『人工知能は人間を超えるか』(松尾豊)(〇)
AI関連書籍でまず読むならこれ。2015年に発売された本書は、現在の第三次AIブームの中では早い段階で発売され、人工知能の実力・現在の状況・今後の可能性についてコンパクトにまとまっており、そのとっつきやすさから既に8万部も売れているようです。グロービス経営大学院でも、テクノベイト概論の教科書になっています。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇AIで職業がなくなる?
・2014年、英国デロイト社は、英国の仕事のうち35%が、今後20年間でロボットに置き換えられる可能性があると報告。
・オックスフォード大学の研究報告では、今後10~20年ほどで、IT化の影響によって米国の702の職業のうち、約半分が失われる可能性があると述べている。
〇人口知能の段階
①レベル1:単純な制御プログラムを「人工知能」と称している
マーケティング的に「人工知能」「AI」と名乗っているもの。ごく単純な制御プログラムを搭載しているだけの家電に「人工知能搭載」などとうたっているケース。
②レベル2:古典的な人工知能
振る舞いのパターンが極めて多彩なもの。将棋のプログラムや掃除ロボット、あるいは質問に答える人工知能など。
③レベル3:機械学種を取り入れた人工知能
検索エンジンに内蔵されていたり、ビッグデータをもとに自動的に判断したりするような人工知能。典型的には、機械学習のアルゴリズムが利用される場合が多い。サンプルとなるデータをもとに、ルールや知識を自ら学習するもの。
〇人工知能ブーム
①第一次ブーム(1956~1960年代)
推論・探索をすることで特定の問題を解く研究が進んだ。しかし、いわゆる「トイ・プロブレム」(おもちゃの問題)は解けても、複雑な現実の問題は解けないことが明らかになって、ブームは冷めた。
②第二次ブーム(1980年代)
コンピュータに「知識」を入れると賢くなるというアプローチが全盛を迎えた。しかし、知識を記述、管理することの大変さが明らかになると再びAIは冬の時代に突入した。
③第三次ブーム(現在)
ビッグデータの時代に広がった機械学習と技術的に大きなブレークスルーであるディープラーニング(特徴表現学習)の2つの大波が重なって生まれている。
〇「学習する」とは「分ける」こと
機械学習は、コンピュータが大量のデータを処理しながら「分け方」を自動的に習得する。いったん、「分け方」を習得すれば、それを使って未知のデータを「分ける」ことができる。
〇「教師あり学習」と「教師なし学習」
・教師あり学習(答えがある場合)
人間が教師役として正しい分け方を与える。
・教師なし学習(答えがない場合)
入力用のデータのみを与え、データに内在する構造を掴むために用いられる。
〇代表的な分類の仕方
①最近傍法
文字通り一番近い隣を使う。一番近いデータのカテゴリが当てはまる可能性が高いはずだという仮説に基づいている。
②ナイーブベイズ法
データの特徴ごとにどのカテゴリに当てはめるのかを足し合わせていく。
③決定木
ある属性がある値に入っているかどうかで線引きし、ツリーを自動的につくる。
マージン(余白)を最大にするように分ける。白から見ても黒から見ても、もっとも距離が離れたちょうど真ん中で領土を分けるということ。⑤ニューラルネットワーク
人間の脳神経回路を真似することによって分けようというもの。肝となるのは重みづけ。学習する過程で重みづけを変化させ、最適な値を出力するように調整することで、精度を高めていく。
〇なぜ今まで人工知能が実現しなかったのか
・知識を入れれば人工知能は賢くなるが、どこまで知識を書いても書ききれない。
・タスクによってロボットが使うべき知識をどう定めておけばよいのかが決められなかった(フレーム問題)。
・コンピュータにとって、シマウマが「シマシマのあるウマ」だと理解できないこと(シンボルグラウンディング問題)。
〇ディープラーニングからの技術進展
①画像特徴の抽象化ができるAI
⇒認識精度の向上⇒広告・画像からの診断
②マルチモーダルな抽象化ができるAI
⇒感情理解・行動予測・環境認識⇒ペッパー、ビッグデータ、防犯・監視
③行動と結果の抽象化ができるAI
⇒自律的な行動計画⇒自動運転・農業の自動化・物流(ラストワンマイル)ロボット
④行動を通じた特徴量を獲得できるAI
⇒環境認識能力の大幅向上⇒社会への進出・家事・介護・他者理解・感情労働の代替
⑤言語理解・自動翻訳ができるAI
⇒言語理解⇒翻訳・海外向けEC
⑥知識獲得ができるAI
⇒大規模知識理解⇒教育・秘書・ホワイトカラー支援
これからますます社会への影響力が高まるAI。便利になって利用するものと、利用しないもの、できないもの。自動運転が本格的に始まれば世の中の価値観も急速に変わっていきそうな予感がします。トレンドは追いつつも、人にしかできない領域や自分の価値観の再認識など、あらたな世界を生きていく準備は着々と進めていく必要がありそうです。
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)
- 作者: 松尾豊
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2015/03/11
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