人蕩し術（無能唱元）
『人蕩し術』（無能唱元）（◯）
ずっと前から気になっていた本。「人たらし術」というタイトルからあまり良い気がせずに、そのまま先送りしていましたが、信頼できる人からの勧めもあり読んでみました。約１万円しますが、結果的に、読んで良かった！という内容です。「人たらし術」という表現ではありますが、言い換えると、「人とうまくやっていく方法」という感じ。
「魅は与によって生じ、求によって滅す」。相手の欲求を満たす前にまず自分を満たすこと。その上で、相手の欲求を満たすことができれば、人間関係は良くなる。逆に、自分の欲求を満たすことを目指せば、人は離れていくもの。順番が大事。
（印象に残ったところ・・本書より）
◯魅力とは
①「他人を自分に引き寄せる力」
②「魅は与によって生じ、求によって滅す」
魅力は、他人に「何か」を与えれば生じ、他人に「何か」を求めれば消えるもの。
③「何か」とは５つある。そのうち物質的なものは１つで、他の４つは無形。
④４つの無形なものを与える機会は、会話が最も多い。
⑤お金や物などは、４つの無形のものを他人に与えれば、その代償として他人からそれが自分に支払われる。
⑥私たちは五大本能的衝動についてよく知り、自分のこの本能的衝動を自ら充足し、他人のそれも充足してあげるならば、誰でも、素晴らしい魅力を自分の身に付けることができる。
◯五大本能的衝動
①生存本能
「生きていたい」「死にたくない」「飢えを恐れる」。ある人にお金や物を与えれば、その人の飢えへの恐怖は薄らぐ。
②群居衝動
群れをなして生きようという衝動。友情、友愛を示してくれる人に多くの人々が魅きつけられる。
③自己重要感
人は自分は重要な人物であると思いたがる。他人の自慢するのを聞いたり、人々の優れた点を認めたり、それを賞賛したりする人物が、多くの人々を自分に魅きつけることができる。
④性欲
動物の性欲と人間の性欲は全く異なる。人間の性欲には、幻想あるいは夢のようなものが付随する。その幻想には、③の自己重要感が大きく関わっていることが多い。
⑤好奇心
人間は心を刺激するもの、あるいは心の糧というものを求める。前者は感動を欲し、後者は主として教訓あるいは新知識習得の願い。
◯五大本能的衝動のポイント
・①生存本能、②群居衝動、③自己重要感の３つは、相手のその欲する物を与えよ。
・④性欲、⑤好奇心の２つは、その反対に、相手の欲する物を、巧みに与えないことによって、相手の自分に対する関心を大きく駆り立て、もって自分の魅力を大きく発揮することができる。
◯ギブ・アンド・テイクで成り立つ世の中
・生物はすべて、出し入れを行いつつ、生体のホメオスターシス（恒常性）を保っている。
・人は他人から何かを欲するとき、その人に何かを支払わねばならない。
・人々は、「得を求め、損を少なくする」ことが自分の行うべき生活行為だと錯覚している。これは根本的かつ決定的な間違い。我々は人に何かを与えなければ、決して快く相手から何かを得ることはできない。
◯自慢と愚痴
・自慢とは、「他人に助けを求めている」ということ。すなわち、聞いてもらうという助力を必要としている。
・自慢は自己重要感を充足し、愚痴は群居衝動を充足する。水商売におけるサービスとは、たいていの場合、自慢や愚痴を聞いてあげることでお金を頂戴している。
◯まずは自分が豊かになることが大切
・「言うは易し、行うは難し」。なぜ難しいかと言えば、例えば、他人の自己重要感を高めてあげようとしても、あらかじめ自分の自己重要感を自分の手で高めなければ、苦しくなってきてしまう。
・自分を自分でまず尊敬していなければ（自尊）、他人のそれを高めているうちに、自己劣等意識がどんどんと増大し、みじめな気分に陥ってしまう。
・物質的にも精神的にも、まず自分が富んでいなければ、他人に何かを与えることは至難の技。
人の心の理解と、自分のコントロール。まずは、自分のコントロールから。これって、セルフマネジメントそのものって感じです。だからこそ、自分の調子を整える術を身につけることって大事。本書は大半が他人との関わりについて書いていますが、大事なところは文字数的には少数の部分ですが、自分自身の整え方。人生に長く活かせる良書でした。
