『なぜ時間を生かせないのか』(田坂広志)(◯)
一生懸命に時間の使い方を工夫しても充実感が得られない。それは、時間を捻出し一生懸命に自己研鑽の努力をしなければ競争に勝てないという密やかな「強迫観念」のため。本当の意味で時間を生かすとはどのようなことかという点を10の論点で整理されています。時間とは単なる資源ではなく、資源を超えた素晴らしい何か。かけがえのない「人生の時間」について考える一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯10の論点
①いかにして「時間」を使うか(密度)
・時間には「長さ」の他に「密度」がある。密度を決めるのは集中力。
・時間の長さという意味では、「あっという間に過ぎた」と感じるが、時間の密度という意味では、「何倍もの時間に感じた」という印象を持つもの。
②いかにして「集中」をするか(夢中)
・仕事で鍛えて知的体力を身につける。
・時間を区切って仕事をする、締め切りを明確にして仕事をする。
・曖昧語を使わない(ぐらい、程度、ほど、あたり、ごろ)。曖昧語を使うと心の中に「逃げ」の気持ちが忍び込む。「待った無し」「逃げ道なし」という真剣勝負の場においてこそ、最も高度な「集中力」が鍛えられる。
③いかにして「知恵」を学ぶか(感得)
・知識社会とは「知識」というものが価値を失っていく社会。
・職業的な知恵を身につけるには、経験を体験へ高める「感得」する(気づく)瞬間が大切。頭で考えるのではなく、心で感じること。
④いかにして「経験」から学ぶか(反省)
・「反省」という方法においては、「深く考える力」が求められる。
・一つの経験をしたとき、その経験を徹底的に追体験し、そこで学んだことを極限まで言語化することによって、知識を知恵へと深め、経験を体験へと高める。
・後悔とは過去に向かっての営み、反省とは未来に向かっての営み。
・懺悔とは他者に対しての営み、反省とは事故に対しての営み。
⑤いかにして「反省」をするか(意味)
・反省の心得は、1)(公式の目的以外の)隠れた目的を持つ、2)失敗を活用する、3)引き受けをする(自分の責任として受け止める)
・すべてのことに深い意味がある。その意味を感じる努力こそが反省ということの本質。
⑥いかにして「人間」から学ぶか(師匠)
・師匠を職場で見出すこと。
・リズム感やバランスは、極めて古典的テーマであるが、極めて現代的テーマでもある。空海の言葉「五大にみな響きあり」(この世界のすべては「響き」。すなわちこの世界はリズムで成り立っている)。
⑦いかにして「自分」を見つけるか(個性)
・自分の個性を発見し、師匠の呼吸を体得する。
・Find your Own Uniqueness(あなた自身の唯一無二の何かを発見しなさい)
⑧いかにして「関係」を築くか(自立)
・1)知恵の等価交換、2)共感、3)自立
・弱さ、謙虚さの認識を持っているか
⑨いかにして「成長」をするか(課題)
・「仕事をした結果、人間として何らかの成長を遂げている」ことと、「人間としての成長を目指し、一生懸命に仕事に取り組む」ということは、似ているようでありながら、実は、決定的に違う。
・成長の心得は「成長の課題」を知ること。
・卒業しない課題は追いかけてくる。解決するためには、課題を引き受けること。
⑩いかにして「成功」を得るか(一瞬)
・自分にとっての成功とは何か?その問いに対する答えは、「社会規範との格闘」「自分のエゴとの葛藤」を通じてしか掴み取ることはできない。
・生き方としての成功を考える
時間の使い方には、その人の生き様が現れる。そんなメッセージが伝わってきます。改めて、「時間」を通して生き方を考えてみたくなる刺激を受けました。