『1分間マネジャーの時間管理』(ケン・ブランチャード、ウィリアム・オンケンJr.、春・バローズ)(◯)
部下よりマネジャーの方が忙しいと思ったら読む本です。本書は、1分間シリーズで有名なケン・ブランチャード氏らによる、物語を通じたチームのタスク管理術に関する一冊です。一言で言うと、「責任の所在を明確にする」ということになりますが、時間管理や誰がボールを持っているのかということをはっきりさせて、次の工程へ進むこと。マネジャーは、任せたことが大けがをしないように、どう管理するかに力を注ぐこと。プレイングマネジャーの対極にあるマネジャー本来の役割に気づくことができます。本書に登場する「サルの管理」とは!
(印象に残ったところ・・本書より)
◯いないと困る管理職
・百害あって一利なし。自分がいないとみんなが困る。自分に代わる人間はいないと思っている管理職ほど、現場に災いをもたらすので、簡単に代えられてしまう。
◯サルの管理
・「サル」とは、プロジェクトやトラブルそのものではない。プロジェクトやトラブルに伴う”次の対応”を指す。
・立ち話が始まるまでサルは部下の肩に乗っていた。立ち話が始まると、部下の案件は僕と部下の共通案件になるから、サルは僕の方に片足を移した。そして、僕が「少し考えさせてくれないか」と言った瞬間に、サルはもう片足も僕の方に移動させる。部下は10キロほど身軽になって、その場を去るんだ。サルが僕の方に乗り移ったからだよ。
・部下にはその問題に対応するだけの能力がある。その場合、サルを預かった僕は本来なら部下がやるべき仕事を二つ引き受けたことになる。一つは問題への対応、もう一つは進捗状況の報告。
・サルのいるところに二つの役割が生じる。世話係と監督だ。この例だと、僕が世話係で部下がその監督。部下は自分が上役であることを確認したいから、僕のオフィスを1日に何度もののぞいて「こんにちは、例の案件どうなりました?」と聞くわけだ。そして満足のいく回答が得られないと早くやれと急かし始める・・本来は部下の仕事なのにね。
◯サル管理の心得
サル管理の心得の狙いは、何を、誰が、いつまでに、どのように実行するのか確定すること。
①サルを特定する
・上司と部下は”次の対応”を具体的に決めるまで、話し合いを切り上げてはいけない。
・”次の対応”が決まらないと、当然ながら対応のしようがない。責任者が決まらないと、その案件は連帯責任(無責任)になり、たなざらしになる可能性が高くなる。
・メリット
1)部下も自分なりの考えを準備してから話し合いに臨むようになる。
2)あらゆる局面が部下の主導でスムーズに進展する。
3)担当者のモチベーションが飛躍的に上がる。
②サルの担当者を決める
・各サルに善処するには現場の人間に託すのがいちばんである。
・部下と話し合うときは、すべてのサルの担当者を決定してから解散する。
・現場に任せる理由
1)現場の方が時間も人も融通できるし、大抵は私よりもサルの扱いを心得ている。
2)部下の方が現場の実務に詳しいから、サルを適切に扱える。
3)部下のサルをオフィスから締め出すことで、管理職にとって何よりも貴重な”自由活動の時間”が確保できる。
③サルに保険をかける
・サルを部下に託すためには、どちらかの保険をかけなくてはいけない。その狙いは、部下の自由裁量と上司の結果責任とをうまく兼ね合わせること。
A)上司の承認を得てから着手する
B)着手してから上司に報告する
・できるだけ現場から手を引き、必要な時だけ現場に口を出すために、できるだけBタイプを推奨し、必要な時だけAタイプを指示する。
④サルの健康診断を実施する
・現状認識はサルの健康管理に不可欠。どのサルにも定期健診を受けさせる。上司と部下はサルの定期検診の日程を決めるまで話し合いを切り上げてはいけない。
・定期検診の狙い。
1)世話係の日頃の成果を評価すること
2)問題を発見し、手遅れになる前に手当てすること
◯負のスパイラル
・部下に任せておけばいいサルをわざわざ引き受けるということは、サルが好きというメッセージを発しているのと同じだ。だから部下は当然のように私にサルを寄こしてきた。
◯託す対象は個々のサル、一任する対象はサルの群れ
・部下にサルを一任するようになってから、部下はサルに取り組む一方でサルの割り振りも決めている。部下たちは目の前のサルをケアしながら、新たなサルを特定し、担当者を決め、保険を選び、健康診断の予定を立て、実施している。言い換えれば、自分たちでサルの群れ(プロジェクト全般)を管理している。
・部下のパフォーマンスが向上した理由
1)私の指示を仰ぐ必要がなくなったこと
2)上司にサルを押し付けられるよりも自ら引き受けることによって、仕事に対する集中力やモチベーションが上がったこと
マネジャーの部下や仕事に対するスタンスに疑問を感じたら読んでみることをお勧めします。ある程度の人数まではプレイヤーの延長線上でも対応できるのかもしれませんが、人数やタスクが増えれば、自分一人の処理能力がもたらす影響は大したことがなく、メンバー一人ひとりのパフォーマンスを底上げしていくことが全体力の強化につながります。そんな観点を気づかせてくれる内容でした。