『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』(森岡毅)(◯)
著者は、P&Gブランドマネジャーとしても活躍されたUSJのマーケティング責任者。本書は、P&GやUSJでの体験を踏まえ、「マーケティングとは何か?」という点についてより実務に則して書かれています。分かりやすくまとまっているので、マーケティング入門書的な位置付けといった印象です。1,400円+税ですが、コストパフォーマンスが良すぎます。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯マーケティングの役割
・売り上げを伸ばすための頭脳であり心臓。「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」を正しく見極めること。
・部門間や個人間の利害やしがらみをぶった斬ってでも、消費者価値としてのベストを押し通す強力な意思決定の仕組みが必要。
・人は衝突を回避したがるが、「落としどころ」はほとんどの場合において、消費者最適ではない。
◯マーケティングの本質
・マーケティングは売るというより、売れるようにする仕事。営業は商品を売るのが仕事。
・「売れる仕組み」は消費者とブランドの接点をコントロールして作る。主なものは次の3つ。
①消費者の頭の中を制する
1)認知率
2)ブランドエクイティ(消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージ)
→マーケティングの最大の仕事は、消費者の頭の中に「選ばれる必然」を作ること。そのための活動がブランディング。
②店頭を制する
1)配荷率(どれだけ多くの店頭で扱われているか=消費者が買える場所に商品がどのくらいの割合で展開されているか)
2)山積(棚の外で商品を目立たせる)
3)価格
③商品の使用体験を制する
1)購入率、再購入率
2)購入頻度
◯購入決定のビジネスドライバー
①認知率
②店頭での配荷率
③店頭での山積率
④購入率
⑤再購入率
⑥平均価格
⑦購入頻度
→(例)某イベントの来場者
全国のファン数500万人×認知率50%(=250万人)×関西20%(=50万人)×購入率(最低6%、できれば10%以上)=購入人数(最低3万人、できれば5万人)
これに平均客単価を掛ければ売上金額となる。
(1)戦況分析(5C)
①Company(自社の理解)
②Consumer(消費者の理解)
③Customer(流通など中間顧客の理解)
④Competitor(競合する他社の理解)
⑤Community(ビジネスを取り巻く地域社会の理解)
(2)目的の設定
①実現可能性(ギリギリ届く高さを狙う)
②シンプルさ
③魅力的かどうか
(3)誰に売るのか
①戦略ターゲット:ブランドがマーケティング予算を必ず投下する最も大きなくくり
②コアターゲット:戦略ターゲットの中で、さらにマーケティング予算を集中投資するターゲット消費者のくくり
(4)何を売るのか
・ポジショニング
消費者の頭の中にある競合との相対的な位置付けのこと。自分が動かなくても相手が動くことで、自分のブランド・エクイティが動かされてしまう。
(5)どうやって売るのか
・マーケティングミックス(4P)
①Product(製品)
②Price(価格)
③Place(流通)
④Promotion(プロモーション)
著者は著書も多数ですが、日本の著者からマーケティングを学ぶという点で、事例も身近であり、スッと入っていけるように思います。内容が濃厚なので、約260ページの割には、読むのにエネルギーが必要だと感じました。それは良書であるということでもあると思います。