『弱者の勇気』(栗城史多)
あすか会議2015(第四部分科会)登壇者、栗城さんの著書を読んでみました。
著者は、1982年生まれのプロ登山家。動画配信の機材を持っての、単独・無酸素での登頂にこだわり、エベレストに四度アタック。2012年秋季エベレスト西陵挑戦時に重度の凍傷を負って、手の指9本の第二関節から先を失うも、2年の治療・リハビリを経て2014年7月にブロードピーク(8047メートル)に登頂成功され、2015年の秋季エベレストに再び挑戦される予定という、まさに超人です。
美しく鮮やかなカラー写真と経験から紡ぎ出された言葉が印象的なエッセイです。
(印象に残った言葉‥本書より)
〇孤独
・こだわるがゆえに大変な時もあるけれど、目的のために自分を押し殺すことはあっても、目的そのものをごまかすことはできない。
・孤独は、自分の感覚を研ぎ澄ましてくれる。
・何かを感じたい、何かを学びたいと思ったら、ときには敢えて孤独になって向き合ってみるのも、必要なこと
〇記録
・記録にこだわり、そこを目指すことでモチベーションが保たれるのであれば、ぜひとも大切にするべき
・ただ、記録を残すことを目的にしてしまうと他人を意識してしまうので、あえてこだわらないようにしている。
・大切なのは自分が本当に挑戦したいかどうか
・記録はその価値を共有できる世界でこそ輝く
・自分がそれを必要としていないのなら、無理にこだわる必要はない
・視点を変えてみることで、本能的に求めている新しい世界が見つかるかもしれない
〇リーダーシップ
・目標を共有し、個々の力を最大限に発揮させるのが隊長の役割。リーダーシップとは決して「強い人間」になることではなく、弱さを知っていて、その弱さを素直に出せること。
〇時間
・たとえ明確な目標や計画があっても、わき目もふらずに走り続けるのではなく、変化するということを恐れてはいけない。
・目標や計画を遂行することだけに縛られてしまうと、大切なものをみうしなってしまう。少しくらい目標や計画から逸れることであっても、やりたいことがあるのならやってみる。
・人のバイオリズムには、「静」と「動」があって、その波と自分の行動がちゃんと噛み合っていると、自然と物事もうまくいく
・そのバイオリズムを無視して、「動」のままでやればやるほど、無理が生じてしまい、自分の心に反動ができてしまう。
〇比較
・何かに挑戦しているがための苦しみは自分の糧になるけれど、人と比較することで生まれる苦しみからは、何も得られない。
・そもそも、比べるから嫉妬するのであって、そういった意識から解放されれば苦しむこともない。
・ライバルと比較は違う。ライバルは自分にとって良き栄養。その人がいるから自分もワクワクする。そんな存在。
〇自由
・自分のこころがどこに位置するかで、現実の生き方も変わっていく。雲があるかないかは、自分の心が決めること。自分で厚い雲をつくりだし、覆ってしまうこともまた一つの自由。
・本当の意味での自由とは、時間的・肉体的なものではなく、精神の自由だと考えている。
〇答え
・経験から養われた人間の直感は、コンピュータよりも優れているときがある。
・時には考えて答えを出す前に、自分の心の答えに向き合ってみる
・大切なのは、あくまで一人で向き合うということ
・一人で決断するというのは、勇気と覚悟がいる。誰のせいにもできない。でもそこで出た答えは、自分の心に一番近いはず。
一人で山を登り、孤独で厳しい環境の中で積み重ねてきた経験の中から語られている、一つひとつの言葉がとても深い意味を含んでおり、考えさせられる内容です。
「この人にしか聞けない!」というようなスゴイ経験をされている方から、直接話が聞けるのが、あすか会議の醍醐味です。分科会が楽しみです。