仕事選びのアートとサイエンス(山口周)
『仕事選びのアートとサイエンス』(山口周)(◯)
VUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧)な社会環境の中、仕事選びは、予定調和させることはできない。自分をオープンに保ち、いろんなことを試し、しっくりくるものに落ち着くしかない。本書では、「幸福になるための仕事選び」というテーマで「自分の仕事選びを考える」切り口や知識がまとめられています。
【本書の学び】
①幸運は準備のできている人にだけくる(人脈力×信用力×スキル)
②いい偶然を起こすには裏表のない人間であること
③基礎力の大切さ(情報処理力×知識・ノウハウ)
(印象に残ったところ・・本書より)
◯「転職75%が失敗」は論理的におかしい
・「何度もトライできる」というゲームの特性を無視して、1回の結果で成功・失敗の確率を元に議論することは論理的に間違っている。
・転職に4回挑戦して4回とも失敗する確率は、数学的には3割程度。
・転職の前後での年収の増減だけを捉えて、成功・失敗を評価するものもおかしい。
◯「好き」×「得意」なことを選べと言われても・・
・やったことがないのに何が得意かを判断するのは、難しいどこの話ではなく不可能。「得意」のレベルが本当に社会に出て優位性を発揮できるだけのポテンシャルを持つものかどうかは、誰にもわからない。全てはやってみないとわからない。
・とにかく運動量=モビリティを高めることで、色々と実際に試してみなければならない。
◯「好き」と「憧れ」の混同
・「自分は何になりたいのか?」(憧れ)と「自分は何がやりたいのか?」(好き・嬉しい)は全く異なる質問。
・職業選択に当たって「地道な努力を続けられるかどうか」というのは、実は最も重要な着眼点。そのためにも、「自分は何がやりたいのか?何をしていると楽しいのか?」という質問の方が、「自分は何になりたいのか?」という質問よりもはるかに重要。
・その職業なりの面白さや楽しさというのは、結局のところ仕事をある程度までやり込んでみないとよくわからない。
◯本当に「自分で選ぶ」とは?
・自分が何かの意思決定をしようとしている時、その選択は本当に内発的な動機なのかどうかを今一度考えてみる。
・「速度を上げるばかりが、人生ではない」(ガンジー)
・キャリアを形成する上では、「何をするべきなのか」という問いを逆転させて「何が譲れないか」ということを明らかにする方が有用かもしれない。
◯「いい偶然」を呼び込むには?
・クランボルツ(ハプンスタンス・セオリーの提唱者)の5つのポイント
①好奇心
②粘り強さ
③柔軟性
④楽観性
⑤リスクテイク
・幸運は準備のできている人だけに訪れる。そのためには、「人脈力」と「信用力」の掛け算、「プロセッシングスキル」(情報処理力)と「ストックスキル」(知識・ノウハウ)が必要。
・「人脈力」=「人脈の広さ」×「信用の深さ」
・キャリアの転機に繋がる縁は、親戚や友人等の親しい間柄ではなく、むしろそれほど親しくない関係の人たちからもたらされることが多い(ウィーク・タイズ=弱い絆)。
◯将来「いいご縁」を運んできてくれるキーマンが誰なのか?
・その時になってみないと分からない。
・「いいご縁」を呼び込むには、誰に対しても裏表がない自然体の「いい奴」でいる方が、結局は期待利得が高い。
◯いい偶然をどう捉えるか?
・基礎的な戦闘力を高めること。
・「プロセッシングスキル」とは、入力された情報を何らかの形で処理して出力する能力。ロジカル・シンキングなど。
・「ストックスキル」とは、自分の中に蓄積された付加価値の源泉となる知識やノウハウ。経営のケーススタディに関する知識など。
◯英語のスキル
・パッシブセイフティとして、英語力を鍛えておくに越したことはない。
・TOEIC730点という点数は、仮に英語が必要な事態(配置転換等)に直面したとしても、英語でなんとか仕事をこなせる最低レベルの水準であり、逆に言えば、「その時」になってこの程度の英語力がなければ、それなりの運命を受け入れるしかない。
◯ストックを構築するための読書
・「学びの大きい本をいかに選ぶか」×「いかに効率的に読むか」
・積ん読を恐れない。つまらないと思ったら、まずは書棚に戻そう。
・いかに選ぶかという点は、今この瞬間に脳が最大効率で吸収できる本を常に選ぶ。「面白いか、面白くないか」という素直な感覚。
・「食欲がないのに食べることが健康に悪いのと同じように、欲望を伴わないのに本を読むのは頭脳をむしろ損ない、記憶にも残らない」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
・関連分野を固め撃ちして読む。関連することを深掘りしていく(メトニミー的読書)は全体をつかみやすい。比喩的に大量領域を横に広げていく(メタファー的読書)は濃く太い理解が促進される。
・読書の累積がある段階を超えて本と本との関係性が見えてくるようになると、読書のスピードも加速度的に高まっていく。
「いい偶然を呼び込む」という発想はとても面白いと思いました。それは決して偶然任せにするのではなく、ちゃんと準備しておくということ。その準備は人脈であり、情報発信であり、基礎力の鍛錬。毎日の積み重ねってとっても大切ですね。