MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

クレーム対応 最強の話し方(山下由美)

『クレーム対応 最強の話し方』(山下由美)(◯)

 著者は元地方公務員で、1日200件もの苦情に対応。クレーム解決力がすごすぎて、「クレーマーファンクラブ」まで作られるようになったという強者の方です。独立してからは、指導企業1000社・延8000人以上にのぼるクレームコンサルタント。苦情対応、クレーマー対策を具体的にどのように進めればいいのか、事例も含めて分かりやすく解説されている実践書です。とても参考になる良書だと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

 ◯クレーム対応のよくあるNGパターン

①過剰にサービスする(⇨クレームは得になる!)

②怒鳴る相手に冷静に振る舞う(⇨こっちの気持ちわかってないよね!)

③誤解を解こうと、正しい情報を伝えようとする(⇨言い訳?反論するの?)

④ひたすら謝る(⇨やっぱり自分が正しいんだ!)

⑤「他でやってくれた」という言葉を鵜呑みにする(⇨ラッキー!)

⑤怒っている相手の話を傾聴する(⇨怒りが長続きする)

 

◯お客さまへの3大誤解

①こちらの話した通りに伝わっている

②こちらの話が正論なら納得してくれる

③納得してくれれば引き下がってくれる

 

◯やることは一つ「超共感法」

・「怒っているお客さまに「そうなんです」(YES)と言わせる」

⇨否定脳を肯定脳に切り替えさせる

・早い段階でお客さまからYESの言葉が出てくれば、ファーストアクションがうまくいったということ。

・クレーム対応では、お客さまの怒りの端緒がなんであったかは重要ではない。影響するのはお客さまへのファーストアクション。多くの人がファーストアクションを「言い訳」や「正しい説明」でスタートしてしまう。クレーマーを除く大半のお客さまは、何よりも自分の困り事に一刻も早く対処して欲しいのであって、言い訳や正論を聞きたいわけではない。

・否定脳のお客さまは正論であっても素直に聞き入れてもらえない。「責任をなすりつけ、自己保身に走っている」と曲解されてしまうと、怒りの矛先が原因である「出来事」から「あなたの人格」に移る。クレーム対応の成否はファーストアクションが99% を決める。

 

◯「そうなんです」を引き出すために

・クレーム解決の流れ

⇨お客さまからクレームを受けた

⇨お客さまから「そうなんです」の一言を引き出す

⇨「(できるだけ)お客様の望む答え」を提示する

⇨クレーム解決

・誤解しないで欲しいのは、相手の感情を把握しなければならないからといって、話をじっくり聞いたり、無理に共感したりする必要はないということ。クレーム対応で大切なのは、相手への共感ではない。

①お客様のリズムに合わせる(声の大きさやテンポ、体の動き)

②「お手間をおかけして申し訳ございません」「◯◯な思いをさせてしまって誠に申し訳ありませんでした」と形容詞をつけてお詫びをした後は、相手に「そうなんです」と言わせることだけを考えて、話を聞く。

③「そうなんです」と言わせて、怒りの原因を探る

③お客さまの感情(悲しい、悔しい、不安、恥ずかしい)をキャッチする

④お客さまの気持ちを代弁する

 

◯怒りの原因

①心やプライドを傷つけられた

②想定外の出来事が起きた

役割期待が裏切られた

 

◯タイプ別ポイント

①初めから怒鳴るお客さま

⇨怒鳴るお客様と同じように怒鳴るくらいのトーンで謝る

②話の途中で突然キレるお客さま

⇨大きな声で誤った後、キレた理由や望む答えを話し始めたら、お客さまの気持ちを肯定して、「そうなんだよ」を引き出す。

③理詰めのお客さま

⇨お客さまの話や考えに感心していることを伝えて、承認欲求を満たす

④自分が正しいと主張し続けるお客さま

⇨要望に応えられないことを毅然とした態度で伝える。

⑤言い分が見当違いなお客さま

⇨怒りの背後にあるニーズや問題の本質を探り、本来の解決策ではなく、次善作を提案する。

⑥多人数でクレームをつけるお客さま

⇨キーパーソンに絞って話をする。主たる話は一人しかしないことを態度で示す。

⑦シニアのお客様

⇨話が長い、何度もクレームが続くシニアには、時間を区切って対応する。怒鳴るシニアには、大きな声で対応し、「聞き間違いがあっては困りますので、会話を録音させていただきます」と告げ、プレッシャーをかける。

 

 誰もが対処したくないし、ストレスだし、できれば避けたいクレーム。しかし、この本を読んでいると俯瞰目線も取り入れつつ、相手がどう変化するのか試してみたくなってしまう、不思議な感じです。今度クレームに直面することがあれば、是非試してみようと思います。

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