『1兆ドルコーチ』(エリック・シュミット他)(◯)
著者は、2001年〜2011年までGoogleの会長兼CEO、2011年〜2015年までGoogle執行役会長など、Google社の要職を歴任した方。
本書は、シリコンバレーの巨人、スティーブ・ジョブズ(アップル共同創業者)、エリック・シュミット(Google元会長兼CEO)、ラリー・ペイジ(Google共同経営者)共通の師であり、ジェフ・ベゾス(Amazon CEO)、シェリル・サンドバーグ(facebook CEO)、セルゲイ・ブリン(Google共同創業者)など、そうそうたる方々に影響を与えてきた伝説のリーダーによる成功の方程式がまとめられた一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯パフォーマンスが高いチームの条件
・緊張があるのは良いこと。緊張がなければ凡庸な存在に成り下がってしまう。だが、緊張が強すぎると、もう一つの重要な成功要因であるコミュニティを育むことが難しくなる。
・ほどよい緊張感を保ちつつ、チームをコミュニティに育て上げるには、コーチが欠かせない。つまり、個人だけでなくチーム全体と仕事をし、絶え間ない緊張を和らげ、共通のビジョン目標と調和するコミュニティを育み続ける存在。
・コーチは時としてチームリーダーにだけ働きかける場合もある。だが最大の効果を上げるためには、チーム全体に働きかけなければならない。そして、それこそがビルの理想とするやり方。
◯本書に書かれていること
・ビルが何をコーチしたか(コーチングの内容)、どうやってコーチしたか(コーチングの方法)
①スタッフとの1on1ミーティング(個別面談)や、難しい従業員退所といったマネジメントスキルを、どうやって細部に至るまで正しく実践していったか。
②一緒に働く人たちとどうやって信頼関係を築いていったか。
③どうやってチームを構築していったか。
④どうやって職場に愛を持ち込んだか。
◯1on1と業績評価のためのフレームワーク
①職務に対するパフォーマンス
・売上数値など
・プロダクトの発売予定日、プロダクトの進捗目標など
・顧客からのフィードバック、プロダクトの品質など
・予算数値など
②他部署との関係(会社の一体性と結束を保つ鍵)
・プロダクト部門とエンジニアリング部門の関係はどうか?
・マーケティング部門とプロダクト部門の関係はどうか?
・セールス部門とエンジニアリング部門の関係はどうか?
③マネジメントとリーダーシップ
・部下を指導、コーチできているか?
・出来の悪い社員を取り除いているか?
・採用に全力を尽くしているか?
・勇気ある行動をとるよう部下を駆り立てているか?
・常に前進しているか、向上し続ける方法を考えているか?
・新しいテクノロジー、プロダクト、手法を常に検討しているか?
・自分と業界トップや世界トップの人材を比較しているか?
◯心理的安全性が高いチームを作る
・1999年のコーネル大学の研究によれば、チームの心理的安全性とは、「チームメンバーが、安心して対人リスクを取れるという共通認識を持っている状態であり・・・ありのままでいることに心地よさを感じられるようなチームの風土である」。
・Googleが行った、チームを成功に導く鍵に関する調査でも、もちろん心理的安全性が筆頭に上がった。かくして、最高のチームは「補完的なスキルセットを持つ、性格の似通ったメンバーからなる」という一般通念の誤りが証明された。最高のチームとは「心理的安全性が最も高いチーム」なのだ。そして、その出発点となるのが、信頼である。
◯ありのままの自分をさらけ出す
・人はありのままの自分でいられるとき、そして全人格をかけて仕事をするとき、最も良い仕事ができる。
・まず、信頼を築くことから始め、時間をかけてますます深めていく。コーチする相手を選び抜き、コーチングを受け入れる姿勢のある、謙虚で向上心旺盛な、生涯を通じて学び続ける意欲のある人だけをコーチする。そして相手の話に一心に耳を傾ける。大抵の場合、何をすべきかは指図せず、物語を語って聞かせ、そこから自分で結論を引き出させる。完璧に率直になり、相手にも同じことを求める。相手にとてつもない信頼を寄せ、高い目標を設け、勇気の伝道師になる。
人に、チームに、組織に入り込み、潜在的な能力を引き出し、発揮させ、成果を出すというコーチとしての関わりが、個だけでなく、組織単位でも学べるので、非常に深く良い実務書だと思います。要点が多い書籍なので、全体の要点を網羅的に記載するのは難しいですが、特に、フレームワークと信頼に関するところは参考になったので、取り上げてみました。