MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

セブンイレブン 金の法則(吉岡秀子)

セブンイレブン 金の法則』(吉岡秀子)

 「ヒット商品は「ど真ん中」をねらえ」というサブタイトルが付された本書。2016年度にコンビニ市場の売上高シェア40%を超え独走態勢に入った、売上高4兆3000億円、平均日販66万円(ローソン・ファミマより10万円以上多い)セブンイレブンのヒット商品を生み出す力がまとめられています。私もセブンイレブンの商品が好きで、特に「金シリーズ」はお気に入りです。理由は、美味しいから。約8500人の従業員の中で商品開発を担う130人の思いに迫る一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯開発者のこころ

・MD(マーチャンダイザー)が見ているのは、世の中、消費者の変化だけ。この頑固さは昔も今も変わらない。もうひとつのキーワードは、「チーム」。セブンの商品開発は専門スキルを持つ複数のメーカー等とチームを組む「チームMD」が基本。

・「見るべきは、競合他社じゃない。止まることない消費者ニーズの変化だ」

・「変わらぬおいしさのために、変わり続ける。これがセブンのものづくりの考え方です」

 

◯セブンカフェ

・興味深かったのは、マシーンをどこから調達すればいいのかではなく、最初から「ゼロから作ろう」という発想だったこと。

・目指したコーヒーの味は、「ど真ん中」だった。薄すぎず、濃すぎず、上質。「みんなに愛されるど真ん中品質のコーヒーを作ろう」というのがチームの目標。

・①完全に自販機のようにするか、②現行のように一旦店員を通して販売するか。「売り方」を模索した。結果、五分五分の売れ行きで、どちらのタイプが有効かの判断はつかなかった。商品本部は、「接客サービスが商売の原点だ」と、②に決めた。これがのちに奏功するとは、当時は誰も思わなかった(後述)。

・アイスカフェラテは「アイスの実」を参考にした。「ミルクを瞬間凍結してはどうか」と。これならミルクのフレッシュさをキープできるし、何より固形なので氷と一緒にあらかじめカップに入れることができ、店も客も扱いやすい。

・ラテはエスプレッソ&ミルクが一般的だが、ドリップコーヒーとミルクの組み合わせでは絶対勝てないのか。一旦行き詰まったが、アイスカフェラテと同じで、適したミルクが市場にないなら、自分たちでゼロから開発すればいい。諦めなかった。

 

◯セブンカフェの副次効果

・毎回、不思議と「おやつ」まで買っている。

・店の雰囲気が優しくなった。

・コーヒー豆を挽く音、香りに癒される。何十年も前、おでんの香りがしたコンビニ店内とは違う。

・セブンカフェを介して、間違いなく店員とのコミュニケーションが増えた。多分開発者たちは、ここまで意識していなかっただろう。新規顧客を取り込んだ功績は大きい。

・缶コーヒー販売量に上乗せする形でセブンカフェが伸びた。コーヒー全体を成長させた。

 

◯商品本部長インタビューより

・女性の方や高齢者の来店が増えてきている。客層が変わってきましたから、当然売れる商品も変わりました。

・ものづくりの姿勢は、昔から全く変わっていません。とことん室にこだわり、おいしいものをご提供する。

・私たちはフランチャイズビジネスです。おいしくなった点、売りやすくなった点など、よくなったポイントが現場である店に伝わらなければ、いくら商品本部が気持ちを込めていい商品を作ったところで結局、消費者の方々まで届かない。ここ忘れちゃいけないんですね。

・「伝えるスキル」って身に付けるのはなかなか難しいのでは?という問いに対して・・。

⇨そんなことないですよ。誰でもできるようになるんです。もし、A子さんがおにぎり担当のMDになれば、セブンのおにぎりのことを考える人間は、何千人もいる社内でA子さんだけなんです。責任重大です。もう、誰よりも、おにぎりについて詳しくならなきゃダメじゃないですか。ものすごいプレッシャーなんですよ。そのプレッシャーの中で、もがき、悩み、チームのメンバーと議論し、メーカーさんからいろいろ教えてもらい、少しずつ自分の考えを持つようになっていく。その思いが自然に言葉になっていくんです。

・ヒット商品を生み出すセブンの強さの原点に関する問いに対して・・

⇨一人ひとりが抱く思い、そして緊張感。取引先と資本の提携はないし、今も役員試食を毎日やっていて、主力商品はここを合格できなければ、売り場に出すことは許されません。常に社内に緊張感があります。心から、セブンがフランチャイズビジネスで良かったと思いますね。もし、妥協した商品を出せば、加盟店の方は必ずそれを見抜き、厳しくご指摘してくれることでしょう。作り手と売り手がいい緊張感を持ち続けている。だからこそ何事にも手を抜かず、思いを込めて価値のある商品を作ることができる。

 

 上記ではセブンカフェをご紹介しましたが、本書では他にも、おにぎり・めん・スイーツ・コスメ・サンドイッチ・カット野菜・セブンプレミアム・本・雑誌についてもまとめられています。おいしさや品質の高さの裏側には、思いと愚直な取り組みがあるという、今も昔も変わらない商売の基本が脈々と続いているのだなと感じました。これからもどんな商品が提供されるのか、とても楽しみです。

セブン-イレブン 金の法則  ヒット商品は「ど真ん中」をねらえ (朝日新書)
 

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