MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

吾人の任務(堀義人)<2回目>

『吾人の任務』(堀義人)<2回目>

 本書は、グロービス経営大学院の代表である著者が、ハーバード大学留学〜起業〜MBAを創るに至った体験や思いが語られています。「吾人の任務」とは、著者の祖父が25歳の時に書いたエッセイの表題であり、祖父の追悼集の表題でもある。自分の任務とは何か。何をするために生まれてきたのか。パーソナル・ミッションであり、これを見つけ、貫いたとき、その人の生き様が見えてくる柱となるもの。自分にとっての吾人の任務を考えるきっかけとなる一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯HBS起業クラブ

・自らを振り返ると、僕はついついちまちまと小さいことのみを考えて、壮大なスケールで物事を考えることができないのだと思い始めた。その時、自分自身に誓い事をした。「とことんまで可能性を信じよう。まずは、nothing is impossible、全てが可能であると考える。可能性を否定するときは、冷静に環境を分析して、事実を基に論理的に組み立てて、不可能を証明してから初めて否定することにしよう」と。

・一番大切なのは、「最初から不可能だと決めつけられるようなものは一切存在しない」と思うこと。

 

グロービスのコンセプト

・「この事業は日本で成功するか?」「成功するのなら僕にできるか?」と自問自答した。20〜30以上の事業アイデアを考えた。僕がその際に重要視したクライテリアは、2点であった。

①発展系。

 事業を単体として捉えずに、その事業が成功した場合には、どのような発展系が見えるのか。

②ワクワク感

 僕自身が打ち込むにあたって、本当にワクワクドキドキ感動しながら打ち込めるかどうか。

 

◯吾人の任務

①「経営教育」を通して、意識の高い人々・企業を育成し、社会の創造と変革を行う。
②「ベンチャー・キャピタル」を通して、日本や世界に新たな価値観を創造する新規企業群を育成し、輩出する。
③「出版など」を通して、経営に関する知恵を集結させて、多くの企業・人々に新たな知恵を提供する。
④「オピニオン・リーダー」の立場で様々なメディアやカンファレンスの場などで積極的に発言し、国際社会に対して日本とアジアの立場を代弁する。
⑤将来的には、財界、審議会、国際機関などの対外的な活動に積極的に関与することにより、社会問題の解決に積極的に関与する。

・人生を楽しみながらも、良き仲間とともに、明るく楽しくクリエイティブに、これらを全うすることが「吾人の任務」ではないだろうか。

・僕は、お金欲しさやハングリー精神から起業を決意したわけでもないし、「今に見てろ」という気持ちを抱いて、ベンチャーを志したわけでもない。あくまでも、自分の夢と使命感に従って、社会に価値を創造する起業家になることが、「吾人の任務」ではないかと気がついたことにより、一起業家としての行き方を歩み始めた。

 

◯CEOの役割

①グループのビジョン、戦略、システム、組織を構築し経営の全責任を負う。

②対外的な顔としてステークホルダーとの良好な関係を構築する。

③良い人材を採用・育成して、グロービス・ウェイを浸透させ、良き企業文化を醸成し、スタッフの働きやすい環境を創る。

・企業のトップの重要な仕事の一つは、悪しき企業文化がはびこらないように体を張って止めること。常に良き企業文化を醸成するために真正面からぶつかることが重要。そのためには、問題がある発言に対しては、真剣に訂正したり、個人面談を行ったり、メールを通して注意を喚起したり、ミーティングの際には語気を強めたりする。

・良き企業文化を醸成するのは、トップの使命であり、同時に全構成員の責任でもある。

 

◯経営者が持つべき能力

・経営やは、常に、移り変わりゆく市場・競合他社・環境などの外的要因の中で、ヒト・カネ・チエ・モノ・時間・情報・ネットワークなどの経営資源を的確に分析して、目標達成に必要な戦略をつくる「考える力」が必要。

・その戦略をコミュニケートして数多くのスタッフを鼓舞する「人間関係能力」を備えていなければならない。

・さらには、それら戦略を考えるための定石である「ビジネス・フレームワーク」を習得していなければならない。

・これらの能力を兼ね備えていて、幅広い人的ネットワークを持ち、高い志を有している人材を「創造と変革の志士」と呼んでいる。

 

 私の母校の一つであるグロービス経営大学院。在学中に本書を初めて読みましたが、あらためて読み直しても印象は変わらず、堀学長の熱いまっすぐな想いが伝わってきます。卒業して3年が経ち、在学中よりも「吾人の任務」ははっきり見えてきていると思います。それは、卒業後も在学中以上に自分の価値観や自分のど真ん中なことを探求している結果かもしれません。人生にとってとても大切なこと。「吾人の任務は?」と尋ねられた時に、躊躇なく語れる状態であり続けたいものです。

新版 吾人の任務―MBAに学び、MBAを創る

新版 吾人の任務―MBAに学び、MBAを創る

 

f:id:mbabooks:20190703073118j:plain