MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

遅読家のための読書術(印南敦史)

『遅読家のための読書術』(印南敦史)(◯)

 非常に共感できるところが多かった読書本です。著者は年間700冊の書評を投稿されているライター。知識を溜め込むストック型の読み方に対し、著者は「フロー・リーディング」という呼び方で知識を溜め込まずに流していく読み方を推奨されています。私も覚えることを捨ててから、読書量が激増したのでそこが一番共感できました(一方で読書記録の残し方がキモになります)。月20冊の習慣化を目標とする一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯じっくり読んでも「忘れること」は忘れる

・レビュー記事を書き始めて気づいたこと。「いくら熟読しても、実際には忘れていることの方が多い」という事実。読むスピードと理解度・記憶は全く比例しないということ。「すべてを頭に叩き込むことを前提とした読書」ほどムダなものはない。

・読書の本当の価値は、書かれていることの「100%を写し取る」ことではなく、価値を感じられるような、「1%に出会う」こと。

 

◯熟読の呪縛

・熟読の呪縛から抜け出すところから始めて欲しい。

・「本を速く読める人」と「遅くしか読めない人」がいるのではなく、「熟読の呪縛から自由な人」と「それにまだとらわれている人」がいるだけ。

・1冊を深く読むのではなく、たくさんの本から「小さなかけら」を集めて「大きな塊」を作って行く。

・音楽を聴くときにすべての細かいフレーズや旋律を暗記しないのと同じ。「音楽を聴くように本が読める」状態が理想。

 

◯「多読リズム」への3ステップ

①「毎日・同じ時間」に読むようにする

・「朝の10分間読書」など。場所、シーン、シチュエーションを決めることも大切。

②「速く読める本」を中心に選ぶ

・本は、1)読まなくていい本、2)速く読む必要がない本(ストーリーがあるコンテンツ)、3)速く読める本がある。世の中の9割は「速く読める本」。

・目安は、「速く読める本」が9割、「速く読む必要がない本」が1割の比率。

・複数冊同時に読むことも効果的。「速く読む必要がない本」を読んでいる時も、同時に「速く読める本」を用意する。

③「昨日とは違う本」をいつも読む

・1冊の本に10日以上かかりきりになっている状態は望ましくない。

・1日で1冊読み切るのが理想的。

・10日間のダラダラ読みより、60分間のパラパラ読み。

 

◯読書体験をストックする

①読書は呼吸

・「本を読む=息を吸う」だけでは苦行と同じ。「書く=息を吐く」ことを混ぜる。「書くために読む」ことへ意識を変える。

・「書くために読んでいる」という意識で本を読むようになると、「覚えるために読んでいる」という面倒な固定概念が脇に押しやられるので、読書が楽になる。

②速くて深い読書は「引用」から始まる。

・「おいしいところ」だけ引き抜く。情報価値とほんのエッセンスを手短につかむことができるメリットがある。

・その本のどこに心を動かされたのか、どんな文章が気になったのかが可視化される。

・じっくり読むよりも、文章を書き写した方がその部分をしっかりと味わうことができるし、忘れづらくなる。書き写しているのだから忘れてしまっても大丈夫。

③本の魅力だけを抽出する「1ライン・サンプリング」

・おいしいところだけを、数行に収まる文章量で写す。

・本を読み終えたときに書き出されている引用のリストが「その本を読書することによって自分が吸って、吐いたすべて」。

④最高の1行を選び出す「1ライン・エッセンス」

・「神は一文に宿る」。最も印象的だった一文を抽出する。

・読書は、測量よりも宝探しに似ている。「1行」を探しながら読む。

⑤重要箇所がよみがえる「1ライン・レビュー」

・なぜこの1行に感動したのかという観点で、一口メモを書く。

・後から見返す時のことを考えても、引用とレビューがそれぞれ1行でビシッと簡潔にまとまっている方が、記憶の再現効果が高くなる。

・1ライン・レビューが12冊分たまったら、A5ノートに、日付・本のタイトル・一番お気に入りの1文・1行の感想をためていく。1ページに6冊分、見開きで12冊分のレビューがたまったら、一番良かった1冊を選び、★をつける。

⑥手書き引用(あえて紙をお勧めする理由)

・内容をじっくりと理解できる

・必要な部分だけを引用するようになる

・達成状況が可視化される

 

◯流し読みのルール

小見出しを見て、読むべきパートか否かを判断する。

・著者の自分語りは商品差別化目的なので、飛ばす。

・個別事例・体験談は飛ばして読んでも十分話は通じる。

・読書スピードを速めるステップ

①「はじめに・目次」をよく読む

②最初と最後の5行だけ読む

③キーワードを決めて読む

④2つ以上の読書リズムで読む

 

◯処分していい本の見分け方

・背表紙の可視化

 書棚がいっぱいなら床に並べてもいいので、整然と並べる。

・時系列並べ

 古いものから新しいものへと順に並べていくと、その時点で「これは必要ないな」とか、「もう10年も前の情報だから、内容的にはだいぶ古くなっている」という気づきがある。

・本棚は自分を映す鏡。3ヶ月ペースでメンテナンス作業を行う。「どんな本を残しておきたいのか?」。残した本から自分自身が見えてくる。

 

 私の読書ブログは、1)暗記を手放す効果、2)本を捨てる決断(エッセンスは残したと思える)、3)思い返したい時の検索効果を考えています。

 これも最初からそう思っていたわけではなく、やり始めて気がついたこと。「なんだ、暗記しなくていいな」と読書に気楽に取り組むようになりました。私の場合は、著者とは異なり、本に線引きや書き込みを行い、そこを重点的にブログにまとめる(つまり2回読む・・2回目は重要箇所のみ)こととしており、より印象付けることを意識しています。

 1〜2度触れている領域は、キーワードを聞くと、そこから紐づいて記憶が呼び戻されることが多く、あとは調べに入れる。そういう「フック」を自分の中にたくさん持っておくと、多面的にものが見れるようになるかなと思って取り組んでいます。また、取り組みながら新たな効果に気づいたり、新しい試みをすることがあると思うので、将来はもっと発展するかもしれません。

遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
 

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