MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

『ティール組織』私はこう読んだ(英知出版オンライン連載)

『『ティール組織』私はこう読んだ』(英知出版オンライン連載)

 書店で無料配布していた小冊子です。『ティール組織』は読んだけどどう使えばいいの?と、理論と実践の橋渡しのところで止まってしまう方も多いのではないでしょうか。本冊子は、出版社の英知出版さんが、2018年4〜8月にかけて、10人の方が実際に『ティール組織』を読んで何を感じどのように活かしているのかを紹介ものを取りまとめたものです。

 

(印象に残ったところ・・本冊子より)

◯小竹貴子さん(クックパッド

・1997年に創業した頃は、「ティール」に近かったかもしれない。オフィスではなく、皆リモートワーク。メンバーはクックパッド以外の仕事を掛け持ち、理念は明確ではあったものの、短期の目標を持たず、それぞれの得意な分野で動き、悩んだ時は専門家や同僚のアドバイスを受けながら自分で決める。

・ミッションを軸にそれぞれが自ら意思決定し、ミッションを実現するためにサービス、そして事業を前に進めていく。たまに全員が集まれば、どうしたら料理が楽しみになる世界が作れるか、そんな話ばかりしていました。進捗報告などは脇に置いて。やがて売上も人も増えてくると、メンバーそれぞれがクックパッドに絞って仕事をするようになり、オフィスにキッチンができて、なんとなく家族のような「グリーン」な組織に。

・上場しようと決めた頃から「オレンジ」になっていった感覚があります。当然ですが、会社として整えなければいけないことが急激に増え、管理部に人が増え、社内規定もいろいろ増え、評価制度や給与制度が整備されていった。現在22言語、68カ国に展開するまでになったが、各国に特色があり、それこそオレンジっぽい海外子会社もあれば、ティールっぽい事業所もある。最近はミッションを見つめ直す機会も増え、もう一度創業期のような「ティール」、いや多色が混在する「レインボー」な組織へと進化する、その過程にあるのかもしれない。

・「うちの会社は今何色だろう?」と想像するのもよし。でも意外と「あの会社は現在に至るまで、どう変わったのだろう?」と色の変化を楽しむのも有りだと思う。

 

◯藤村能光さん(サイボウズ

・100%のコミットをメンバーに求めず、複業を認める。そうすることで、一人ひとりが会社でも「自分らしくいられる」のではないか。それは、個人と組織が潜在能力を発揮するためのカギなんじゃないか。

・複業を「自己実現のために、本業をいくつも作ること」と認識している。

・「思い切って自分自身の全てを職場に持ち込む」ことが組織の発達過程において不可欠だとすれば、複業を認めたり、仕事へのコミット度にグラデーションがある状態を許容する方が、むしろ健全なのではないだろうか。それを避けようとすればするほど、全体性は失われてしまう。

 

田中達也さん(リクルートコミュニケーションズ)

・「鎧を脱いで耳を澄まし自分の本音を掘り下げてみたら、今まで考えられなかったことが考えられた」「新しい結論が見えてきた」「これを職場に広げたい」。

・互いの悩みを吐き出し合い、フラットに助言し合う。内省する。議論でなく対話をする。こうして描くと「きれいごと」のように思えます。でも、エリートの集団であることに誇りを持ってきた人たちが、「私もあなたもポンコツどうし。だからこそ、一緒に知恵を出し合おう」と認め合えたときに生まれたパワーの大きさに、A社の人事の方々も、本当に感動しました。

・「これって組織が『人と人になる』ことなんですね」

 

岡田武史さん(今治 夢スポーツ)

・選手とバックオフィスという線引きをなくし、すべてのメンバーを選手同様にプロフェッショナル契約にすることも可能ではないかと閃いた。

・ゴールを決められるストライカーも、そのストライカーの魅力をファンに伝えることに長けた広報スタッフも、すべての人間をプロフェッショナルと認め、一人ひとりの個性や長所がいかんなく発揮できるような環境を整える。100人100通りの働き方、報酬制度をつくる。ここで働くことが、全員にとってのドリームジョブになる。

 

岡本拓也さん(ソーシャルマネジメント合同会社

・リーダーには内省が不可欠。組織に何らかの問題がある時、その問題には自分も含まれていると認識し、解決するために自分は何を手放すべきかを考え続けなければならない。それは痛みを伴う作業だが、内省プロセスを乗り越えなければ、リーダーとしても組織としても次のステージに進化できないのだと思う。

・内省の重要性は『ティール組織』でも度々触れられている。「内省は自分一人、組織一つの中で完結すべきなのだろうか」。

・「ソーシャルマネジメント・ラボ」という勉強会。そこでは、NPO経営者やリーダーたちがそれぞれの実践の悩みを”赤裸々”に共有し合うのだが、このスタイルは私たち4人が「弱みを見せ合う」ことで内省が深まった経験に基づいている。

 

 新しい考え方は、概要を知ったら次に具体例でイメージ化。そのまま自分が属する組織に取り入れるのは難しそうな内容ですが、エッセンスやベースにある考え方、人間関係など、要素を取り込むことに魅力を感じる部分もあります。自分一人で読むより、他の人の考え方を知ることで、読み方に幅を広げることもできますし、こうした無料配布資料で読み方を支援していただけるのは嬉しいです。

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