MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

世界の仕組みを物理学で知る(松原隆彦)

『世界の仕組みを物理学で知る』(松原隆彦)

 物理学がわかれば、世の中はもっと深くも、細かくも、広くも、美しくもなる。肉眼で見ている星だって、実は遠くからやってきている光なので、100年も1000年も前の星の輝きである。私のような超文系の人でも簡単にわかる平易な記載が魅力の本書。身の回りに溢れる物理の世界を紹介した一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯どうして雲は落ちないの?

・雲は、雲粒と呼ばれる、目に見えないくらい小さな小さな水滴や氷の粒の集まり。軽くて小さい粒のため、空気抵抗を非常に受けやすく、落ちるには落ちるものの、ものすごくゆっくりしたスピードでしか落ちれない。落ちるスピードがあまりにもゆっくりだから、ほとんど浮いているように見える。

・さらに風の影響も受けやすい。上空では上昇気流があったり、下降気流があったりするが、雲が落ちるスピードよりも空気の流れに押されて動く力の方が大きいため、下から風が吹けばふわっと浮かび上がり、なかなか落ちてこない。

 

◯空はなぜ青いのか、夕焼けはなぜ赤いのか?

・空気は無色透明に見えるが、酸素分子と窒素分子という粒子で成り立っていて、その上の空気、つまり大気中の空気の量は大量だ。そのため、太陽の光はそれらの粒子にぶつかって進路を曲げられ、いろいろな方向に「散乱」する。

・太陽光のうち、波長の長い赤い光はまっすぐ進みやすいのに対し、波長の短い光、藍、青といった青っぽい光は、進路を曲げられ、散乱しやすい。だから、空の上では青い光があちこちに散らばっていて、太陽と違う方向から目に入ってきた光というのは、青い光が多く、空は青く見える。

・上空の大気の厚さは、およそ8キロメートル。太陽が頭上にいる昼間には、青い光が目に入ってくる。ところが日が昇ること、日が暮れる頃というのは太陽は横の方にいる。そうすると、太陽からの光が大気の中を通る距離が数百キロにも長くなるため、散乱しやすい青い光は途中で失われてしまう。そして、他の邪魔をすり抜けてまっすぐに進みやすい赤い光だけが届くので、太陽の光に照らされた周りの雲はじんわりと赤く染まる。

 

◯地球の自転

・24時間で1回転というスピードは、実は月が関係している。月ができる前の地球はもっと速いスピードで自転していた。5〜8時間で1回転していたと考えられている。月ができ、月の力が地球の自転を遅らせる方向で及ぶため、24時間周期になった。

 

◯赤色はなぜ赤色に見えるのか?

・私たちは、物に当たった太陽の光や照明のうち、吸収されずに反射された光を見ている。赤色物のが赤色に見えるのは、その物が赤色以外の光を吸収し、赤色の光だけを反射していて、その赤い光が私たちの目に届くから。だからそのもの自体が赤い色の光を発しているわけではない。

・光の色は何で決まるのかといえば、波長だ。光は一種の波である。光は波として進んでおり、その一山(谷から谷、山から山)の長さを「波長」といい、波長が異なると、私たちの目には異なる色の光として認識される。

・光は、どんな種類のものも速さは一定だから、波長が短い光ほど1秒の間に山と谷を繰り返す回数が多く、波長の長い光ほど少ない。

・吸収された光は、やがて熱エネルギーに変わる。だから、すべての光を吸収する黒色のものは、熱を持ちやすい。

 

◯偏光レンズで水中がクリアになるのはなぜ?

・光には、実は左右に揺れる横方向に振動する波と、上下に揺れる縦方向に振動する波の2種類の光に分解できるという性質がある。太陽の光や照明からくる光は、多くの光の集まりなので、あらゆる方向に振動している(自然光)。

・これに対して、特定の方向にのみ振動する光、偏った光が「偏光」。

・偏光サングラスでは、レンズに偏向板という、縦方向の振動の光だけを通す特殊なフィルターが使われている。金属以外のものに反射した光は、反射面と水平方向に振動する偏光になるという性質がある。つまり、水面で反射した光のほとんどは、横方向の偏光に変わる。だから、縦方向の光だけを通す偏向板が入ったサングラスをかけて見ると、反射した光は遮られ、水中からの光が届きやすくなる。

 

◯私たちは死んだらどこへ行くのか?

・私たちの体は、死後、分子や原子に戻ってリサイクルされていく。

・今の私たちを構成する原子、クォークも、かつてはどこかで別の物質を作っていた。

・宇宙ができた頃に漂っていたクォークが太陽系の中をさまよいながら地球にやってきて、なんの縁か、私たちの体を構成する一部となり、そして死後もどこかでリサイクルされていくと考えると、感慨深いものがある。

 

 学問としての物理は難しそうなイメージですが、生活にまつわる現象を物理の観点で学ぶとスッと腹落ちしてスッキリします。身近な話題をテーマに知らないことを学ぶことはとても楽しいことですね。

文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る

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