『勝ち馬に乗る!』(アル・ライズ、ジャック・トラウト)(◯)
私の好きなマーケティング戦略家のアル・ライズさんのちょっと変わったタイトルの本書(このタイトル自体もマーケティング的なネーミング?)。自分の努力以上に「他人の力」を借りることの大切さを説いた一冊です。
帯の裏にある本書の引用で概要がつかめると思いますので、ご紹介します。
「頭の良さや、押しの強さや、人好きがするかどうかは問題ではない。一生懸命働き、自分を信じ、ポジティブに考えたからといって、成功できるわけではない。成功に導いてくれるのは、誰であろう、自分以外の他人だけなのだ。ローマ法王は、なろうと思ってなったわけじゃない。企業の会長だってそうだ。自分を売り込む武器の中でおそらく一番どうでもいいのが「能力」だろう。レースに勝つ騎手は、体重が一番軽いとは限らないし、頭が一番いいとも限らない。最高の騎手が勝つとは限らない。最高の馬に乗った騎手が勝つのだ!」
(印象に残ったところ・・本書より)
◯穴馬
①勤勉な馬・・倍率100倍
・穴馬は、あなた自身。
・自分の才能や能力を元にマーケティング戦略を立て、他には目もくれない。自分自身にかけるとはそういうこと。
・この戦いは厳しい。たいてい遅れをとって、自分で自分に鞭を打つことになる。自分で自分に鞭を打つとは、「もっと一生懸命に働く」ということ。他人が1日7時間働くなら、自分は8時間働く。他人が8時間働くなら、自分は9時間働く(週末も働く)。
②IQの馬・・倍率75倍
・知能は諸刃の剣。知能が低すぎると事務処理ができないが、知能があり過ぎると現実離れしてしまう。専門バカになる。
・知能と成功があまり関係ないのには、理由がある。頭がいい人ほど、自分だけでなんでもやろうとする傾向が強い。それほど頭が良くない人は、自分の限界を知っている。だから人に手伝ってもらって階段を上ろうとする。
③学歴の馬・・倍率60倍
・学歴の馬は、レースに出走する資格にすぎない。
・学がつくと生まれながらの良識をなくしてしまう。
④会社の馬・・倍率50倍
・個人のマーケティングの武器の中で、おそらく一番どうでもいいのが「能力」
・自分が会社のために何ができるのか聞いてはいけない。会社が自分のために何をしてくれるかを聞かなくてはいけない。
◯対抗馬(自分自身にも賭けるし、他人にも賭ける)
①才能の馬・・倍率25倍
・ただ才能を生かしたいのなら、ひたすら自分の「作品」に打ち込めばいい。だが、才能を生かして、しかも成功したいのであれば、「作品」に取り組むだけではなく、周りに売り込むこと。クリエイティブな世界では、成功を導いてくれるのは自分以外のだけれかだということをくれぐれも忘れてはいけない。
・才能を生かし、引き上げてくれる立場の人に認めてもらわなければいけない。
②趣味の馬・・倍率20倍
・好きなことをやるなら、とことんやる。やればやるほどうまくなり、自信もつく。
・常識とは逆であることに注意が必要。成功が自信を生む。自信が成功を生む訳ではない。
③地の利の馬・・倍率15倍
・自分が置かれた環境に対応する中で、チャンスが現れてくる。
・際限なく時間をかけて理想を追い求めることには、何の価値もない。
・完全にコントロールできるのは、誰あろう、自分自身である。
④宣伝の馬・・倍率10倍
・宣伝の量は問題ではない。大事なのは、 鮮烈な印象を残す、明るい物語を作ること。
・宣伝の馬に乗ろうと思うなら、キャッチフレーズやアイデアが必要。
◯本命(自分以外の人やモノに全面的に賭けて成功を目指す)
①商品の馬・・倍率5倍
・人の才能を見抜くことは、常に自分自身の成功のカギになる
・目利きであれ。自分で商品を開発しようなどとは思わず、富をもたらしてくれる商品を探したほうがいい。
②アイデアの馬・・倍率4倍
・アイデアの馬に乗るのであれば、バカにされたり非難されたりすることも覚悟の上でなくてはいけない。
・素晴らしいアイデアが最初から素晴らしいと認められることは滅多にない。
・宣伝価値が最も高いのが、衝撃的なアイデア。広告代理店は、ショッキングな広告がいい宣伝になると知っている。
③他人という馬・・倍率3倍
・乗るべき馬を見つけるのは、勝ち組の輪に入る手っ取り早い方法だ。だが同時に落とし穴もある。人間には利己心がある。こちらが行きたいところに無条件で連れて行ってくれるわけではない。
④パートナーの馬・・倍率2.5倍
・二人で組んだ方が、一人の時よりいい仕事ができるもの。
・パートナーがいれば現実に引き戻してくれる。慢心していないかどうか、常に冷静な目で見て判断してくれる。
⑤配偶者の馬・・倍率2倍
・誰にとっても馬は必要だ。それを赤の他人にするのか、夫や妻にするのかは問題ではない。「夫(妻)はどの程度の馬なのか」。それが大問題だ。ただし、成功する確率は、赤の他人に乗るよりずっと高い。
⑥家族の馬・・倍率1.5倍
・夫婦は離婚できても、息子や娘、あるいは親とは縁が切れない。この事実だけで、家族の馬は配偶者の馬よりも有利だと言える。
・フォーチュン500社のうち、175社、実に35%が同族経営だ。
◯馬を替える
・一番大変なのは、馬を替えようと決断すること。その決断さえできれば、別の馬を見つけるのはずっと簡単。
・今の仕事が楽しいうちに、乗り換える馬を見つけるべきだ。そうすれば、弱ってからではなく、強みがあるうちに動くことができる。
・今が馬を替えるチャンスだと判断するタイミング。
①新たな産業が生まれるとき
②競争環境が変化するとき
③会社の風向きが変わるとき
④一生に一度のチャンスが来たとき
⑤溝にはまったとき
・馬を替えるのをためらう第一の理由は、未知のものに対する恐れ。最大の恐れは、新しい馬に乗っても遠くに連れていってくれないのではないかというもの。
・もう一つは、仕事を替えることにより、社会的地位が下がるのではないかという恐れ。心を充たしてくれるのは、地位ではなく幸せだということに、まず気づかなくてはならない。
一見、儲けのためには他人を利用するというような、ドライな印象も受けるのですが、「誰と組むのか」というのは、ビジネスでは大きな判断になるので、その際の着眼として、参考になると思います。着眼を知り、どのように実践に活用するのかは読者次第。そういうタイプの書籍です。
- 作者: アルライズ/ジャックトラウト,高遠裕子
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 2007/02/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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