MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

D2C(佐々木康裕)

『D2C』(佐々木康裕)(◯)

 わかりやすい!おもしろい!でお勧めエントリーです。D2Cとは、Direct to Customer。テック×小売を実現した新しいスタイルの業態です。表紙・裏表紙から引用すると、単なる中抜きではなく、顧客との関係性、ものづくりのプロセス、ブランティングのあり方、プロダクトの売り方など、様々な側面で不可逆の変化をもたらした時代を象徴するパラダイムシフト。「ストーリーテリング」×「データドリブン」の世界。現在どんなビジネスが新たなマーケティングを牽引しているのか、よくわかる1冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯D2Cとは

・新しい消費の価値観を持つミレニアル世代以下のターゲットに対し、ユニークな世界観を下敷きにしたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話、垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期間に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランド。

・出発点:デジタルネイティブ

・チャネル:直接販売、直接コミュニケーション

・価格帯:安価

・成長速度:指数関数的成長

・提供価値:ライフスタイル(世界観)

・ターゲット:ミレニアル世代

・顧客の位置づけ:コミュニティであり仲間

 

◯新しい世界観

・世界観作りの目的:コアバリューのコンテナ

・表現の手段:本何冊分ものストーリー

・語るレイヤー:ブランド

・認知の方法:語りかけ、理解モデル

・訴求する価値:倫理的価値

・対象世代:ミレニアル世代以下

・作り手:ブランドとユーザーの共創

 

◯意義を求める世代

・ミレニアル世代(1981〜1997生まれ)

・Z世代(1998〜2016年生まれ)

・2027年には、ミレニアル世代が19億人、Z世代が23億人と、非常に大きな消費グループを形成する。Z世代は、現在アメリカの人口の1/4に上り、2020年までには消費の40%を占めると言われている。今後のブランドは彼らに受け入れられるモノを作らなければ、長期的に生き残っていくことは難しい。

 

◯若者が求めるのは「精神性」

・Z世代のうち78%は環境や倫理への配慮がなされた商品に対してポジティブな印象を持っている(調査会社Do Something Strategic)

・Z世代のうち85%は、彼らが働く企業は社会的問題に対して何らかのアクションを取る必要があると考えている(同上)

・所有物ではなく行動こそが自分を表現していると考えている。

⇨精神性を備えたブランドの必要性

 

◯D2Cブランド(詳細はお調べください・・・)

・Warby Parker:アメリカ文学史のカリスマと現代的UXの統合

・Everlane:原価を全て開示する過激なまでの透明性

Black Friday Fund:利益を労働者に還元する

・Hims:SNSでシェアしたくなるED(勃起不全)薬

 

◯プロダクツのコンテンツ化

・プロダクトがストーリーをまとう。意味レベルの価値を持ったプロダクトは、機能レベルでの比較などされない。他のプロダクトと全く違う価値観を持ち、マーケットの中で、ユニークな絶対的なポジションを獲得することができる。

・思わず語りたくなるストーリーはあるか。ブランド側に求められるのは、ビジュアルの配慮だけではない。世界観に紐づく豊富なストーリーやビジュアルをどのタイミングで、どの媒体にどう提示していくかの構想が必要となる。

 

◯顧客をコントロールせず、エンカレッジする

・すべての声をコントロールするのではなく、顧客の発信や、発信しようとしている顧客を「エンカレッジ(勇気づけ、動機づけ)」するという発想。

・重要なのは「話す」ことよりも「聞く」に重きを置くこと。ブランドは単に情報やコンテンツを一方的に話すだけではなく、逆に顧客が発していること、顧客同士で交わされている会話に耳をすませ、人々が自分のブランドについてどのように語っているのか、どのような言葉や写真を使って発信しているのかを、じっと見て、耳を傾けなければならない。

 

◯D2Cの3類型

①売り切り型

・Warby Parker(メガネ)

・Away(スーツケース)

・Casper(マットレス

サブスクリプション

・髭剃り、歯ブラシ、スキンケアなどのFMCG(Fast Moving Consumer Goods。食料品、日用品、化粧品など短期間で消費される製品)

SaaS(Software as a sarvice) +a Box型

・プロダクト自体がインターネット接続、コンテンツ配信、データの随時連携機能などでデジタル武装されており、かつD2C型の販売やコミュニケーションを採用。

 

  この本は、テキストで理解するというより、紹介されている写真を見ながらテキストを読みイメージを掴んでいく感じの読み方がお勧めです。書店で見かけたらぜひ手に取ってみてください。

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