達人のサイエンス(ジョージ・レナード)
『達人のサイエンス』(ジョージ・レナード)(◯)
「初めに困難であったことが、練習や実践を重ねるに従い、次第に簡単で楽しいものに変わっていく不思議なプロセス」である、マスタリー。人生における成功や理想の実現に何か王道があるとするなら、それは終わることのない長期のマスタリーのプロセスにあると言える。本書は、達人と呼ばれる人たちが何を積み重ねているのか、その着眼をまとめた一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯プラトーという岐路
・プラトーとは、学習が伸び悩んでいる時期で、学習曲線が水平になっている状態。
・プラトーでは、どれだけ懸命に練習しても、これといった進歩がない。これはゴールが気になってしようがない人には実に辛いこと。スポーツというマスタリーへの道では、思ったほど早く成果が出るものではない。何度となく大幅に後退しながら、延々と続く道を前に、プラトーの長い時間を過ごす。その間はたとえ先が見えなくても、練習を続けなくてはならない。これはマスタリーの旅の厳粛な事実。
◯スパートの起こるメカニズム
・マスタリーに到達するための最善の方法。一言でいえば、勤勉に練習すること。そして最初のうちはできるだけ練習のための練習をするということ。
・学習は普通、段階を踏んで起こるもの。習慣システムが新しくプログラムされるたびに一段階が終わり、認識システムと努力システムは隠れてしまう。このようにして、行為の一つひとつをあえて頭で考えなくても目的が遂行できるようになる。この時点で明らかな学習のスパートが起こる。だが、実際は、学習は最初から一貫して進展していたのである。
◯達人への5つのキーポイント
①指導
・マスタリーの旅に出るつもりであれば、一流の指導を受けるのが一番。独学にも長所はあるが、独学は危険。
・まずどんな技能を習得する場合でも、熟練した教師の手によるマンツーマンか少人数の指導が一番いい。
・いい指導ができる教師を見つけるには、まず資格と系譜を見る。自分の先生の先生だった人は誰だろうか?その先生の先生は誰だろうか?
・先生の善し悪しはその生徒を見ればすぐわかる。
・一流の教師は、生徒の間違いを指摘したら、その分だけ生徒の正しさを指摘するように努めている。
・教師との適切な心理的距離を保つことは大切。離れすぎると達人の旅の要素である「自己を明け渡す」機会が失われるし、近づき過ぎれば全ての視野が失われ、生徒ではなく弟子になってしまう。
②練習と実践
・達人と言われる人は、自己の技量を伸ばすことだけが目的で何かの技能に専念するのではない。本当は、彼らはまず何よりも練習が好きなのであって、その結果、上達は後からついてくる。そして、上達すればするほど基本の動きを繰り返すのが楽しくなる、というサイクルが出来上がる。
・これといって用件がないときでも、定期的に練習(実践)するのは最初は結構面倒に感じる。だが、練習することが生活のメインになる日が必ずやってくる。
・マスタリーとは何か。核心を言えば、マスタリーとは練習や実践のことであり、達人の道にとどまることなのだ。
③自己を明け渡すこと
・達人の勇気は、進んで自己を開け渡そうとする姿勢で計られる。「自己を明け渡す」とは、先生の指示に従い、自らが課した規律の求めるところに従うという意味。
・重要なことを新しく学習するときは、どういう場合でも初めの頃はバカになることが必要。大抵は無様に尻餅をついたり、みっともない失敗をしでかすに決まっていて、それを防ぐ手立てはない。初心者が自分のプライドを後生大事に守ろうとすると、学習はうまく進まない。
・今は疑いを持つのはやめておこう。先生があなたに、鼻に指を当て、片足で立つように言ったとしても、特に反対する理由がなければとにかくやってみることだ。
④思いの力
・イメージングやメンタルゲームなどの、達人の旅に欠かせないが「思いの力」。思いの力は、達人の旅にとってエネルギー源となる。すべての達人は、ビジョンを思い浮かべる達人。
・ジャック・ニクラウス(ゴルフの帝王)によると、成功したショットの半分はイメージの力、4割がセットアップによるもので、スイングは残りの1割でしかない。
⑤限界でのプレイ
・達人と呼ばれる者たちはほとんど例外なく、自分の転職についてはその基礎に忠実である。彼らは練習の虫で、新たに小さなステップを踏み出すのにも極めてうるさい。それでいて、彼らは過去の限界にチャレンジしようとする傾向が強く、上達のためには危険も厭わず、その追求のためにオブセッションになることすらある。達人にとっては、明らかにこの2つの傾向のどちらか一つではなく、両方がキーとなる。
◯決意がくじける理由
・変化に対抗して平衡状態を維持しようとする働きのことを「ホメオスタシス」(恒常性)という。この作用はバクテリアやカエル、さらには人間個人、家族、組織、文化の総体などに至るまで、あらゆる自己調整システムに見られる。しかも身体・物理面の機能だけでなく、心理や行動の面でも当てはまる。
・問題なのはホメオスタシスが、現状があまり良いものでなくても、それを維持しようと働き続けてしまうこと。
◯マスタリーの道を歩んで行くために役立ちうる5つのガイドライン
①ホメオスタシスの活動に気づく
②変化に抵抗しようとする自分との「関係の調整」
③支援体制を作り上げる
④規則的に練習する
⑤生涯、学び続ける
◯マスタリーのエネルギーを得る7つの方法
①肉体の健康を維持する
②マイナス要素を知った上での積極思考
③努めてありのままを話す
④素直であれ、ただし自己の暗い部分に振り回されるな
⑤するべきことの優先順位を決める
⑥公言し、そして実行
⑦マスタリーの道を歩み続ける。
「どこに向かって、何を積み重ねていくのか」「毎日の質を高めることが人生の質を高める」。私が追いかけ続けているこれらのテーマとのマッチング性が高く、かなり、思い当たる節もあって共感できる内容でした。スポーツも音楽もビジネスも達人と呼ばれる人には共通点があると思います。例えば、イチロー選手のように、信念に基づいて積み上げていく姿勢。それは、私にとっては、目指すべき理想像であり、「死ぬまで自己成長を続ける」という思いにもつながるものでもあります。
- 作者: ジョージレナード,George Leonard,中田康憲
- 出版社/メーカー: 日本教文社
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