『寂聴 般若心経』(瀬戸内寂聴)(◯)
とってもわかりやすい寂聴さんの全11回の講話集。毎回、前半戦は余談から入り、半ば以降が般若心経の解説という構成。語り口調というのもわかりやすいし、端的にでありつつ、大事な点は繰り返し出てくるのが、ちょうど良い塩梅です。般若心経の本文は262文字、題字を入れて276文字。元になった『大般若経』が約600巻あるので、この短い経文に凝縮された意味は般若経のエッセンスが集約されており、興味深い内容です。余談や仏教解説も学びになります。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯全文(Wikipediaより)
舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。
舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。
是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界。乃至無意識界。無無明。亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。
無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罜礙。無罜礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。
三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。
故知。般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。真実不虚故。説般若波羅蜜多呪。
即説呪曰。羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶。般若心経
・摩訶:大きい、偉大な
・般若:知恵
・波羅蜜多:区のない浄土(彼岸)へ至る
⇨そのために6つの行をする(六波羅蜜)
①布施(施す)、②持戒(戒律を守る)、③忍辱(辛抱する)、④精進(努め励む)、⑤禅譲(坐禅する)、⑥智慧
・心:信三
・経:お経
◯照見五蘊皆空
・照見:見る
・五蘊:人間を構成しているもの(蘊)。
①色:もの
②受:ものを受け取る作用
③想:思うこと
④行:思ったことを認める
⑤識:それを感じる心
⇨我々の肉体的存在とか、あるいは感じ方、心の動き、そういうものは全て空であると照見する。考えたということ。そして、そのことによって一切苦厄、あらゆる苦はここから起こることを感じた。
⇨人間の苦とは何か。仏教では四苦八苦と言っている。四苦は、生老病死。もう4つは、愛別離苦(愛するものと別れる苦しみ)、怨憎会苦(嫌な人、嫌いな人とも顔を合わせなきゃいけないこと)、求不得苦(欲しいものが手に入らないこと)、五蘊盛苦(肉体や心が欲望で燃えること)。
⇨執着するというのは、五蘊があるから。五蘊がなければ、すなわち執着する元のものがなければ、苦しみから解放される。
・五蘊皆空:物や現象があっても、それを認識する心の働きがなければ、ないと同じこと。
⇨我々の周りのすべての出来事、すべての物質には「因」があって、それは「縁」という作用が加わる。そうするとその結果、「果」というものが起こる。
◯無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故
・苦集滅道:「四諦」のこと。諦は「誠」「つまびらか」「明らか」。誠を明らかにする、ということは真理。四諦は4つの真理。
①苦諦:生老病死
②集諦:苦の原因、四苦八苦。そのもとは何か。無明=渇愛であるということがわかること。
③滅諦:それではそれをなくすにはどうしたら良いか。無明を滅ぼしてしまえば良い。
④道諦:迷いのない理想の境地に入ること。そのために必要なのが「八正道」。
1)正見:物事を正しく見ること
2)正思:正しい考え
3)正語:正しい言葉
4)正業:悪いことをしない
5)正命:正しく生きる
6)正精進:常に努力する
7)正念:心を正しく持つ
8)正定:心の悩み、波立ちを鎮める
長くなりそうなので、全文は紹介できませんが、特に後半は、大乗仏教の世界から密教の世界に切り替わるところがあり、これは作りとしても興味深いところです。以前、写経をしたことがありますが、その時は意味もさっぱりわかりませんでしたが、意味を理解して写経すると感じるところが違うだろうなぁと、写経に興味が映っています。