『歩くだけで不調が消える歩行禅のすすめ』(塩沼亮潤)
今年、塩沼大阿闍梨が新刊を発行されていたことを知り、「これは買わねば!」と即購入。著者は1000年間で2人目の大峰千日回峰行万行をはじめ数々の苦行を万行された仙台市秋保・慈眼寺住職。
本書は、歩行禅という、歩きながら瞑想をし、そのあとに座禅を組むエクササイズを始め、心おだやかに健康に長生きする生活術を紹介した一冊です。様々な行を経験されてきた著者だからこその教えに重みがあります。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯人間の生き方は4種類に分類される。
・釈尊(お釈迦様)は当時のインドの王様に「人間の生き方は4種類しかない」というお話を説かれた。光とは人間が理想とするべき生き方、闇というのはネガティブな生き方。
①光から光へと生きていく人間
②光から闇へと生きていく人間
③闇から闇へと生きていく人間
④闇から光へと生きていく人間
・自分にとって苦々しい存在もまた、心を磨くために仏様や神様が与えてくださった砥石。お師匠さんにお話しいただいたこと。「あなたたちは収穫したばかりの芋。芋は汚れた土がついたままでは料理に使えません。あなたたちがこれから過ごすお寺は、たらいです。お互いにぶつかり合いながら土を落とし、きれいになっていくのです。」ここでの土は、「自分が自分が」という我であり、「自分だけが」という我欲。
◯悟りを開くための唯一の方法
・心の針をコントロールできる状態は、仏教位でいう悟りの一つの段階。何をすれば悟りの境地に近づくのか。その答えは、「ルーティン」。
・お釈迦様が「同じことを同じように繰り返していると、悟る可能性があるとおっしゃった。伝教大師最澄は「再下鈍の者も、十二年を経れば必ず一験を得ん」と言葉を残している。
・情熱と目標を追って探求していく姿勢が必要。
◯歩行禅
・歩くことはルーティンにしやすい。心の針をプラスの方向へとコントロールし、悟りに一歩近づくための、最も簡単なアプローチ。
①ステップ1:懺悔の行
往路は人生の中で讒言しなければならない過去や日常で人に迷惑をかけたことなど、思いつくだけ思い出して、心の中で「ごめんなさい」と唱えながら歩く。
②ステップ2:感謝の行
復路は、人生の中で感謝すべきこと、ありがたいと思えることを、できる限りたくさん思い浮かべ、心の中で「ありがとう」と唱えながら歩く。
①②のルールは、「絶対に人としゃべらないこと」、「だらだら歩かずにリズミカルにやや速歩で歩く」
③ステップ3:坐禅の行
・往復のウォーキングを終えて戻ってきたら、座って座禅を組む。
・今自分が置かれている状況や、与えられている環境と向き合いながら、25分ほど座禅を続ける。
◯「身息心」の原則(姿勢→呼吸→心)
・禅は、「調身・調息・調心」という考えを基本としている。
・全身の姿勢(=身)を整え、呼吸(=息)を整えると、精神(=心)が整ってくる。
・丹田呼吸:おへそより下の下腹を意識して行う深い呼吸法で、身体の緊張を解き、自律神経のバランスを整えて精神を安定させる効果がある。
◯「ありがとう」の効果
「自分一人で生きている」「自分の力だけで頑張っている」という慢心、思い込みを取り除くこと。
◯歩行禅とあわせて実践してほしい「小さな修行」
①嫌いな人にも1日一度笑顔を向ける
②イラっとしたら、まず自分の行動を振り返る
③反論するなら、最初に「すみません」のひと言から入る
④1年後の自分を思い描き、やるべきことを見つけて努力する
⑤誰かに迷惑をかけられたら、「お互いさま」の心で受け止める
⑥足るを知り、いまあるものに感謝する
⑦誰かを喜ばせるようなお金の使い方をする
⑧失敗を恐れずに、なんでもやってみる
⑨泣ける話よりも「笑える話」をする
⑩心配事や不安があっても、あえて考えないようにする
⑪1日のうちに「ひもじさ」を感じる時間を作る(粗食と腹八分)
⑫ネガティブな言葉を避け、ポジティブな言葉だけで過ごす
⑬嫌な仕事も「はい」と引き受ける
⑭身の回りのモノと心の「断捨離」をする
⑮一日に5分でも掃除の時間を作る
⑯過去と未来を考えすぎず、今日一日にベストを尽くす
◯継続の極意
①「自分のため」でなく「誰かのため」に続ける
②辛抱の先に見えてくるものがある
③「できない」状態が長く続いても諦めない
④「答え」や「近道」を求めない
⑤日誌をつける
⑥やらなければいけない「しくみ」を作る
⑦パターンやルールを安易に変えない
◯地合いにつながる歩行禅の「3つの心」
寛容さとはまさに、「ありがとう」「ごめんなさい」「はい」の精神。
①「ありがとう」
他者や自然への感謝と慈しみの言葉
②「ごめんなさい」
誰かの気持ちを思い、自己を省みる反省と懺悔の言葉
③「はい」
目の前の相手を受け入れ、肯定する敬意の言葉
以前、グロービス経営大学院のあすか会議で講演をお聞きし、お話しする機会に恵まれました。 近くにいると、存在だけでありがたさを感じる、なんとも言えない感覚。「滲み出る」とか「オーラ」とかという表現ではなく、「そういう感覚を自然と感じ取っている」というような経験でした。いつかは訪れたい慈眼寺。こうした方からお話を聞く機会というのは、何にも勝る学びのように思います。そんな著者の声をイメージしながら読むと、グッと入るものがありました。そして、いま学んでいるコーチングの要素・考え方とも共通点もあり、また何かが繋がり広がっていく感じです。