『無意識の整え方』(前野隆司)
本書は、幸福について研究されている日本の第一人者、慶應大学前野教授の対談集です。対談相手は、①心身統一合気道会会長、②僧侶、③森のワークショップを開催するプロコーチ、④医師。
それぞれの専門家が無意識についてどう捉えているのか。無意識を整え、無意識に委ねるコツと、そこから生まれる未来を探った一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯「氣」
・氣は、誰もが持っていて、誰でも活用できる、生命の根源。
・氣は通うもの。氣の交流が活発な状態を日本語では、「元気」といい、滞ると「病気」という。これが完全に途絶えた状態が、生き物では「死」。
・相手を倒すことが目的だと、相手に抵抗されてしまう。もし相手の方が体格や強さが優っていたら、技をかけるのは大変。だから、考え方を変えて、「大丈夫ですか?」と相手を介助しているような気持ちと体勢で組む。「氣を通わせる」状態。すると相手と一緒に動くことになり、体格や力の強弱に関係なく、投げたり、倒すことができるんです(相手がひっくり返る)。同じようにやってみてくださいと言っても、なかなか思い通りにいかないと思う。表面の形だけで取り繕ってもダメ。「大丈夫ですか?」と口では言ってみても、潜在的な無意識のところが違うとうまくいかない。その無意識の部分を変えていくような稽古を行う。
◯ポジティブ
・プラスの言葉や記録を無意識である「心の倉庫」に入れましょう。具体的なやり方の一つは、プラスの言葉を口にすること。できる限りマイナスな単語や表現を使うのをやめ、つい口に出してしまったときには、すぐにプラスの言葉に置き換えて訂正する。
・プラスの記録をつけること。1日の終わりに「できなかったこと」「失敗したこと」を思い返しがち。そうでなく、毎晩、その日に「できたこと」「よかったこと」を例えば5つ以上記録したり、思い出す習慣をつける。
・マイナスの観念は、「フッ」と息を拭いて吹き飛ばす。「息を吹くとマイナスの観念が全て吹き飛んで、プラスの観念に変わる」と決めて、その回路を自分の中に作っておく。観念は止められない。生じないようにするのは不可能だから、生じた瞬間にすぐ対処できる方法が必要。
◯心身分離と心身一如
・本来心と身体は一つのもの。ところが我々は日常生活で心と身体をバラバラに使っていることが多いもの。「やりたくないな」と思いながら仕事や勉強をしたり、「行きたくないな」と思いながら、どこかへ行かなければならなかったり、そういう時は疲れやすいし、能率も悪い。
・心身分離:自分の心を十分に目標に向けずに身体だけを使っている。
・心身一如:心と身体が同じ方向を向いているから能率も上がる。
⇨「ありがとう」や「ごめんなさい」などという言葉を心がこもっていない態度で発したら、相手はどう感じるでしょう。私たちはその発話より先に、その人が発している「氣」を感じている。その氣と後から聞いた発音が一致しているかを確認する作業を、我々は無意識のうちにいつもやっている。
◯氣の通う「いってらっしゃい」
・「いってらっしゃい」という言葉には本来「気をつけて、いって戻っていらっしゃいね」という気持ちがこもっている。氣が通った状態で声をかければ、子供の潜在意識にも「行って、帰ってくる」という気持ちが入る。ちゃんと顔を見て、当たり前のように氣を通わせる。これも「心身一如」
◯心身統一合気道会会長の「無意識を整える習慣」
・無意識に入るまで「型」を繰り返し稽古する。
・プラスの言葉を使い、プラスの記録をつける。
・不安を感じたら、フッと息を吹いて、マイナスの観念を吹き飛ばす。
・心と体を一つに用いる「心身一如」を心がける
・自然で安定した姿勢を理解し、実践する。
・臍下の一点に心を静め、深くて静かな呼吸を行う。
・「集中」はするが「執着」はしない。
◯僧侶の「無意識を整える習慣」
・念仏を唱える。コーリングを聞く。
・自分の存在を「ご縁」で成り立っていると認識する。
・感情を手放し「◯◯の感情が湧いてきたようだねぇ」と客観視する。
・毎朝、「今日が人生最後の日だったら何をするか」と考える。
・呼吸や身体感覚に意識を向け、「今、ココ」にいるようにする。
・必要最小限のものだけを持ち、シンプルに過ごす。
・掃除をしたり、ものをあるべき場所に置いたりして環境を整える。
・真剣であっても深刻になりすぎず、「これでいいのだ」と思う。
◯森のワークショップを開催するプロコーチの「無意識を整える習慣」
・委ね、手放し、任せる。
・ゆっくり歩き、ゆっくり話し、ゆっくり呼吸する。
・感覚を鋭敏にして開き、考えずに感じる。
・わかろうとし過ぎず、わからないままにしておく。
・漠然とした思いつきに名前をつけ、忘れないようにする。
・一点を注視知るのではなく、ワイドアングルビューで視る。
・「森だったらどうするだろうか」と考えてみる。
・森に行く。
◯医師の「無意識を整える習慣」
・子供の頃に考えていた根源的な問いを思い出してみる。
・古来の伝統や学問に親しみ、その本質を再発見してみる。
・美や芸術に触れ、道を究め、人間性を深める。
・「みずから」と「おのずから」のあわいを感じてみる。
・宇宙の視点と顕微鏡の視点を行き来してみる。
・自分の体や心と対話してみる。
・自然と触れ、自分がその一部であることを感じてみる。
それぞれの道のスペシャリストが考える無意識の世界。それを、目に見える世界に役立てていること。対談の中に垣間見えるそんな世界がおもしろいかも!って思える内容でした。
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