あまりに良書なため、勉強会のテーマとして取り上げることにしました。コンテンツ作成のために改めて読み直しましたが、特に前半戦は線引き箇所が多数になります。今回は、これまでに線を引かなかったところで、何かコンテンツ化できるものはないかと探しながら読んでみました。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯得意時代と失意時代
・およそ人の禍は多くは得意時代に萌(きざ)すもので、得意の時は誰しも調子に乗るという傾向があるから、禍害はこの欠点に食い入るのである。
・得意時代だからとて気を緩さず、失意の時だからとて落胆せず、情操を持って道理を踏み通すように、心がけて出ることが肝要である。
・多くの人の得意時代における思慮はまったくそれと反し、「なにこれしきのこと」といったように、小事に対してはことに軽侮的の態度を取りがちである。
・しかしながら、得意時代と失意時代とにかかわらず、常に大事と小事とについての心がけを緻密にせぬと、思わざる過失に陥りやすいことを忘れてはならぬ。
・小事かえって大事となり、大事案外小事となる場合もあるから、大小に関わらず、その性質をよく考慮して、しかる後に、相当の処置に出るように心がけるのが良い。
・しからば、大事に処するには如何にすれば宜(よ)いかというに、まず事にあたって、よくこれを処理することができようかということを考えてみなければならなぬ。
・事柄に対して如何にせば道理に契(かな)うかをまず考え、しかしてその道理に契ったやり方をすれば国家社会の利益となるかを考え、さらにかくすれば自己の為にもなるかと考える。そう考えてみた時、もしそれが自己のためにはならぬが、道理にも契い、国家社会をも利益するということなら、余は断然自己を捨てて、道理のある所に従うつもりである。
・小が積んで大となる。小事必ずしも小でない。世の中に大事とか小事とかいうものはない道理。大事小事の別を立ててとやかくいうのは、君子の道ではあるまいと余は判断する。
・人の調子に乗るは宜しくない。「名を成すは常に窮苦の日にあり、事を敗るは多く得意の時に因す」と古人も言っている。
・失敗は多く得意の日にその兆しをなしておる。人は得意時代にも調子に乗るということなく、大事小事に対して同一の思慮分別をもってこれに臨むが良い。
・「小なる事は分別せよ、大なることに驚くべからず」(水戸黄門光圀公)
・「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し、急ぐべからず・・・云々」(徳川家康)
⇨「士は持って弘毅ならざるべからず、任重くして道遠し。仁もっておのが任となす。また重からずや。死してのちやむ。また遠からずや。」(論語)
・「及ばざるは過ぎたるよりまされり」(徳川家康)
⇨「過ぎたるはなお及ばざるが如し」(論語)
◯人格と修養
・「君子(教養人)たる者は、言葉や行動について慎重にすることによって災難を避け、態度に誠意を尽くすことによって人からよそ者扱いされることがなく、相手に敬意を払うことによって侮辱されることがないようにすることだ」(礼記)
・「(仁義礼智等)これを求めるには方法がある。また身につけるにも天命がある。(それを知らないで)求めたところで身につく者ではない。(自分の)内面に向うべきところを外に求めたりするからである」(孟子)
内省の書として、読むたびに気づきがある本書。名著とは、自分の成長に応じて読み続けた時に新たな気づきが発見でき、含意が明らかになり、そしてまた次へ進む原動力になるような書物ではないかと思います。こういう本に出会えてありがたい限りです。