『世界史Ⅰ』(ウィリアム・H・マクニール、ジョン・R・マクニール)
なんて広いタイトル!という第一印象ですが、帯の「現代最高の歴史家による「世界史」最新版」に目を引かれ買ってみました。
内容は、「人類の結びつきと相互作用の歴史」というサブタイトルにあるように、本書は、人と人を繋ぐ種々の結びつき(本書ではこの結びつきを「ウェブ」という)に焦点を当てて歴史を紐解くというものです。壮大です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇本書が目指すところ
最も基礎的なレベルで、人類のウェブ(=人と人を繋ぐ種々の結びつき)は少なくとも言語が発達した時点で成立していた・・・。6000年前に都市が発達して、ウェブのいくつかは緊密化していった・・・。160年前に電信が発明されてから、ウェブはどんどん電子化され、現在の人間は誰もが単一のグローバルなウェブの中で暮らしている。
人類はウェブをどのよう形作ったのか。これらのウェブはどのように拡大し、世界の子なった場所でどんな形をとったのか。近年においてどのようにして単一のウェブにまとまり、地球における人類の役割を変容させたのか。これが本書のテーマ。
〇人類の始まり
・400万年前、アフリカで人類が木から地上に降り、地上生活を始める。
道具の製作、火を使いコントロールする→コミュニケーションと協力体制が発達→放浪するホモ・サピエンスの集団が居住可能な地域にコロニーをつくり、支配的な種となりえた→言語体系が完全に整う
・家族という単位‥強固な独自のウェブを形成し、技術や知識を親から子へ伝承。
・穀物栽培と食糧の大規模貯蔵→定住化→儀式が手の込んだものになり、文化が多様化。
〇食糧生産への移行(11000年前~3000年前)
・農耕と家畜:人類の行動様式は劇的変貌。食糧余剰分を保管し集中供給できるようになったことが国家・都市誕生の原動力になる。
・作物の植え付け時期を知ることが決定的に重要→天文学の発達
・村落においては、顔と顔を突き合わせたコミュニケーションのウェブの密度が高く、共同体の習慣が代々受け継がれる。
〇旧世界のウェブと文明(紀元前3500~紀元後200年)
・旧世界(ユーラシアとアフリカ大陸)
紀元前3500年~ティグリス・ユーフラテス川河口付近にシュメール人の都市形成。その後、エジプト、インダスに文明が発達。沿岸部の海路とそれを補う陸路のキャラバンが3つの文明の交流を支えていた。3つの文明は最初から相互に交流しあう文明の一部であった。
・都市の形成→優れた武器の開発、職業的戦士の登場、旅商人との強力、特権階級の形成、階層分化、官僚制に基づく政府、官吏登用システム、専門的職業・・。
・アルファベット文字‥地域に限定されずに移植しうる宗教の登場
・遊牧民→戦闘技術の普及、病原菌・宗教的概念・テクノロジーの流布→地中海から黄海までの農耕の中核都市を結び付けた。
〇旧世界とアメリカにおけるウェブの発展(200~1000年)
・南北アメリカ、メソポタミア、中国の文化は、超自然との特別な交流手段を持つ地域のエリート層が、神々の不興を買わないため、農耕民や職人の力を大々的に組織することから始まった。
・聖職者による統治を補助していた軍事面の指導者があからさまに権力を振うようになり、帝国の支配下に取り込んでいった。
・長距離交易ネットワークによって高級品や贅沢品がますます遠くまで運ばれるようになり、文明の主要な中心地が遠隔地への文明化された生活の多様な面が伝えられていった。
〇ウェブの濃密化(1000~1500年)
・モンゴル帝国→草原地帯を横切るキャラバンルート、シルクロードを行き来し、技術が相互伝播
・水上輸送の改善→技術向上・はしけの登場→低コスト化
・硬貨鋳造→税の徴収の簡素化
・茶の習慣→沸騰させて飲む→腸の感染症減少
第Ⅱ巻へつづく・・・
ウェブという言葉に、「古代にインターネット?」と最初は戸惑いますが、本書では、ウェブという単語を「人と人を繋ぐ種々の結びつき」という意味で使っています。そのイメージを理解すれば、文明の発達と広がり、そして他の地域との結びつきが紐解け、現代を形作る経緯がどこにあったのかが見えてくる面白い内容です。
Ⅱ巻の発売が待ち遠しいです。