MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ブランディング22の法則(アル・ライズ、ローラ・ライズ)

ブランディング22の法則』(アル・ライズ、ローラ・ライズ)(◯)

 良書です。私の好きなマーケティング戦略家のアル・ライズさんの著書を読み進めています。本書も実務に根差した実践的な良書でした。本書は、広範囲に及ぶマーケティング機能を統合する接着剤としの役割を担うブランディングについて、22の観点から実例に基づく留意点をまとめた一冊です。

 「ただの水をエビアンに変える」というように、消費者の頭の中にブランドを築き上げるために必要なものとは何か?ビジネスにブランド思考ないし「ブランディング」プロセスを適用するためのエッセンスが詰まっています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

①拡張の法則

・「ブランドの力はその広がりに反比例する」

・顧客はブランドの範囲が狭く、ただ一語で識別できるブランドを好む。それも短いほどいい。

 

②収縮の法則

・「フォーカス(商店を絞り込む)する時、ブランドは強力になる」

・いい結果は、ビジネスを拡張するよりも収縮させるときに生まれる。

 

③パブリシティの法則

・「ブランドが誕生するのは広告ではなく、パブリシティによってである」

・パブリシティを生むベストな方法は一番手になることである。

 

④広告の法則

・「いったん誕生したブランドは、その健康を維持するために広告を必要とする」

・はじめにパブリシティ、次いで広告というのは一般的な原則である。

・広告で「我が社の商品はリーダー(ナンバーワン)です」と言ったら、見込み客はどう考えるだろうか。「きっとベターであるに違いない」となるはず。

 

⑤言葉の法則

・「ブランドは消費者の頭の中に自分の言葉を所有する」

・あるブランドが人々の頭の中で何か意味のある言葉を持ち始めると、当の企業は普通そのベースを広げようと、他の市場に進出し、他の商品特性を奪う方法を模索し始める。これは重大な誤りで、ブランディングにおいて最もハマりやすい落とし穴の一つ。

 

⑥信用力の法則

・「あらゆるブランドの成功のカギを握る要素本物訴求である」

・顧客は懐疑的である。しかし、一つだけ例外がある。「本物訴求」。つまり本物であるとの主張だ。

 

⑦品質の法則

・「品質は重要だけれど、ブランドは品質だけで築かれるものではない」

・品質、というよりも品質に関する認識は買い手の頭の中にあるもの。あなたがもし強力なブランドを築きたいと思うなら、書いての頭の中に品質に関する強力な認識を築き上げなくてはならない。

 

⑧カテゴリーの法則

・「リーディング・ブランドはブランドではなく、カテゴリーを売り込むべきだ」

・無から有を生み出すには2つのことを同時にやらなくてはならない。

1)一番手、リーダー、パイオニア、オリジナル、こうした言葉のどれか一つを使用する。

2)新しいカテゴリー自体を売込まなければならない。

 

⑨名前の法則

・「結局のところブランドとは名前のことである」

・ブランドは、短期的にはユニークなアイデアないしはコンセプトを必要とする。しかし、長期的に後に残るのはブランド名と競合ブランド名の違いである。

 

⑩ライン延長の法則

・「ブランドを破壊する最も簡単な方法は、あらゆる商品にそのブランド名をつけることである」

・眠っているブランドは起こさないのが良い。ライン延長を行う前に、現行のブランドの顧客がライン延長ブランドを見てどう思うかを自分に問いかけてみるべきである。もし、市場があなたの足元から流出しそうな場合には、いまの場所に留まって第二のブランドを打ち上げること。そうでない場合には留まってブランドの構築を続けるのが良い。

 

⑪協調の法則

・「カテゴリーを築くには、既存ブランド型の競合ブランドの参入を歓迎する必要がある」

・各々のカテゴリーにとっては二大ブランドの存在が理想的であるように思える。どんなブランドも市場を独り占めにはできない。50%がおよその上限である。 

 

ジェネリックの法則

・「失敗に至る一番の近道は、ブランドに総称的な名前をつけることである」

・ブランド名を選ぶにあたって陥りやすい最大の過ちは、名前の選考が音声ではなく、視覚に基づいて進められること。

 

⑬企業の法則

・「ブランドはブランドであり、企業は企業である。両者の間には大きな違いがある」

・ブランド構築の過程で企業名の適切な使用ということほど混乱を引き起こす問題はない。

・コカコーラはコカコーラ社によって作られるからコカコーラなのではない。コーラそのものがコカコーラなのだ。そこを混同しないことこそが効果的なブランディング戦略にとって肝要である。

 

⑭サブブランドの法則

・「ブランディングによって構築されたものが、サブブランドの導入によって破壊される場合がある」

・ブランドとは何かを突き詰めていくと、それは顧客の頭の中に刻まれたアイデアであり、特徴であり、典型的な顧客像である。サブブランディングは当該ブランドをその正反対の方向に導く考え方である。

 

⑮兄弟の法則

・「第二のブランドを発進させるには時と場所を選ばなくてはならない」

・兄弟戦略を選択するときの留意点

1)共通の商品分野に焦点を合わせる

2)一個の特性を選んでセグメントする

3)ブランド間に厳格な区分けをする

4)別々のに通っていないブランド名をこしらえる

5)新しい兄弟ブランドは新しいカテゴリーを創る場合にのみ市場に出す

6)兄弟ブランドの統制管理には企業のトップがあたる

 

⑯形状の法則

・「ブランドのロゴタイプは目にフィットするようにデザインすべきである。両眼にである」

・顧客の目は横についているので、ロゴタイプの理想的な形は横長型である。ざっと幅2.25に対して高さ1である。

 

⑰色調の法則

・「ブランドは強豪とは反対の色を使うべきである」

・リーダーには第一の選択権がある。通常選択すべきベストな色は、そのカテゴリーに一番似つかわしい色である。ブランドにとっては単一の色がほぼ例外なくベストなカラー戦略である。

 

⑱国境の法則

・「グローバルなブランド構築に障壁はない。ブランドに国境があってはならない」

・世界市場で使うブランド名を作ろうとするのであれば、英語名にするのがいい。英語である必要はないが、英語らしく響く名前にすべきである。

 

⑲一貫性の法則

・「ブランドは一夜では築かれない。清光は何年単位ではなく、何十年単位で測定される」

・一番頻繁に破られる法則。本質的な特徴は(それが人々の頭の中にしっかり根を下ろしている以上)断じて変更してはならない。

 

⑳変更の法則

・「ブランドは、ごく希に、そして最新の注意を払えば変更できることがある」

・ブランド変更が可能な状況

1)ブランドが弱体であるが、消費者の頭の中に存在しない場合

2)ブランドの価格帯を下げて利益を確保する場合

3)ブランドが旨みの乏しい市場にあって、いずれは変化が起こりそうな場合

 

㉑寿命の法則

・どんなブランドにも永遠の生命はない。多くの場合、安楽死がベストな答えである」

・哀れなことに企業は、古びたブランドの救済には何百万ドルも進んで投じるくせに、新しいブランドを創造するためとなると、1ペニーの支出にも抵抗する。

 

㉒特異性の法則

 ・「ブランドの最も重要な側面は一つのものを追い求めるひたむきさである」

・特異性を喪失するとブランドは弱体化する。

 

  アル・ライズさんの著書はどれも明快な表現ですっとわかりやすく書かれているのが好きなところです。本書も22の切り口から、何が言いたいのかがはっきりしていて、しかも実務に根差しているという、マーケティング初心者の私にとって、マーケティングの学びにはうってつけの一冊でした。

ブランディング22の法則

ブランディング22の法則

 

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