MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

理趣経(正木晃)

理趣経』(正木晃)(◯)

  空海最澄への貸し出しを断りその後の不仲説の元となった経典としても有名な『理趣経』。中期密教にあたる概ね7世紀に成立したとされています。特に、仏教ではタブーとされる性という根源的な行為を全面的に肯定することで、人間存在そのものを丸ごと肯定しようとしたところに特徴があります。本書は、理趣経の全文の書き下し、各章の構成解説、曼荼羅の解説がわかりやすくまとめられている一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯初段(十七清浄句)

・この世のありとあらゆる存在も行為も、その本性がことごとく清浄であるという真理を説いた段。

・性愛の快楽を得ようとする欲望、男女が抱き合う行為、男女が離れがたく思う心、重いかなって満足し自分にはなんでもできると信じ込む心境、欲心を秘め異性を見て歓びを感じる心、男女が性行為をして味わう快感、性行為を終えて男女が離れがたく思う愛情、男女が性行為を終えて世界の主になったような気分に浸る満足感、自分の外観を美しく飾る行為、心を満ち足りた状態にする行為、自分を光り輝く状態にする行為、自分の身体を安楽な状態にする行為、この世の全ての色かたちあるもの、この世の全ての音声、この世の全ての香、この世の全ての味。

⇨これら17つはその本性が清浄なのだから、菩薩の境地そのものと説いている。

 

◯第二段(完全の悟りの境地を明らかにする教え) 

 ・ありとあらゆる悩みや苦しみ、煩いなどから解放された完全な悟りの境地がどのようなものかを明らかにする知恵の教え。

①完全な悟りとは、金剛平等の悟り。その理由は、大日如来の広大無辺な悟りは、私情の上に生じる差別と不平等の妄念とは無縁であり、あたかもダイヤモンドのごとく、堅固だから。

②完全な悟りとは、義平等の悟り。その理由は、大日如来の広大無辺の悟りは、大いなる慈悲の心が根源となり、生きとし生けるものすべてを救うために働くから。

③その悟りは、法平等の悟り。その理由は、大日如来の広大無辺の悟りは、その本性が清浄なために、同じく清浄なこの世のありとあらゆる存在や行為に、あまねく行き渡るから。

④その悟りは、業平等の悟り。その理由は、大日如来の広大無辺な悟りは、この世のありとあらゆる存在や行為を、正確に観察して正確に判断しつつも、その判断は私情とは無縁であり、いわゆる分別をはるかに超える、いわば超分別の働きだから。

 

◯第三段(邪悪で救い難い者どもを打ち破って悟りへ導く教え)

・全ての存在や行為は、どのような意味においても両極端を離れ、絶対的に平等であるという認識に基づいて、ありとあらゆる邪悪に打ち勝つ知恵。

・欲望は、その本性をよくよく観察すれば、善とか悪とかいう分別を超えるもの。

・そんな欲望から生じる怒りもまた、その本性をよくよく観察すれば、善とか悪とかいう分別を超えるもの。

・欲望や怒りから生じる愚かしさもまた、その本性をよくよく観察すれば、善とか悪とかいう分別を超えるもの。

・欲望や怒りや愚かしさから生じるありとあらゆる思いや行為もまた、その本性をよくよく観察すれば、善とか悪とかいう分別を超えるもの。

・この世を貫く絶対の真理もまた、その本性をよくよく観察すれば、善とか悪とかいう分別を超えるもの。

・従って、欲望も怒りも愚かしさも、自我意識から解放されて、自在に駆使できるならば、大いなる善の力を生み出し、ありとあらゆる邪悪に打ち勝つことができる。

 

◯第四段(真理をありのままに見抜く教え)

・全ての存在や行為は、どのような意味においても両極端を離れ、絶対的に平等であるという真理を、自在に見抜く知恵を生み出し明らかにする教え。

・ありとあらゆる欲望は、その本性が清浄なのだから、ありとあらゆる怒りはその本性が清浄。

・愚かさが生み出すありとあらゆる心の汚れは、その本性が清浄なのだから、ありとあらゆる罪もまた清浄。

・この世のありとあらゆる存在や行為は、その本性が清浄なのだから、この世の生きとし生けるものもまた清浄。

・この世のありとあらゆる真理を全て見抜く知恵は、その本性が清浄なのだから、究極の知恵もまた清浄。

 

◯第五段(無限の富の教え)

・無限の恵みをそぎ与える知恵の教え。

①無限の恵みを自らも受け取り、他の者にも施し与えれば、皆もろともに、全宇宙に君臨する法王の地位に就くことができる。

②物や金銭を可能な限り人々に施し与えれば、この世の全ての人々の願いは満たされ、不平不満はなくなる。

③正しい仏教の教えを、可能な限り、人々に施し与えれば、この世の全ての人々が真理を体得することができる。

④生きていく上で必要な飲食物を、可能な限り、施し与えれば、人間に限らず全ての動物もまた、飢えから解放され、身体も言葉も精神もことごとくあんな楽な状態になる。

 

 最近仏教系の本を読んでいて思うのですが、良質なアウトプットをするために学んでおり、アウトプットがなければ読んでいる意味もほぼないなと。またインプットなしにアウトプットしていても一定水準以上に質が高まることもない。つまり、インプット、アウトプットが両輪であり、高めていくためにはどちらも必要。ということで、仏教思想もきになるものは実践・実験でまずはやってみよう、考え方を生かしてみようという姿勢を持ちたいものだと思います。

現代語訳 理趣経 (角川ソフィア文庫)

現代語訳 理趣経 (角川ソフィア文庫)

 

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