『老子×孫子(NHK100分de名著ブックス)』(蜂屋邦夫、湯浅邦弘)
「水」のように生きると題された本書。「柔」と「剛」のバランスを解く両者の教えがコンパクトにまとまっています。「最上の善なる在り方は水のようなもの」(老子)、「常なる形がない水の姿こそ理想である」(孫子)が意図することとは?中国古典には現代を生きる上で役立つヒントが満載です。
【本書の学び】
①最も良いのは戦わないこと。
②「無為自然」:赤ん坊のような純粋で素朴な自分に戻るべし。無為でいるためには学ぶべきではない。
③水のように、対象によって柔軟に姿を変え定型を持たずに変化する。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯「道」とは何か?
「道」とは何かが生まれる根源的な道筋。秩序のこと。
・この世界の隅々に行き渡る無限の大きさがある。
・実体はないが、そこには確かな何かがある。
・本来、言葉にはできないもの。なんの意図も持たない客観的な立場のもの。
・つまり「無」である。
・「道」は天地よりも先に存在する何かであり、そこからすべてが生まれた。
◯戦争とは何か?
・国家の一大事。一旦初めてしまえば国家経済にも深刻な打撃を与える。だから戦いは早く切り上げるのが良い。
・もっと良いのは軍事的な衝突をできるだけ避けること。
・「五事七計」で勝算を図り、事前に勝敗を知るべき。
・理想の勝ち方はスパイの画策や謀略によって勝敗を決すること
・つまり、戦闘を行わずに敵を屈服させるのが最善の方法
◯どう生きるべきか
・「無為自然」=なんら作為をせず、あるがままの状態で生きよ
・無為でいるためには学ぶべきではない
・赤ん坊のような純粋で素朴な自分に戻るべし
・捨てて捨てて捨て去り切ったところに「道」に通じる世界が開ける
・理想的な無為のあり方は「柔弱」、すなわち「水」である。
・水は意図を持って流れているわけでもないのに、その本性に従うだけで有益なものをもたらす。
・作為がなく、かつ無言でなされる行いこそがこの世で最も素晴らしい。
◯人はいかにあるべきか(戦い方から読み解く人生哲学)
・知恵、信頼、思いやり、勇気、厳しさを併せ持つバランスのとれた人格が大事
・さらに迅速な行動が必要
・ことに当たっては冷静な状況判断ができること
・自分の実力に応じた対処ができること
・一つの減少や行動には、必ず利益の面と弊害の面があることを知らなければならない。
・「気」が充実している時を大切に知らなければならない。
・水のように対象に応じて柔軟に姿を変え定型を持たずに変化せよ
◯温和外交のために
・物事は小さくして易しいうちに対処せよ
・慎重の上にも慎重に
・知識をひけらかすことなく、世間に同化しているのが良い
・常にへりくだれ
・積極的な意気地なしになれ
・世の中には様々な性格を持った人がいるのだから、作為的に操作しようとしない。
・「無為の統治」=ことさらな指示を与えず、物事の道筋をつけるだけで、あとは周りの自主性に任せよ。
◯人間関係の極意(将軍のあるべき姿から)
・上に立つ人は自分が統率する人の心をきちんと掴んでいなければならない
・まるで我が子のように相手を愛おしく思うこと
・ただし、温情と武威、つまり「柔」と「剛」のバランスも必要
・相手のことをよく知ることが大事
・同時に、自分のこともよく知っていなければならない。
・あえて自分を相手にさらす必要はない
・逆に、相手がさらしている実態も本質かどうかはわからないので、相手の言動を100%真実だと受け止めてはいけない。
◯生き方のヒント「
・欲望を捨て、あるがまま素朴に生きることこそ充実した生き方
・分相応にして今の暮らしに満足する
・己の身の丈を知り、それ以上を望まない
・美醜、善悪、貴賎、優劣といった相対的な価値観を捨てる
・絶対的な正しさや善などこの世に存在しない。幸せになるか不幸になるかは誰にもわからない。
・目的のために積極的に行動するのではなく、謙虚に受動的であれば良い。
・「頑張らない」くらいの姿勢がちょうどいい。
◯知略の例から生き方を学ぶ
・事前の分析、計画・立案が大切
・そのために情報収集こそが大切
・そして、何ごとにおいても機先を制して主導権を握ること
・水のように、臨機応変に振る舞うこと
・成功の余韻にいつまでも浸っていてはいけない
・何より大切なのは、勝ちを目指すのではなく、まずは守って負けないことを目指す
・勝てない相手とは戦わなければ良い
◯「水五則」(黒田如水が残したとも伝わる)
①自ら活動して他を動かすは水なり。
②障害に遭いて激しくその勢力を100倍するは水なり。
③常に己の進路を求めて止まなざるは水なり。
④自ら潔うして他の汚濁を洗い、しかも清濁併せ容るるは水なり。
⑤洋々として大洋を満たし、発しては雲となり雨と変じ、凍りては玲瓏たる氷雪と化す。しかもその性を失わざるは水なり。
「水」のような生き方、知識が増えるからこその様々な我欲、あるがままに物事を捉えること、言葉のラベリング、いろいろな場面で別々に学んだことが徐々に繋がり始めています。特に老子のほうは、あり方の源流にある内容であるように思いました。
別冊NHK100分de名著 老子×孫子 「水」のように生きる
- 作者: 蜂屋邦夫,湯浅邦弘
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/03/30
- メディア: Kindle版
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