『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(正垣泰彦)(◯)<2回目>
物価高で値上げのニュースが溢れる世の中。そんな中にあって神的存在であり続けているサイゼリヤ。原書は2011年発売ですでに12年に経過していますが、今の時代だからこそ光る内容が見つかるのではないかと思い再読してみました。様々なものの値段が上がるなか、サイゼリヤも例外ではないでしょうが、店舗では、もともと「人時生産性」をいかに高めるかという指標に絞り込んで成果を上げてきたので、その生産性の高さが今の物価高の時代にも強みとなって現れているように思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯店舗の売上
・①立地、②商品、③店舗面積で決まる。
・店長には売上目標を課していない。上記①〜③は店長の責任ではなく、本社の商品開発担当者等の責任だから。店長の仕事は、人件費、水道光熱費など経費をコントロールすること。
・店長にとって最重要の仕事は、過去の売上推移から予測される来店客数と、店舗スタッフの能力から算出される1週間単位のスタッフの総労働時間(=1週間分の人件費)内で、月曜日から日曜日までの人員配置を決め、それを守ること(稼働計画)。
・コスト削減というと、支出の中で無駄を見つけて、それを減らしていくパターンが多いが、それよりも支出額を決めて、それ以上絶対に使わないようにした方が、コスト削減は進む。
◯客数
・おいしい料理とは、売れる料理。ヒットメニューを作るには、①お値打ちで料理に合ったおいしい素材の開発と、②より料理をおいしくする加工方法の開発の2つを極めること。
・お客さまが喜んでくれているかどうかを「客数」という数値に置き換えて考えてきた。
・何らかの事象を観察するときは「なぜ、そうしたことが起きているのか?」と考えるだけでなく、「なぜ自分はそう思うのか?」と何回も自問すること、そうすることで、「売れないのは立地が悪い」→「自分は売上不振を立地のせいにしていないか?」→「悪立地でも繁盛している同規模の店を調べてみよう」という行動につながる。
◯品揃えの3タイプ
①放っておいても売れる商品(6割)
②店が売りたい商品(3割)
③売れないけど、ないと困る商品(1割)
→メニューについては、アイテム数より食材数を意識する。食材ロスが増えたり、作業効率が下がったりするのは、メニューの数の増加ではなく、使用する食材の種類が増えたことによるケースが多い。
◯チェーン店観察(マクドナルドは気づきの宝庫)
・観察するときは、①商品、②設備、③作業、④立地の4分野について、それぞれ100項目ずつ書き出す。
・「なぜその店はそうしているのか?」「なぜ自分の店と違うのか?」を考える。大切なのは話し合うこと。
◯人時生産性
・人時生産性=1日の粗利益額÷従業員の1日の総労働時間
・(例)1日の売上高10万円、粗利益率65%、従業員の労働時間合計25時間
→65,000円÷25時間=2,600円/人時
・飲食店なら、人時生産性は1時間当たり2,000〜3,000円が標準。サイゼリヤの場合、人時生産性は、1時間当たり6,000円を目標としている。すでに店舗の人時生産性は低い店で4,000円、高い店で6,000円に達している。
◯投下資本利益率(ROI)
・投下資本利益率=利益(店段階の営業利益)÷投下資本(出店に要した総投資額)×100
・新規出店の判断は、ROI予測が30%に達するかどうか。少なくとも20%は絶対に確保しなければならないと思っている。
・無駄な投資をせず、設備投資の額(投下資本)を可能な限り減らすこと。内装や厨房機器、保証金などの新規出店のコストはその気になれば半分にできるケースは多い。
◯仕入れは価格よりも品質重視
・食材の品質について下限を決めること。品質の下限とは、こんな食材を使った料理は、お客様に出せない」と感じる品質のこと。契約書にもきちんと書く。検品時は、数だけでなく、質もチェックする。
◯粗利益率を一定に保つ
・そのために必要なのは、意外に聞こえるかもしれないが、料理の味を一定に保つこと。仕入れられる材料の質は毎日微妙に異なる。暇な時間や多忙な時間もある。その中で毎日、どんな時も同じ味にするのは簡単なことではない。
・「いつもよりおいしくできた」とのいうのは実はダメ。同じ味でないと、お客さまは「以前より、おいしくない。味が落ちた」と感じる。
・粗利益のうち40%は人件費、20%は不動産関連費用(減価償却費含む)、20%はその他の経費(水道光熱費等)、20%は営業利益。
・食材に十分なコストをかけることで、粗利益を過剰には取らず、お客さまにかんげんするからこそ、店は長く続けられる。
おいしさを一定に保つ努力と人時生産性の追求。店づくりと人づくりが高い次元で両立しているからこそ、あのお店でのパフォーマンスが発揮されるのだと、あらためてサイゼリヤの強さを感じました。サイゼリヤの強さは、デフレ時代より、今のような物価上昇局面の方が感じやすいと思います。気づきが多く考えさせられる一冊でした。