MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

寂聴 仏教塾(瀬戸内寂聴)

『寂聴 仏教塾』(瀬戸内寂聴)(◯)

 仏教についての講話をまとめた一冊です。一般の聴講者を対象にした講話なので、とても分かりやすいのが特徴です。仏教用語はたくさん出てきますが、都度解説が入るので、イメージは掴みやすいかと思います。「仏教について学びたい」と思った時に、何から入るか迷うところですが、こういった講話から入って、興味のあるところを深掘りしていくというスタイルもいいかもしれません。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯人間の愛(渇愛

・仏教では愛を二つに分ける。一つは渇愛、もう一つは慈悲。人間は渇愛の生き物。慈悲とは仏さまの愛。

・人間の愛、つまり渇愛とはすべて自己愛。自分自身が大切にされたいから、他人を愛する。恋人や、夫や、子供にいくら優しくしても、結局が自分がかわいい。自分を愛してもらいたいから、他人を愛する。それが渇愛の正体と言ってもいい。

・お釈迦さまは、渇愛を捨てて慈悲の心を持ちなさいとお教えになった。自分のために愛するのではなく、相手からのお返しを求めずに、あげっぱなしの無償の愛を与えなさいということ。

・人間の中には、煩悩がある。欲望ともいう。生きている以上、その煩悩の炎は消えるものではない。渇愛は、煩悩の炎から生まれる。つまり、生きている人間は渇愛から完全に離れることはなかなかできないということ。

 

◯人間の幸せはどこにあるのか

・お釈迦さまの仏教は、人間が幸せに生きていくにはどうしたらいいか、という教え。

・あなたがそこにいるだけで、人に少しでも和やかな気持ちを与えることができれば、それが慈悲なのだと思う。その時に大事なのは、「相手のためにしてあげる」というのではなく、「させてもらう」という気持ちを持つこと。感謝されたいと思って何かをするのではなく、そうさせてもらえることを自分自身で感謝する。

 

◯日にち薬

・世の中には逆縁(子供や孫が自分より先に死ぬ)に泣いている人、苦しんでいる人はいっぱいいる。自分だけが不幸なのではない。どんな苦しみや悲しみも、決していつまでも続かない。いつか必ず終わりが来る。この苦しみが一生続くように思えても、絶対に続かない。物事はすべて移り変わっていく。これを「無常」という。「常」が「無い」というのが無常。同じ状態は続かないということ。これは仏教の根本思想。

 

◯中道の思想

・お釈迦さまは決して苦行はダメだとはおっしゃいませんでした。ただ、苦行ばかりではダメですよと教えておられた。このことを「中道の思想」という。

・つまり、本当の悟りを得ようと思ったら、苦行ばかりをしていてはいけない。しかし、だからと言って、それとは正反対に快楽にふけってばかりいても悟れるわけではない。その中間が大事なのだというわけ。どちらにも偏らない。中間の道を進みなさいというのです。それが中道ということで、その具体的な方法として八正道をお説きになりました。

 

四諦

・お釈迦さまは菩提樹の下で悟ったときに、この世の四つの真理を発見なさいました。それが「四諦」。四諦は「苦諦、集諦、滅諦、道諦」の四つをまとめた言い方。

・「苦諦」とは「この世は苦しみである」という真理。

・「集諦」とは「苦は無明から起きる」という真理。つまり「集諦」とは「十二因縁」のこと。

・「滅諦」とは「苦を滅ぼすには無明をなくせ」という真理。

・「道諦」とは「悟りに至るための真理」を意味する。「道諦」とは八正道のこと。悟りを開くには、8つの正しい行いをしなさいというのがお釈迦さまの教え。正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定・・・この8つを行えば、無明は消え、苦もなくなり、悟りに至る。これがお釈迦さまの説いた八正道。

 

 難しいことをわかりやすく。これは、日常においてもぜひ身に付けたい能力ですね。著者の書籍はこの点が最も優れたところで、そこが評価されてとても人気があるのかなと思います。

寂聴仏教塾 (集英社文庫)

寂聴仏教塾 (集英社文庫)

 

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