『新聞大学』(外山滋比古)
新聞を読みこなして、まるで新聞を使った大学生活を毎日過ごしているような世界を目指した一冊です。
いくつになっても、誰でもどこでも学べる最良のテキストが「新聞」。もともと社会の木鐸を任じていた新聞を生かせば、自己研修は決して夢ではない。新聞大学のテキストは日替わりで、毎日じっとしていても、手元に届くようになっている。成果はそこで学ぶ一人ひとりの心がけ次第。石と努力があれば、新聞大学は一般の教育機関のできないことを成し遂げるかもしれない。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯見出し読み
・はじめは見出しだけを読むようにする。記事本体は読まない。
・見出しは簡潔で含蓄が多くて、慣れないとわかりにくいものが少なくない。そしたら、記事本体のリード(導入部)をみる。リードを読んでも、よくわからない記事はあきらめる。いつまでもこだわっていては、後がつかえる。
・わからなくても、おもしろくなくても、はじめから、全てのページに目を通す。
◯標準語
・新聞大学は、毎日、標準的日本語の散文を提供している。それに親しんでいれば、散文に対する目が養われる。それだけでなく、理知的なものの見方、考え方を身につけるようになる可能性は大きい。俗に言えば、頭が良くなる。
◯疑問
・小さくてもいい。心にかかる問題を捉える疑問をもち、自分を高めることを心がけるのが良い学生である。自分の目で見て納得し、わからないこと、おかしなことは疑う力をつけることを目指す。
◯立つことば、寝ることば(縦書き、横書き)
・公文書が横書きになってから60年を越すが、新聞のタテ組みはビクともしない。それがどれくらい新聞への信頼に繋がっているかしれない。
・もう一つ新聞の読みやすさを支えているのが、一行の字数が少ないことである。
・いくら一行の字数を減らしてみても、横組みでは、あまり読みやすさの効果がない。やはり、日本語は立っているべきであろう。
◯ 社説
・新聞大学で新しい知識を求め、視野を広げようとしているものにとっては、社説は最も大切な読み物である。
・新聞の社説は極めて貴重である。知的な散文に最も近いと言ってよい。論理というものが美しいと感じる教養をつけるには、さしあたって、新聞の社説が最も手近で、わかりやすいテキストとすることである。
◯経済知識
・少なくとも、もっと経済を知らなくてはならない。と言って、ほかに、教えてくれるところはない。専門の経済誌など存在もわからないし、読んでも、まるでわからないだろう。しかしながら、現代、最小限の経済知識は必要である。それを教えてくれるのは、さしあたり新聞以外にない。
◯切り抜き
・ノートに書き取ったものは、利用がしにくい。トピックも散らばっている。まとめるのが厄介である。ノートは骨を折って作っても、利用されないことが多い。それに対してカード方式は便利で、あとでトピックごとにまとめることも簡単にできる。
◯ひとつでは多すぎる
・とにかく、併読紙を持つか持たないかは大きな問題である。軽い気持ちで、もうひとつ新聞を購読するなどということは、考えにくい。やはり、ものの考え方にかかわってくる。
・ひとつの新聞しか見ていなければ、その新聞の考え方、見方、価値観に、縛られるという自覚もなく縛られている。
・併読紙があれば、いやでも、新聞の持っている個性、傾向などが目に見えるはずで
それによって、読者は新しい知的個性を育むことができるはずである。
・併読紙を持つことで、新聞大学に学ぶものは、大学院へ進むことになる。
・毎日、30ページを超す新聞を二つも購読するのは大変なことであるが、一紙では得られないものがあることを発見できるのが、新聞大学の大学院である。
◯生活習慣
・小中高の教育が曲がりなりにもうまくいっているのは、しっかりした、時間割に基づいて行われるからである。週末は休みになるが、その過ごし方で、学力に大きな差を生ずる。
・成人は学校へ通う子供より、生活習慣がルーズになりやすい。生活習慣を考える人は少ないのである。新聞大学はそういうのんびりした生活の中では、そもそも、成立しない。しっかりした生活習慣をこしらえ、その中で、持続的に努力する必要がある。
◯朝学
・だいたい朝は頭がいい。ひと晩寝て、頭の中のゴミは消えている。清々しい頭になっているだろう。つまらぬことに使いたくない。新聞でも、社会面の愚にもつかない犯罪に付き合っていてはもったいない。夜なら見る気にもならないかもしれない、社説、論説に挑戦する。よくわからなくても、ときに、おもしろい、おもしろそうだと思うことができる。
最近は新聞の購読が減っているようです。電子版を見る人が増えていると思いますが、電車の中でも髪の新聞を読んでいる人は確かに少ないですね。この情報量の詰まった冊子をテキストとして生涯学習につなげようという本書。背景知識のベースが作れられていれば作られているほど、楽しく深く読めると思いますが、よく知らない分野についても知るきっかけになるのが新聞の良いところ。新聞には新聞の良さがあるので、うまく活用していきたいですね。