菜根譚×呻吟語(NHK100分de名著ブックス)(湯浅邦弘)
『菜根譚×呻吟語(NHK100分de名著ブックス)』(湯浅邦弘)
『菜根譚』と『呻吟語』はともに中国の明の時代末期の混乱した時代に、人生のアップダウンを経験した二人の思想家が自らの人生を振り返りつつ、多くの悩める人々に向けて残した処世訓です。どちらも貴族階級の知識人向けに書かれています。本書では、両書の名言を取り上げつつ、「100分de名著」の特徴であるエッセンスをざっくり理解するという点で負担が少なく読めるのが特徴です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯逆境を乗り切る(『菜根譚』)
・「長く地上に伏せて力を養っていた鳥は、一旦飛び立つと、他の鳥よりも高く飛翔でき、他の花よりも先に咲き誇った花は、早く散ってしまう。この道理を理解していれば、中途で足場を失ってよろめく心配を免れることもでき、成功を焦る気持ちを消すこともできる」
・「治世にあっては四角張って生き、乱世にあっては丸く生き、末の世にあっては、四角と丸の生き方を併用しなければならない。善人を待遇するには寛大に、悪人を待遇するには厳格に、普通の人を待遇するには寛大・厳格を併用するのが良い」
◯リーダーの条件(『呻吟語』)
・「利益となるような事を興そうとするときには、あまりに急ぎすぎてはならない。左を見たり右を見たりする(慎重になる)必要がある。弊害を改革するにもあまりに急であってはならない。しばらく考え過去をよく振り返る必要がある」
◯譲ること(『菜根譚』)
・「狭い小道で人と出会ったら、自分の方から一歩避けて、先に相手を通してやり、美味しい食べ物は自分の分から3割ほど取って相手に譲り与えて十分に食べさせてやる。このような心掛けこそ、この世を渡っていく上で、一つの極めて安全安楽な方法である」
・「家族愛の中にこそ一個の真の仏があり、日々の生活の中にこそ一種の真の道がある。人の心が誠で気が和らぎ、穏やかな顔つきで優しい言葉を使い、そして父母兄弟の間がまるで体が溶け合うように気持ちが互いに通じ合えば、正座をして息を整え、坐禅して念を凝らすよりも数万倍の効果があろう」
◯まずは自分を鍛えよ(『呻吟語』)
・「物はいい加減に仕舞い込んでいて無くしてしまうこともあれば、厳重に仕舞い込みすぎて無くしてしまうこともある。同様に礼も粗忽なために誤ることもあれば、丁寧すぎてしくじることもある。だから心を用いる秘訣は、ちょうど程よい中間にある」
・「私は、五十歳になって、人と争わない五つの味を悟ることができた。それは何かと問われたので、こう答えた「①財産を蓄えている人とは富を争わない、②進んで物事を興そうとする人とは地位を争わない、③うわべを飾ろうとする人とは名声を争わない、④驕り高ぶっている人とは礼節を争わない、⑤血気盛んな人とは是非を争わない」
◯中庸のすすめ(『菜根譚』)
・「①静かな場所で考えが澄み切っていれば、心の本当の姿が見える。②暇なときに気持ちがゆったり落ち着いていれば、心の本当の働きがわかる。③あっさりとして物事に執着せず穏やかでいれば、心の本当の味わいが得られる。心を見つめ真実の道を悟るには、この三つの方法に及ぶ物はない」
・「人はほんの少しでも欲張る心を抱くと、強い心も惰弱になり、知恵も濁り、恩愛も残酷な心となり、潔癖な心も汚れてしまい、一生の品格を壊してしまう。だから昔の人は、貪らないという事を宝とした。それこそが、俗世を超えられた理由である」
本書でざっくりとイメージが掴めれば、あとは個別に掘り下げていくのに、それぞれ一冊買って読むのがいいかなと思います。100分de名著シリーズは、そういう流れを作れるので、とっても便利ですね。