MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

チームが自然に生まれ変わる(李英俊)

『チームが自然に生まれ変わる』(李英俊)(◯)

 認知が変われば行動は変わる。逆に言えば、無理に行動を変えても、認知が変わらない限り、元に戻ってしまう。リーダーの仕事とは、メンバーの見えている景色(認知)を変えること。本書は、コンサルティングファームを経て、コンサルタント?エグゼクティブコーチとして活躍されている著者が、「認知科学に基づいたリーダシップ論」と実践法をまとめた一冊。実務的で参考にしやすくいないようです。

 また、「エフィカシー」「Have toを捨てる」「パーパスの自分事化」「メンバーのWant to」「現状の外側」「心理的ホメオスタシス」といった最近の私の関心キーワードも多かったので、読んでみました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯内面から人を動かす原理

①ゴール

・人を持続的に動かすときには、目的ないし目標「ゴール」が必要。「なんとしてもこれを実現したい」「絶対にあれを達成するんだ」という思いが生まれたときには、その人は外的な刺激を必要とすることなく、主体的に行動をとることができる。

②エフィカシー(効力・効能)

・「やれる気がする、やれる気しかしない」といった手応えのようなもの。

・エフィカシー把握までも「認知」でしかない。問われているのは、「その人が「自分にはできる」と信じているかどうか」であり、「その人が実際にできる(能力がある)かどうか」ではない。

 

◯ゴール設定の条件

①「真のWant to」基づいていること。

・設定されたゴールが「本音中の本音で住みたいと思える世界」になっていない限り、つまり自分の「真のWant to(やりたいこと)」と辻褄が合わない限り、そこに没入できない。

・「こんなふうに生きてみたい」と本気で思えるようなオールライフ型(人生全体に関わるような)のゴールで。これを組織経営の文脈で語り直したのが「パーパス」。

・キーは、「没入」が起きるほどのWant toがゴールに内在しているかどうか。

②「現状の外側」に設定されていること。

・いくら没入が起こるゴールであっても、それが現状の延長線上にあるものである限り、内部モデルの変革は起こらない。内部モデルを書き換えるためには、現状の延長線上にはないゴール設定が必要。

・臨場感の高いゴールの世界は、高いエフィカシーが起こり、自発的な行動が生まれる。

 

◯チームが自然に生まれ変わる2段階

①リーダーがゴールを発見し、それに対するセルフ・エフィカシーを高める

②チーム内のメンバーにゴールを設定し、それに対するエフィカシーを高める

 

◯Have toを捨てて、自分の真なるWant toに目覚めるには?

①Have toを洗い出し、真のWant toに気づく

②Have toを捨てることを決断し、その捨て方を考える

・「決断が先、プロセスが後」。「どのように捨てるか」というプロセスにこだわっていては、いつまで経ってもHave toは捨てられない。これは心理的機構にある種の「ホメオスタシス(恒常性)」が働いているから。したがって、必ず「決断」を先行させる必要がある。

・Have toを捨てる切り口

1)そもそも必要がなく、放置しても問題のないHave to

2)自分がやる必要がなく、他の手段で代替可能はHave to

3)自分がやる必要がなく、他の人に権限移譲できるHave to

4)どうしてもやる必要があるか、Want toを感じられないHave to

 

◯「らしさ」は得意なことの中に眠っている

①得意なこと

②夢中になれること

③繰り返していること

 

心理的ホメオスタシス

・なぜ「内部モデル」は、容易に変えられないのか?我々の心には「元に戻ろうとする力」つまり、一種のホメオスタシスが作用するから。

・「現状の外側」へ向かうゴール設定のように、何らかの変化が求められている局面では、心理的ホメオスタシスは我々の邪魔をする厄介なプレイヤーとして作用する。

 

◯パーパスを自分事化する

・組織が思い描く未来が単なる構想の域を出て、明確に「現状の外側」のゴールとして設定されたとき、「パーパス」と呼ばれる。経営とは、手元にある全リソースを活用して、パーパス実現に向かう活動。

・「エフィカシー・ドリブン・リーダーシップ」

 各人の内部モデルの基準点を「現状」から「現状の外側にあるゴール世界」へとシフトさせ、心理的ホメオスタシスが働くベクトルを書き換える。ゴール世界への臨場感が高まった結果、個人及びチームのエフィカシーも高まり、外的刺激がなくても自然に行動変容が起こる。

・「組織のWant to」に根ざすパーパス

 「組織が実現したい世界」と「個人が実現したい世界」とが重なる部分を見出し、それを個人のゴールとして設定していく。所属組織の掲げるパーパスと重なる部分を見つけ、それを「個人のゴール」に変えていく。メンバーが持っている複数のゴールのうち、少なくとも1つに関して、組織のパーパスと重なり合う部分があれば、それで十分。

 

◯パーパスの自分事化のステップ

①自分のWant toを「現状の外側」に飛ばす

②組織のパーパスを確認する

③組織のパーパスと自分のWant toとの共通項を見つける

④共通項を自分だけのフレーズに変換し、臨場感を高める

 

◯集団的エフィカシー実現の3ステップ

①自分自身の真のWant toに気づかせる

②組織のパーパスを自分事化させる

③ゴールへのエフィカシーを高めていく

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