『ファンベース』(佐藤尚之)(◯)
著者は電通出身のコミュニケーション・ディレクター。これまでも『明日の広告』『明日のコミュニケーション』『明日のプランニング』など、良書多数の方です。ファンベースとは、ファンを大切にして、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく考え方。時代的にも社会的にも、新規顧客を狙うアプローチだけでは売上を増やすのが難しくなってきており、その解決策としてファンベースが必要になっている。それはなぜか?どう状況が変わったのか?具体的な施策はどういうものがあるか?などがまとめられた一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ファンベースが必要な3つの理由
①ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから
②時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきたから
③ファンが新たなファンを作ってくれるから
◯今いるファンを大切にし、LTVを上げていくこと
・ライフタイムバリュー(LTV)という言葉がある。「顧客生涯価値」であり、一般的には「生涯のうちにその商品をどのくらい繰り返し購入してくれたか」的に解釈される。
◯ファンの支持を強くするための3つのアプローチ
①「共感」を強くする
1)ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
2)ファンであることに自信を持ってもらう
3)ファンを喜ばせる、新規顧客より優先する
②「愛着」を強くする
1)商品にストーリーやドラマを纏わせる
2)ファンとの接点を大切にし、改善する
3)ファンが参加できる場を増やし、活気づける
③「信頼」を強くする
1)それは誠実なやり方か、自分に問いかける
2)本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
3)社員の信頼を大切にし、「最強のファン」にする
◯ファンの支持をより強くする3つのアップグレード
①「熱狂」される存在になる
1)大切にしている価値をより全面に出す
2)「身内」として扱い、共に価値を上げていく
②「無二」の存在になる
1)忘れられない体験や感動を作る
2)コアファンとし共創する
③「応援」される存在になる
1)人間をもっと見せる、等身大の発信を増やす
2)ソーシャルグッドを追求する。ファンの役に立つ。
◯ファンベースを中心とした「全体構築」の3つのパターン
①中長期ファンベース施策のみで構築する
②単騎・単発試作でファンをゼロから作っていくところから始める
③中長期ファンベース施策を中心に、短期・単発施策を組み合わせていく
マーケティング施策の観点という読み方もありますが、自分が一消費者であることを前提にして、世の中のファンベースの取り組みにどんな工夫がされているのか?自分が好きなコミュニティや企業はどんな情報を発信してくれているのか?という観点で読んでもおもしろいと思います。誰でもスマホ一台で多くの情報が取れる時代だからこそ、ファンづくりも昔とは大きく変化している時代。ツールとしての便利さ(変わっていくもの)と、心としての昔から変わらないもの、どちらも追いかけられる人(会社)がファンと共に成長していけるのだと思います。