の前の問題を考える
〇上手に断る
・判断を関係性から引き離す
頼みを断ることが相手を拒絶することだと感じるが、判断を関係性から切り離して考えたとき、判断はより明確になり、それを伝える勇気と思いやりも生まれてくる。
・直接的ではない表現を使う(やんわり断る)
・トレードオフに目を向ける
ここでyesと言ったら何を失うのだろうか?
・誰もが何かを売り込んでいる
相手が何を売り込もうとしているのか。自分はそれによって何を失うのか。
・好印象よりも敬意を手に入れる
自分の時間を安売りしない。
〇断り方のレパートリーを増やす
・とりあえず黙る
・代替案を出す
・予定を確認して折り返す
・自動返信メール
・どの仕事を後回しにするか
・冗談めかして断る
・肯定を使って否定する
・別の人を紹介する
〇編集の4原則
①削除する
②凝縮する
③修正する
④抑制する
本書は、使い方が大事。まったくの初心者のうちから、自分がやりたいことだけを引き受けるという発想では、そもそも知見や経験が広がらず、選択の幅を最初から狭めることになる。チームワークも損ねることもある。能力・経験を高めた人が、使い方をわきまえてこの発想を取り入れれば、とても効率的になり成果もアップする。使い手を選ぶ発想だと思いますが、なかなか他にない切り口で大胆に書ききっているところがおもしろいと思いました。