『執らわれない心』(塩沼亮潤)<2回目>
塩沼大阿闍梨が2011年の震災直後に執筆された一冊。内容も震災直後の人の心を中心に書かれています。グロービス経営大学院のあすか会議でも何度か講演をお聞きし、懇親会でお話しさせていただく機会がありました。1300年の歴史で2人目となる大峯千日回峰行満行を果たされた偉大な方でありながら、驚くほど気さくな方で、何とも言えない親しみや奥行きの深さを感じたことを思い出しました。書棚を眺めていた時に目に留まったので、再読してみました。
(印象に残ったところ‥本書「人生のあり方を問う76のメッセ―ジ」より)
〇導入のメッセージより
「人生とは何なのか」「生きるとはどういうことなのか」と思いをめぐらせることは誰にでもあると思います。勿論、自分にとって良いことばかりでは、自己の成長につながりません。辛いこと、苦しいことを一つひとつ乗り越えてこそ、良い結果がもたらされます。
昔、お釈迦様がこのように説かれました。
「過去を追うな。未来を追うな。過去はすでに捨て去られた。そして未来はまだやってこない。だから現在のことがらを、それがあるところにおいて観察し、揺らぐことなく、動ずることなく、よく見極めて実践せよ。ただ今日なすべきことを熱心になせ」
人は、決して一人では生きていけないし、いろいろな人とのかかわりの中で生きております。時には迷惑をかけ、また、かけられながら、それによってお互いが成長します。
私はあるときこのように思ったことがありました。
地球という修行道場で、それぞれが人生という行を行じているのではないかと。そう考えると、人を恨まず、憎まず、忘れて、捨てて、ゆるして、感謝の心を持って生きていかなければならないと感じたのです。
〇人生は良いことも悪いことも半分半分。良いことばかりを求めず、今なすべきことを、ただなすのみ。
〇手を抜けば、必ずそのつけがまわってきます。誰でも知っているとても当たり前のことですが、後悔する人がとても多いことも現実です。一日一日、そして一つひとつをどのような心構えで積み重ねるかということは、まさに人生の行であり、ここが基本となります。
〇「しなければならない」とか「やらされている」と思えば、どんどん心が枯れてきて、卑屈になってしまいます。しかしまったく同じ環境でも、自分の気持ちで進んで乗り越えさせていただこうと思えばいい縁も広まってくるし、自然と笑顔になって、自分の周りの人たちも楽しくなってくる。
〇自分の今の環境が30点だとすると、残りの70点を求めて「もっと欲しい。どうして自分は不幸なの」と、つい不満を持ってしまいます。しかし足ることを知り「30点もありますから、感謝です。何もないより、ありがたいです」という心を持つことにより、人生が大きく変わります。
〇「はい」という一瞬のことばの響きで、今の自分の心の状態が、すべて相手に伝わっているのです。
〇他人の悪いところはよく見えるものですが、「人をもって鑑となす」と言うように、他人を見て自分のいたらないところを反省し、参考とさせていただかなければなりません。
〇苦しさには強いが、ぬるま湯には弱い。これが人の心。
〇忘れきる、捨てきるところに真の喜びあり。
YouTubeでも多くのスピーチがアップされていますが、ぜひ動画でお話しを聞いていただきたい方です。言葉を語られる表情や声色やトーンから、ことばのありがたさや重みが実感できます。一度、住職を務めていらっしゃる、宮城県仙台市慈眼寺を訪れてみたいです。