『心理的安全性のつくりかた』(石井遼介)
2020年に発売され、ベストセラーになった本書ですが、実は3回目のチャレンジでようやく最後まで辿り着いたという、私にとっては、なかなか手強い一冊でした。特に難解なことが書かれているわけではありませんが、現場をどう対処していけば良いのか、実務との照らし合わせが具体的だからこそ、本書を読みながら考えることが多く、それが最後まで一気に進まなかった要因かもしれません。本書の内容と自分が受け持つ現場での対応が一本に繋がって見えたら、きっとぐっと惹きつけられる一冊になるのではないかと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯チームの心理的安全性とは?
・チームの中で対人関係におけるリスクを取っても大丈夫だというチームメンバーに共有される信念のこと。
・メンダー同士が健全に意見を戦わせ、生産的で良い仕事をすることに力を注げるチームや職場のこと。
・最も重要な心理的安全性の確保のメリットは、チームの学習が促進されること。
◯日本版チームの心理的安全性の4つの因子
①話しやすさ(何を言っても大丈夫)
②助け合い(困った時はお互い様)
③挑戦(とりあえずやってみよう)
④新奇歓迎(異能、どんとこい)
◯心理的安全性の「変革の3段階」
・この3段階は、4因子の向上を阻害する環境要因でもあり、アプローチの効果を考える上でも重要。
①構造・環境(会社や事業、ビジネスの仕組み自体に起因する構造・環境要因)
1)パワーバランス
2)階層構造・権力格差と承認プロセス
3)職種とビジネスプロセス
4)業態上の制約
②関係性・カルチャー(組織・チームが背負った歴史に起因するチームとしての習慣・行動パターン)
③行動・スキル(一人一人が行動をとるかどうか)
◯リーダーシップとしての心理的柔軟性
・リーダーシップスタイルを使い分ける
①トランザクショナル・リーダーシップ:アメとムチ・成果主義
②トランスフォーメーショなる・リーダーシップ:ビジョンと啓発
③サーヴァント・リーダーシップ:メンバーの支え、活躍を支援する
④オーセンティック・リーダーシップ:自分らしさを発揮する、弱さも見せられる
・心理的柔軟性の3要素
①必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる
②大切なことへ向かい、変えられるものに取り組む
③それらを変えられないものと、変えられるものをマインドフルに見分ける
◯行動分析でつくる心理的安全性
・「きっかけ→行動→みかえり」のフレームワークを使って、行動に繋げる。
・みかえりの4タイプ
①好子が生まれた →行動が増加
②嫌子が無くなった →行動が増加
③好子が無くなった →行動が減少
④嫌子が生まれた →行動が減少
・嫌子出現による行動の弱化は、一時的なものになりやすい
→怒られた直後は行動が減っても、しばらく時間が経つと問題行動は減らない。
・「なんでも言ってね」は役に立たない。具体化した投げかけが必要。
・「なぜ」「どうして」は文脈がネガティブなものが多い
→「なぜ」の代わりに「何」「どこ」を使うとうまくいくことが多い
「なぜそうしたの?」と聞く代わりに、「どこで、何が起きたのか教えてもらえますか?」
本書の中盤以降は、「きっかけ→行動→みかえり」のフレームワークの活用方法、活用例を中心に進められています。このフレームに沿って、より効果的な言葉の掛け方や行動が身についてくると、少しずつ職場の雰囲気を良くする方向へ自分も貢献できるのだろうと思います。