『GIVE&TAKE』(アダム・グラント)(〇)
まず冒頭、監訳者である楠木建教授の解説で興味が惹かれます。「要するに『情けは人のためならず』という話ではあるが、本書は百凡の自己啓発書ではない。本書で展開される議論はどこをとっても行動科学の理論と実証研究に裏打ちされている。論理が実に頑健。個人的な経験や思いつきで書かれた自己啓発のビジネス書とは一線を画している。」。
ギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカ―(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)。この人間の3つのタイプがもたらす結果とはいかなるものか。特に、ギバーの成功がいかに過小評価されているか、それを知ってもらうことを目的に書かれた一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇大きな成功を収める人々の共通点
・やる気
・能力
・チャンス
・人とどのようにギブ&テイクするか
〇テイカ―
・常に与えるより多くを受け取ろうとする。ギブ&テイクの関係を自分の有利になるように持っていき、相手の必要性よりも自分の利益を優先する。
・テイカ―が勝つ場合には、たいてい他の誰かが負ける。
・初対面で一番好感を持たれるのは「権利意欲が強く人を操作したり利用したりする傾向のある人々」
〇ギバー
・ギブ&テイクの関係を相手の利益になるように持っていき、受け取る以上に与えようとする。
・一番生産性の低いエンジニアはほとんどがギバー。ところが、もっとも生産性の高いエンジニアも、やはりギバー。
・ギバーは成功から価値を得るだけでなく、価値も生み出す。それがテイカ―やマッチャーとは違っている。
〇マッチャー
・与えることと受け取ることのバランスを取ろうとする。常に公平という観点に基づいて行動する。多くはこのタイプ。
・マッチャーは、積極的に人を助けようとするギバーや保険として余分に人脈をつくろうとするテイカーに比べ、小さなネットワークを築く傾向がある。マッチャーはたいてい、「あなたが何かをしてくれるのなら、私も何かしてあげますよ」という態度に基づいて行動している。だから、マッチャーは、「自分が得た利益が、人に与えた利益と少なくとも同じくらいになるような関係だけに留める。人を助ける度にお返しを求めるなら、ネットワークは非常に狭いものになるだろう」。
〇与えること
いつの時代も変わることのない特徴。それは、生きるうえでの基本方針を考えてみれば、人はたいてい「与えたい」と思うもの。
〇成功しているギバー
4つの重要分野で、独自のコミュニケーション法を用いている。
①人脈づくり(以前から付き合いのある人との結びつきを強める)
②協力(協力して業績を上げ、彼らの尊敬を得られるような働き方)
③人に対する評価(才能を見極めて伸ばし、最高の結果を引き出す実用的テクニック)
④影響力(相手に自分のアイデアや関心ごとを支持してもらえるようなpresentation、販売、説得、交渉をするための斬新な手法)
〇生来の傾向
自分にまったく利益をもたらさない人間をどう扱うかで、その人がどんな人間かはっきりわかる。
〇受け取る前に与えるテイカー・マッチャー
人は自分が受け取りたいものを先に相手に与えることで、ギブ&テイクの関係を利用できる。助けてくれた人にお返しをするどころか、テイカ―とマッチャーはしばしば先を見越して、近々助けてもらいたいと思っている人に親切にする。
〇弱いつながりのメリット
強いつながりは「絆」を生み出すが、弱いつながりは「橋渡し」として役立つ。新しい情報により効率的にアクセスさせてくれるからだ。強いつながりは同じネットワークの中だけで交流するので、同じ機会を共有することが多くなる。それに対し、弱いつながりは、異なるネットワークのほうに、より開かれているので、新しいきっかけを発見しやすくなる。
〇休眠状態のつながり
被験者によれば、休眠状態のつながりからもらったアドバイスのほうが、現在進行形のつながりからもらったものよりも価値があった。過去3年に渡り音信不通だった間に、それぞれが新しいアイデアやモノの見方にされされていたために、休眠状態の繋がのほうが、より多くの新しい情報をもたらすからである。
〇恩送り
テイカ―は自分を偉く見せて、有力者に取り入るためにネットワークを広げ、マッチャーは人に親切にしてもらうためにネットワークを広げる。ギバーは、「与えるチャンス」を生み出すためにネットワークを広げている。これは、気前よく自分の時間や専門知識を分け与えるたびに、自分のネットワークの人々にギバーとして行動していくように背中を後押ししているということ。
〇時代による効果の増幅
密接に結びつた社会は、人間関係や個人の評判をより見えやすくしている。これはつまり、テイカ―である代償も、ギバーである利益もどちらも増幅するということ。ほとんどの人がマッチャーとして「公正の原則」を破ったテイカーを懲らしめ、ギバーの寛大さに報いる。その結果、ギバーは豊かなネットワークを発展させ、それを強化することができる。
ここまでで、本書の約半分。他にも示唆になるいいことがたくさん書かれています。自分はどのタイプかと考えれば、ときににマッチャーだったり、ときにギバーだったり、確かに一定ではないかもしれません。が、ギバー的側面は間違いなく好きなタイプ。これは、損得ではなく、好き嫌いなのかなとも思ってしまいます。一方で、ギブができるくらいに、他で余裕を作っておきたいとも思います。知識も時間も人間関係も、好循環を築いていく中で、ギバーとしての行動も楽しみながらできる、そんな余裕感をもって過ごしたいものです。
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)
- 作者: アダムグラント,楠木建
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2014/01/10
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログ (8件) を見る