『易と人生哲学』(安岡正篤)
中国数千百年に渡る天地自然と人間世界の相関をまとめ上げた『易経』。本書ははその思想を昭和を代表する陽明学者であり東洋思想の大家である安岡正篤さんが近畿日本鉄道の幹部向けに10回にわたり講義した内容をまとめた一冊です。易学は「動いてやまない大自然の理法に従って自分の存在、生活、仕事を自覚し創り上げていく道を明らかにした立命の学問である」ことが繰り返しとかれています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯易
・東洋においては最も古い思想学問であると同時に、常に新しい思想学問でもある。要するに易とは、宇宙ーー人間の実体、本質、創造、変化というものを探究したもの。
・「易」という字は「かわる」という意味、「変化する」という意味を持つ。つまり維新。易とは人間、人生、生命などに関する維新の研究、維新の学問。
◯易の三義
①「変わる」
・変わるということは、その根本に変わらないものがあって初めて変わる。その変わる、変転してやまないというそのものを「化」という。
・運命を宿命にすることなく、立命に持っていくこと、これが本当の易。
・自然と人生は大いなる化(大化)。
②「不変」の原理
・変化の原則に従って自ら変化していく
③人間が創造主となって創造していく
・人間が意識的、自主的、積極的に変化していく(化成)
→これらに、「神秘的」「どこまでも終わることのない無限の進行」「足らざるを補い、誤れるを正す」という3つを加え、六義とも言われる。
◯易に基づく人間学ーー四柱推命学
・民間の易に基づく人間学の中で最も内容のある学問。
・人間は何年何月何日何時に生まれる、大きく分けるとこの4つ(四柱)。
・生年、生月、生日、生時の真干支を並べ、生日の干支が一番本人の運命を表しているから、これを中心に、生月の干支は父母兄弟つまり家族を表し、年は先祖あるいは祖父母、そして時間は子孫を表すというふうに決められている。
・干は幹、支はそれから派生する枝。干は十、支は十二あって、これを組み合わせると六十になるから、六十で還暦を迎える。推命学は人間の存在及び生活活動を60の範疇に分けて組み立て、これを生年月日時に照らして推命する。時間までわかると、持って生まれた天分がどういう過程で伸展し変化するかがわかる。
・結論はそれに基づいていかに邪を去り、真を立て、純化大成するかということ。大抵はそこまでいかず宿命的に考える。これを立命的に考えると大変応用の効く、通俗生のあるおもしろいもの。
◯「命」(めい)
・「いのち」も「めい」の一つ。本当の命というものは、「いのち」を含む天地創造の絶対的作用、天地自然人間を通ずる創造、進化、造化などという絶対性を表すもの。だから易は第一に命の学問。
・命には人間というものを超越した絶対者、その象徴が天だから「天命」という言葉概念が出てくる。その天命の中に人間の生命がある。心が拓けてきたというので「性命」となり、天命、生命、性命などの命のつく言葉がいろいろでき、それらを総括して「命」という。
◯「中」ーー総合、統一、進歩
・総合統一されて限りなく変化していく、あるいは進歩向上と観察することもできる限りない造化が進行していく。それが「中」。
・「中する」ということは、現実の矛盾を統一してさらに新しくクリエートしていく働き。
・易は限りなき造化、つまり生命というものを把握して、その中に含まれておる数(因果・相対関係・理法・真理)、複雑微妙な因果関係を明らかにして、どこまでも進歩向上発展に持っていくということ。
◯陰陽相対(待)性原理
・これが本当に腹に入ると、思想で急するということはない。
・陽なき陰も、陰なき陽もない。陰陽というのものは、相対立するとともに、相待つ意味の相対(待)であり、陰があって初めて陽があり、陽あって初めて陰が生きる。
◯五行(木・火・土・金・水)
・五行の創生相剋論が駅の重要な内容の一つ。
・相生:木が火を生じ、火が土を生じ、土が金を生じ、菌が水を生じ、水が木を生ずる(相生関係)。
・相剋:木は土を搾取して成長するから「木は土を剋する」、「土は水を剋する」、「水は火を剋する」、「火は金を剋する」、「金は火を剋する」
◯六十四卦と配列の意義
〜(略)〜
◯人間観察法〜八観〜『呂氏春秋』
①通ずれば其の礼するところを観る
②貴ければ其の進む所を観る
③富めば其の養う所を観る
④聴けば其の行う所を観る
⑤止(いた)れば其の好む所を観る
⑥習えば其のいう所を観る
⑦窮すれば其の受けざる所を観る
⑧賤しければ其の為さざる所を観る
◯人間検査法〜六験〜『呂氏春秋』
①之を喜ばしめて其の守を験す
②之を楽しましめて以って其の僻を験す
③之を怒らしめて其の節を験す
④之を懼(おそ)れしめて其の特を験す
⑤之を哀しましめて以って其の人を験す
⑥之を苦しましめて以って其の志を験す
易は学んでみたいけど、かなり腰を据えて取り組む覚悟がないと難しいなという第一印象でした。しかし、東洋哲学を学べば最後は易に行き着くようです。いつかは学びたい「易」。今はもうちょっと寝かしておこうと思います。が、意外と早く着手したりして・・。