『これから働き方はどう変わるのか』(田坂広志)
2003年に出版された本書。当時、インターネット革命という言葉が広がった頃で、未来の働き方はどう変わるのか?という点が本書のテーマ。一人ひとりが創造的に仕事に取り組め、発信していくことが可能になるという想定は、2022年現在、現実的なものとして体感でき、本業+副業も当たり前の時代に。そんな今だからこそ読んでみると気づくことが多いのは、肌感覚を持って本文が腹落ちするからだというように思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯石切職人の寓話
旅人がある街を通りかかった。その街では、新しい教会が建設されているところであり、建設現場では、二人の石切職人が働いていた。
旅人は一人の石切職人に聞きました。「あなたは何をしているのですか?」その問いに対して、石切職人は、不愉快そうな表情を浮かべ、ぶっきらぼうに答えた。「このいまいましい石を切るために、悪戦苦闘しているのさ」。
旅人は、もう一人の石切職人に同じことを聞きました。するとその石切職人は、表情を輝かせ、生き生きとした声で、こう答えた。
「ええ、今私は、多くの人々の心の安らぎの場となる素晴らしい教会を作っているのです」
→どのような仕事をしているのか。それが我々の仕事の価値を定めるのではありません。その仕事の彼方に、何を見つめているか。それが、我々の仕事の価値を定めるのです。
◯仕事の報酬
・「目に見える報酬」(給料、収入、役職、地位)だけに目を奪われてはならない。目に見えない3つの報酬を深く見つめよ。
・前者は結果として得られる報酬であり、ゼロサムの報酬。
・後者は自ら求めて得るべき報酬であり、プラスサム(どちらにもプラスにできる)の報酬。
・目に見えない3つの報酬
①職業人としての能力
②働き甲斐のある仕事
③人間としての成長
・どのような仕事をしているのか。それが仕事の「働き甲斐」を定めるのではありません。その仕事の彼方に何を見つめているか。それが、仕事の「働き甲斐」を定めるのです。
◯これから、すべての人々が「社会起業家」(新しい事業を起こす人)となる時代が始まる。
・6つの社会動向を背景とした6つの理由
①社会貢献の働き方を求める人々が増えている。
②営利企業にも「社会貢献」が求められる時代となる。
③非営利組織にも「事業性」が求められる時代となる。
④「起業家」という言葉が広い意味で使われるようになる。
→「起業家」という言葉と「起業家精神を持って活動する人」という言葉の境界が自然に消え去りつつある。
⑤会社を創らずとも「起業家」としての活動が可能となる。
⑥「起業家」に必要な知識が容易に手に入るようになる
◯社会起業家の働き方の新しいスタイル
①立志:良き社会を実現しようとの志と使命感を持つ
②成長:自分自身の自己変革と人間成長を目指す
③共感:多くの人々との共感と協働を生み出す
④革新:現在の事業の革新や新しい事業の創造を行う
⑥信念:生涯にわたって社会変革の歩みを続ける
⑦伝承:次の世代に志と使命感を伝えていく
自分の価値観に基づき、自分らしい働き方で、社会に貢献していく。そんなスタイルが可能になった現代。通信環境と発信ツールが整い、より便利な社会になったからこそ、そのインフラを活用して、いかに行動し、社会に貢献できるか。貢献活動をしていった先に、人的ネットワークがつながり、自分の取り組みが世の中に広まり、自分を知ってもらえる機会が広がる。それがまた新しい自分らしい仕事との出会いにつながる。そんな循環が回せると、働くことが「はた(側)を楽」にし、働くことと天命が一致してくるのだろうと思います。