MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

お金の正体(松本大)

『お金の正体』(松本大

 本書は、金融の世界で30年以上巨額のお金を動かし続けてきた、マネックスグループ代表によるお金の話。お金は、「信頼」「価値」「想い」の基本的要素から成り立っていることをベースに、消費、預金、投資、仮想通貨、金融、証券会社の正体を解きほぐしていく一冊です。平易に書かれているので、とても読みやすい内容でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯信頼

・これまでお金持ちだけが独占していた「信頼」が、SNSの台頭でお金持ち限定のものでなくなってきた。

・情報入手は早い方が優位に立てる。情報には一工夫加えることが大事。

 

◯価値

・金本位時代のアメリカドル札には物質的な裏付けがあった。今の紙幣に価値を与えるような裏付けはあるのか?金のような実物資産による裏付けはない。

・「国の信頼」の源泉は「記録」。戸籍、住民票、年金記録、納税実績、登記簿など大量かつ唯一無二の記録を政府がすべて持ち、政府以外の誰も統括していない。

 

◯想い

日本株全体では、個人の保有比率は17%。個人は海外投資家の30%、事業会社の22%に続く一大勢力。ただ、残念なことに、これほど多くの個人投資家が株主になっているのに、個人の「想い」が企業経営者にしっかりと届いているとは言えないのが実情。

 

◯消費の正体

・消費に限らず、投資でも寄付でも、自分の判断に基づいてお金を使うことが必要。お金は使って初めて価値を生むもの。ところがお金の使い方がわからないと、悲劇が起きる。どれだけ多くの収入を得ても、日々の暮らしの幸福感につながらない。

・他人の基準でお金を使うと、自分ではなく他人の基準に見合った幸福が生まれる。つまり他人の基準でお金を使うと、どこかで幸福感は頭打ちになってしまう。だからこそお金の使い方は自分で決めるべき。食事の例でわかるように、自分が美味しいと思えば、他の人すべてがどう評価しても美味しいのです。

・価値、思い、信頼のどれにも該当せず「他人に言われたから買う」というのは最も良くないお金の使い方かもしれない。

 

◯預金の正体

・日本人の過剰なまでの預金好きのバックグラウンドには、国土の形成によるものが大きい。日本は面積が小さく、島国。毎年必ず台風や地震などの自然の脅威がやってくる。

・お金についても拡大指向型にはなりにくく、預金のように元本の動かないものを好み、その中で少しでも利回りの高い商品を選ぶ。この行動原則は1,000年以上の歳月をかけて醸成されてきたものなので、そう簡単には変わらないかもしれない。

・預金は万能ではない。よく言われる預金の典型的なリスクはインフレであり、物価の上昇。1年満期で利息が年1%の定期預金に全財産を入れても、預けている期間に物価が毎年年3%上昇すれば、1%の利息をもらっても実際には預金は目減りしているのと同じ。

・先進国では人口が増えない一方でテクノロジーが進歩しているため、慢性的にデフレになりやすい傾向にある。これに対して新興国はやっぱりインフレ。商品の生産増加ペースを上回る人口増加は物価上昇を引き起こし、金利も上がりやすい。

 

◯投資の正体

・10万円の分散投資はお金を増やすためのツールを超えて、10万円で世界が見渡せる窓になる。10万円といえば失くしたと思えばかなり痛い話だが、投資となれば別。決して高い買い物ではない。

・投資で儲ける人のタイプは決まっている。自分で好奇心を持って、自分で情報を得る人。自分で情報を得ると、そこから先は自分で判断するようになる。自分のお金を自分の「想い」に忠実に動かすようになる。

・投資を始めたい人へアドバイスするとしたら、少額でいいから複数の株式や投資信託分散投資することをお勧めする。リスク管理の観点から「1点買い」はなるべく避けましょう。そして目立った値動きがあったら、原因を調べることが大事。

・トレーダーとしての経験から言えるのは、「自分は正しい」という気持ちは投資をする上で足かせになるということ。大切なのはまず、自分の負けは素直に認めること。そして次に、なぜ間違ったかを考えること。

 

◯仮想通貨の正体

・偽造防止の点では、紙幣などの旧来型のお金よりも仮想通貨の方が優位に立っているかもしれない。仮想通貨はブロックチェーンにより、お金を使うことで仮想通貨の持ち主が変わる場合には、少なくともネットワーク上の3人の承認が必要になる。

ブロックチェーンの技術は、仮想通貨以外にも応用が期待されている。

株主総会

 議決権の集計が簡単になるだけでなく、会社側も議決権の集計を任される信託銀行も投票データを改変することが不可能になる。

フェイクニュース防止

 複数の人からの承認を取れない場合は「フェイクニュース」のフラグが外れない仕組み。

③食品の産地偽装防止

 農家や各工場を出るタイミングなどの各段階でブロックチェーンに記録を残せば安心。

④その他

 登記簿、自動車登録記録、電子書籍、音源データなどの不正防止。 

 

 お金の常識感がどんどん広がってきていますね。従来の概念はそれはそれとして必要ですが、固執していると足元をすくわれるというか、新しい流れに乗れずに置いていかれてしまいますね。お金の本質を一度は考えておくと、今後の社会生活に役立つのではないかと思います。

お金の正体

お金の正体

 

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