仕事の思想(田坂広志)
『仕事の思想』(田坂広志)(◯)<2回目>
約6年ぶりに再読。かなり仕事に関する考え方が自分の中にでき、定着化してきていることもあり、スッと入ってくる内容でした。本書は、仕事への向き合い方、なぜ働くのかということについて、10の観点からまとめた一冊。自分の仕事に対する考え方を整理し、内省するのにも役立つ一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯本書の目次より
①思想:現実に流されないための錨
②成長:決して失われることのない報酬
③目標:成長していくための最高の方法
④顧客:こころの姿勢を映し出す鏡
⑤共感:相手の真実を感じ取る力量
⑥格闘:人間力を磨くための唯一の道
⑦地位:部下の人生に責任を持つ覚悟
⑧友人:頂上での再会を約束した人々
⑨仲間:仕事が残すもう一つの作品
⑩未来:後生を待ちて今日の務めを果たすとき
◯「思想」より
・生活のために毎日自分の労働力を切り売りしているという感覚は、その仕事に関わっている毎日の何時間かを無味乾燥なものにし、私たちのかけがえのないじんせいを色褪せさせてしまう。
◯「成長」より
・仕事の報酬とは何か
①「給料」という世界
②「能力」という世界(人間としての成長)
③「仕事」という世界
◯「目標」より
・夢を語る時に求められるのは「本気で語る」こと。その時に大切なのは「ポジティブ・シンキング」。
・実際にやってみると難しい。それは、深層意識の世界で「本当に夢は実現するのだろうか」との疑問が湧くから。
・「本気で語る」のが難しいのは、「本気で信じる」ことが難しいから。
・本気で信じ、本気で語ることができなければ、「夢を語る」ということが、力を振り絞るエネルギーを生み出すことはない。ここに「ポジティブ・シンキング」の要諦がある。
・本当にポジティブ・シンキングを行いたいのであれば、その人に求められるのは、「念の強さ」ではなく、「無邪気さ」や「純粋さ」。
・人前で堂々と夢を語るということは、おのずとその発言に対する責任を負うことになるため、自分自身を追い詰めていくための優れた方法になる。人間が最も成長するときとは、自分にとって達成できるかどうかわからないほど難しい課題に、あえて挑戦し、退路を経って悪戦苦闘するとき。
・「初心、忘るべからず。ときどきの初心、忘るべからず。老後の初心、忘るべからず」
◯「顧客」より
・成長していくためには、時折、自分にとっての「成長の鏡」をみること。
・誰もがみることができるのは、「顧客」。仕事における「顧客」が私たちにとっての「成長の鏡」。
・「厳しい顧客」や「黙って去る顧客」を鏡として、私たちが成長していくことができる。
◯「格闘」より
・私たちが「人間としての成長」を求めて歩むとき、その究極にあるのは「人間力」とでも呼ぶべき最も高度な能力の世界。そして、その「人間力」を身につけるべく修練をしていくとき、その指針となるのが「人間学」とでも呼ぶべき最も深い学びの世界。
・「人間学」の学びも「人間力」の修練も、現実の生活の場と仕事の場にこそ、最高の学びがあり、最高の修練がある。
・「反面教師」とは、昔からのことわざのとおり、「人の振り見て、我が振りなおせ」。
自分以外の誰かが示す姿が、実は、自分自身の姿に他ならない。別な表現をすれば、「反面教師」は「内面教師」。
・「人間」という物を深く見つめること。そして、この言葉が真に意味しているものは、決して他人の「人間観察」ではなく、何よりも自分自身の「内面観察」に他ならない。
・「人間力」を高めようと思うならば、やはり、ある人間と真剣に正対し、その人間の精神と格闘し、その精神の緊張が生み出す苦痛と闘いながら、自分の精神の限界に挑戦しなければならない。それをしない限り「人間力」が高まっていくことはない。
・「物分かり」の良いマネジャーは、無意識にそうした格闘を避け、苦痛を避けている。こうしたマネジャーにとっては、「物分かり」の良さとは、そうした格闘を避けるためのカムフラージュである。
仕事に対する価値観も向き合い方も人それぞれ。人生において多くの時間を費やす仕事だけにその時間をいかに人生に意味あるものとして過ごすかは、大切な観点だと思います。最後に取り上げた一文は、実に頭が痛いところ。「確かにそうだなぁ」と感じるところが大きいです。精神的苦痛やストレスはどうしても避けたい気持ちが働きますからね。