『甘える技術』(高畑好秀)
著者はスポーツ選手のメンタルトレーナー。子供の頃から「自分のことは自分でやりなさい」と教えられるから、社会人になって人の力を借りないとできないことに直面してもなかなかうまく頼めない。そんな日常ありふれた場面であっても、肩の力を抜いて誰かに甘えることができれば、ぐっと物事も前に進むはず。本書は、甘える技術は人を動かす技術ととらえ、いかに人にうまく頼めるようになるかをまとめた一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯かわいらしさ
・物事が円滑に運ぶかどうかは、「かわいらしさがあるか、ないか」
・かわいらしさとは、飾らない自分、素の自分、等身大の自分ということ。
・ふとした瞬間に鎧の下に隠している自分の弱い部分を飾ることなく他人に見せられるかどうかということが、かわいさに繋がっていく。
・どんな人にも長所と短所がある。自分の弱点は素直に認め、苦手な分野は誰かにお願いすれば、一人で頑張ってやり通すよりも労力や時間の節約になる。苦手なことをすることで発生するストレスもないので、周囲の雰囲気も良くなる。
◯現状を言葉で伝える
・「どんなに苦しい状況であるかは、見ている人にわかるはず」というのは、根拠のない思い込み。自分の窮状をしっかり言葉で伝えることで、初めて周りの人はあなたが置かれている状況を理解することができる。
◯完璧主義にさようなら
・完璧主義者は往々にして近づきにくい雰囲気がある。
・仕事には必ず期限があり、どこかで折り合いをつけなくてはならない。完璧主義者は見方を変えれば、融通の利かないタイプ。
◯管理職こそ甘え上手に
・人を使うポジションについたなら、自分の努力が50%、周囲のサポートが50%という意識を持ってもらいたい。
◯完全に自立した人などいない
・「自分はどうも人にモノが頼めない」という人はまず、日常生活で受けている恩恵を自覚することから始めてみてはどうか。何かに頼って生きていることは決して悪いことではない。むしろ、誰にも頼らない生き方こそ、独善的で無知と言われても仕方ない。
・誰かに頼るということは、その人を信頼している証拠。
◯周囲の人との一体感
・みんなが一つの目標に向かって力を合わせて頑張っていれば、そこには想像以上のパワーが発揮される。
◯頼んだら、あとは覚悟してお任せする
・頼みごとをするときは、目的をしっかり伝えなければならないが、手段や方法まで細かく伝えることは逆効果。着地点だけ双方で確認して、あとはお任せというスタンスが重要。
◯頼めないを克服する
・周囲の人と打ち解けるには、いかに自分の心を開けるかということも重要。
・秘密の告白は、人と人を親密にさせてくれる。秘密といっても大げさなものではなく、自分のこれまでの失敗談を打ち明ける程度でいい。
◯7対3の法則
・人と人との繋がりはギブ&テイクで成り立っている。
・50:50の関係を求めると負担に感じてしまう。こちらが7割やってあげて、3割でも還ってきたらよしとする。
◯騒ぐ人ほど助けてもらえる
・些細なことでも困っていることについて、自分の状況を口に出しておくという習慣は身につけておいてマイナスになることはない。
◯観察力を磨く
・甘え上手になるには他人をよく知り、その人の良い部分を見つけてあげることが大切。
・観察力を磨くには何事にも好奇心旺盛でいなければならない。
・仕事以外のことでも良いから、その人の長所を生かして簡単にできることをやらせてみる。
・減点法で相手を見れば欠点しか見えてこない。加点法で見ていけば、相手の長所が色々と見えてくる。長所を上げていくと気がつくかもしれませんが、短所だと思っていた面が見方によっては長所になることがある。
◯心に余裕を持つ
・心の余裕は、自分にできることと、できないことをはっきりとさせてくれる。
・人に甘えるためには自分の心の中をスッキリさせて余裕を持たないと、頼まれる相手にとっても負担。
◯一点突破で得意なものを磨く
・「あの人は自分が持っていないものを持っている」と思わせることができれば、自分が頼みごとをするときにも抵抗がなくなる。「いつでもお返しをしてもらえる」という安心感を相手に与えることができるので、ギブ&テイクの関係に持ち込みやすい。
・ゼネラリストタイプよりも、一点突破型の方がより多くの情報や協力者が集まる。
◯頼みごとは内容よりもリズム
・頼んだ以上は中途半端な口出しは禁物。頼まれた側も全面的に信頼されたと感じたなら、その後の仕事も気持ちよくスムーズに進む。頼みごとも重苦しい口調で言われると、内容がどうという以前に頼まれた方が心理的に嫌になってしまう。
私自身、以前に比べると人にものを頼むということがやりやすくなっている感覚があります。「別に完璧じゃなくてもいいし」「というかすべて一人でやるのは無理だし」と素直に思えるようになったのは、コーチングでの経験が大きいかもしれません。
「できない自分にダメ出し」ではなく「そんな自分を受け入れよう」と時間をかけて思えるようになり、そうすると、ぐっと楽になります。そして、誰かに頼るだけでなく、頼るためには周りの人のいいところを知り、どう頼んで、どう相手のいいところを引き出していくかを考えるようになってきました。
アドラーの幸福の3原則である、自己受容、他者信頼、他者貢献。これらを自分も相手も相互に持つことができれば、関係も良くなり、場の雰囲気も良くなっていく。
まぁ、そうはいっても失敗もあるわけで、何事も実践して、その中から経験を得て自信をつけ、また実践するという繰り返しかと思います。