『NO RULES』(リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー)(◯)
世界一「自由」な会社、NETFLIX。本書は、NETFLIX共同創始者兼CEOとINSEAD教授による共著で、NETFLIXの経営仕組みを経営者の視点と学者の視点からまとめたもので、企業文化がよく伝わってくる企業事例の良書です。2000年には当時レンタルビデオ業界の大手ブロックバスター(当時9000店舗近く展開)に買収話を持ちかけた小企業が今や1億人以上の会員を有する世界企業にまで成長(ブロックバスターは1店舗のみに縮小)。その背景にはどのような経営の舵取りがあったのか?戦略論ではなく、人事・組織にフォーカスがあたった一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯全体像(3プロセス×3段階)
①能力密度を高める
・有能な人材だけを集める
・レイオフで会社全体の能力の総量は減るが、一人当たりで見ると能力は高まる。
・ジャーク(嫌なやつ)、怠け者、人当たりが良くても最高の成果はあげられない者、悲観論者などがチームにいると、全員のパフォーマンスが低下する。
②率直さを高める
・フィードバックを促す
・フィードバックのガイドライン(4Aライン)
1)相手を助けようという気持ちで aim to assist
2)行動変化を促す actionable
3)感謝する appreciate
4)取捨選択(受け入れるかどうかは本人次第) accept or discard
・率直なカルチャーを浸透させるときには、組織からジャーク(嫌なやつ)を排除する。
③コントロールを撤廃していく
・休暇、出張、支出に関する規程などを撤廃
・上司が手本。上司がチームに提示するコンテキスト(条件)が大切
・経費は毎年監査する
・制度を悪用したら、どんなに優秀でも即解雇して、その悪事を具体的に社内に共有
・浪費による費用は、自由がもたらす利益には到底及ばない
④能力密度を一段と高める
・個人における最高水準の報酬を支払う
・成果連動型ボーナスは、当初の目標に集中(固執)するリスクがある。ボーナスがもらえるかどうかが定かでないと、クリエイティビティは低下する。イノベーションを後押しするのは成果連動型ボーナスではなく、高額の給料だ。
・最高の人材に最高水準の報酬を払うのに資金が不足するなら、それほど優秀でない人材を何人か解雇しでも原資を確保する。そうすることで、能力密度は一段と高まる。
⑤率直さをさらに高める
・組織の透明性を強化する
・社内の象徴的なメッセージに注意を払う。扉付きの執務スペース、番犬のようなアシスタント、鍵付きのスペースはなくそう。
・財務情報を公開しよう。損益計算書の読み方を教え、全社員と重要な財務情報や戦略情報を共有しよう。
⑥もっと多くのコントロールを撤廃していく
・意思決定の承認を不要とするなど
・成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する
1)そのプロジェクトから何を学んだのか?
2)失敗について大騒ぎしない
3)失敗を「公表する」よう促す
⑦能力密度を最大限に高める
・キーパーテストを実施する
「チームのメンバーが明日退社すると言ってきたら、あなたは慰留するだろうか。それとも少しホッとした気分で退社を受け入れるだろうか。後者ならば今すぐ退職金を与え、本気で慰留するようなスタープレイヤーを探そう」
・「スタックランキング」や「部下の10%を必ず解雇する」と言ったルールは廃止しようとしている。凡庸な社員を解雇できるかもしれないがチームワークも失われてしまうから。優秀な社員には、仲間内ではなくライバル企業と競争してほしい。
⑧率直さを最大限高める
・フィードバック・サイクルを回す
・360度評価は匿名による評価や数的評価は避ける。
・「ライブ360度ディナー」は、A4ガイドラインに沿って実施。フィードバックの25%は肯定的、75%は改善を促すものにすべき。
⑨コントロールをほぼ撤廃する
・コンテキスト(条件)によるマネジメント
・イノベーションのためには、組織は密結合ではなく疎結合であるべき。
・足並みは揃えつつ、それぞれが独立を。そのためには、北極星、すなわち全員が向かうべき方向性を理解してもらうこと。
「企業は家族よりもプロスポーツチームに近い」というのがわかりやすく表現されていると思います。A級の努力で B級の結果なら、感謝と敬意を持って別のプレイヤーと交代させられる。ただの能力主義と異なるのは、NETFLIXの場合、これをチークワークを保ちながら実践する仕組みになっていること。そのために、①能力密度を高める、②率直さを高める、③コントロールを撤廃していくという3つのテーマを3周回す方法をとっているのが印象的で、一見ドラスティックでギスギスしているような印象を受けるものも、段階があり一朝一夕には達し得ないものであることを感じます。事例としては、非常に尖っていて、刺激を受けながら読めると思います。
【ネットフリックスの成功①】世界一自由な会社の新常識(NETFLIX and the Culture of Reinvention)
NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX (日本経済新聞出版)
- 作者:リード・ヘイスティングス,エリン・メイヤー
- 発売日: 2020/10/22
- メディア: Kindle版