『向上心』(サミュエル.スマイルズ)(◯)
『自助論』で有名な著者のもう一つの名著。「人間いかに生きるか」。生き方の大原則を示した本書は次の6章から成ります。「自分を大きく育てる」「個性を磨く」「自分を生かす働き方」「見識を高める」「良い人間関係を作る」「人を動かす」。こういったテーマの本は、読むと「当たり前」に感じるけれど、振り返って「ちゃんとできてるか?」と自問自答すれば、なかなか実行するのは難しいと感じる領域だと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯朗らかさ
・明朗さは人間を育てるための何よりの土壌。
・「何よりもよく効く強壮剤は、いつも朗らかな気持ちを持つこと」(18世紀の医者マーシャル・ホール)
・19世紀を代表する政治家パーマストン。彼が精力的に働き続けられたのは、沈着冷静な性格といつも朗らかさを失わなかったこと。この2つは、忍耐する習慣、他人の挑発にすぐに乗らない習慣、態度を変えずに我慢する習慣、自分を中傷したり、悪しざまに罵ったりする言葉を耳にしても腹を立てず、その言葉で悩んでみたり自分を苦しめたり、狭い了見を持たぬように努める習慣などを通じて身についたもの。
◯自分を生かす働き方
・最も理想的な教養は、物事に熱中し、勤勉に働く習慣を身につけて精神を鍛え、急場を切り抜ける才覚を育てて力強く躍動する自由を生み出すこと。これらはみな、実務面で成功を収めるためになくてはならない条件。
・無理のないように適度に働けば、身体のためにも精神のためにも良いということ。害があるのは働きすぎの場合であって、働くこと自体ではない。厳しい仕事よりもっと悪いのは退屈な仕事、体力の消耗が激しい仕事、先の望みがまったくない仕事。将来が期待できる仕事は健康的だ。社会の役に立ちながら、希望に満ちて仕事をすることは幸福の鍵を握る秘訣。
・人格を支える最良の柱となるのは、いつの場合にも習慣。その習慣に従って意志の力が良い方にも悪い方にも働き、場合に応じて支配者になったり残酷な独裁者になったりする。我々は習慣に自ら喜んで従う家臣になるか、服従する奴隷になるかである。どちらかなのだ。習慣は用意周到な訓練によって作られる。規則正しい習慣と実習がどれほどの効果を上げるか、それはまさに驚異である。
◯良い人間関係を作る
・思いやりの気持ちは、他人の心の扉を開く黄金の鍵である。相手を思いやれば、それが物腰の柔らかな礼儀正しさとなって自然に表れるだけではなく、相手の心を見抜く洞察力を与え、知恵をも広げてくれる。思いやりの気持ちは人間性の美しさの中でも最高のものと言ってもいいだろう。
・心配りとは、主として他人の人格を尊重すること。自分が尊敬されたいと思う時、人は相手の個性をまず尊重し、相手の考え方や意見がたとえ自分のそれとは違っていても、それを快く認めてやるはずである。
・心配りをわきまえている人は相手に敬意を払う態度を忘れず、時には辛抱強く話を聞いてやるだけで、相手に尊敬されることすらある。このような人は忍耐強く自分を抑える能力があり、善悪の判断を厳しく下さないのである。相手を悪いと決めつければ、自分もきっと同じ目に遭わなければならないだろう。
『自助論』といい本書といい、前向きな思考を作り、着実に進めていく積み上げ型の姿勢が伺えます。私の重きを置いている考え方でもあり、フィット感はそういった価値観から来ているのかなあと思います。