『組織はなぜ変われないのか』(ジョン・P・コッター)
著者は、リーダーシップ論の大御所であり、ハーバードビジネススクールの名誉教授。変化の速度が増し続けている状況にどのように対処すれば良いのか?神経科学、組織論、ビジネス史、リーダーシップ論などを土台とする新しい科学的成果をどのように理解し、今求められる変化をどのように実現すれば良いかを解説した一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯デジタル・トランスフォーメーション(DX)成功のカギ
・幅広い層の社員に切迫感を持たせ、変革に本腰を入れさせ、行動とリーダーシップを引き出すこと。
・IT部門の少数の専門家だけによってデジタル・トランスフォーメーションを推進しようとしないこと。
・DXにより大量のデータがもたらされると利点と弊害の両方がある。人間は大量の情報を受け取ると、それを脅威とみなす場合がある。すべてが計画通りに運んでいるわけではないと気付かされたり、前回の報告よりも数字が悪いことがわかったり、上司が掲げていた目標を達成できないことが判明したりするから。人間は深刻な脅威とそれほど深刻でない脅威を見分けることは得意ではない。
◯リストラが将来もたらす恩恵を強調し、変革の意識を訴える
・具体的にどのようなコミュニケーションをすべきかは、それぞれの会社の状況によっても異なるが、それでもいくつかの一般的な指針はある。
①リストラを行うと決定した理由、今後のスケジュール、これが最も重要な点だが、具体的なプロセスについて、本当のことを包み隠さず、率直に話すこと。
②社員への共感を示すこと。
③社員の信頼を損なわないこと。
◯適応力を高める組織文化の変革
・初期の社会人類学者たちが導き出した4つの結論は、今日にもよく当てはまる。
①人は自らの文化をうまく説明できない場合が多い。
②少なくともその一因は、文化を構成する要素が意図的なプロセスではなく、非公式な形で継承されることにある。
③文化は基本的に目に見えないものだが、影響力は極めて大きい。人は文化的規範や価値観に従うために、大きな犠牲を払ったり、時には命を捨てたりすることもある。
④文化は目を見張るほど安定していて、ゆっくりとしか変わらない。
・組織文化と業績の関係(『企業文化が高業績を生む』(ダイヤモンド社))
①「強力な文化」を持っていることと10年間にわたる財務成績の間には、ある程度の関連が見られたものの、それほど強い関連は見出せなかった。
②事業戦略と合致した文化が形作られていると、傑出した財務成績につながる場合が多かった。
③極めて稀ではあるが、高業績との結びつきが明らかな文化もあった。
④新しい需要に答えたり、適応力全般を高めたりするために、自社の文化を大きくへ変えようとする試みは、ほとんどのケースであまり身を結ばないことが分かった。
本書では、事例研究とその研究結果がまとめられています。学術的な記載は難しい面もありますが、事例があることで、イメージが伝わってくると思います。組織文化の章については、さらに深掘りしたくなり、特に興味が湧く内容でした。