MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

経営者の条件(P.F.ドラッカー)

『経営者の条件』(P.F.ドラッカー)(◯)<5回目>

 1966年に発行された本書。言わずと知れた名著中の名著です。もうかれこれ5回目くらいですが、毎回気づき、学びが多数あります。本中、線だらけになっています。「経営者」とありますが、ビジネスリーダー、管理職にとどまらず、セルフコントロールという意味でも役立つ一冊です。50年以上経っても色あぜず、本質的に大切なことを教えてくれます。まだ読んでいない方がいらっしゃれば、ぜひお勧めしたいです。私は、管理職に昇格する知人や部下にプレゼントするなら、この本にしています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯成果を上げるための8つの習慣

(1)知るべきことを知る

①なされるべきことを考える

・何をしたいかではない

・手を広げすぎてはいけない。一つのことに集中する。

②組織のことを考える

・組織にとって良いことは何か

・同族企業が繁栄するには、同族のうち明らかに同族外の者よりも仕事ぶりの勝るもののみを昇進させなければならない。

(2)成果を上げる

③アクションプランをつくる

④意思決定を行う

・マネジメントに優れた組織では、人事の失敗は、異動させられたものの責任ではないことが理解されている。

⑤コミュニケーションを行う

⑥機会に焦点を合わせる

・問題ではなく機会に焦点を合わせることが必要。

・変化を脅威ではなく機会として捉えなければならない。組織の内と外に変化を見つけ、機会として使えるかどうかを考えなければならない。

・機会に焦点を合わせるには人事が重要。一流の人材に問題ではなく、機会を担当させなければならない。そのための方法の一つが、半年に一回、機会のリストと仕事のできる者のリストを持ち寄ることである。

⑦会議の生産性を上げる

・会議の生産性を上げるには、事前に目的を明らかにすることが必要。

(3)組織内の全員に責任感をもたらす

⑧「私は」ではなく「われわれは」を考える

・最終責任は自らにあることを知らなければならない。

・トップが権威を持ちうるのは、自らのニーズと機会ではなく、組織のニーズと機会を考えるからである。

 

◯成果を上げるために身につけておくべき5つの習慣的な能力

①何に自分の時間が取られているかを知ること

②外の世界に対する貢献に焦点を合わせること

③強みを基盤にすること

④優れた仕事が際立った成果を上げる領域に力を集中すること

⑤成果を上げるように意思決定を行うこと

 

◯汝の時間を知れ

・成果を上げる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。

・時間を記録する、整理する、まとめるの3段階にわたるプロセスが、成果を上げるための時間管理の基本。

・時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除する3つの方法

①する必要の全くない仕事、なんの成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てること

②他の人間でもやれることは何かを考えること

③自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除すること。

・時間の1/4以上が会議に費やされているならば、組織構造に欠陥があるとみて良い

・成果を上げるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。大きくまとまった時間が必要なこと、小さな時間は役に立たないことを認識しなければならない。

 

◯どのような貢献ができるか

・成果を上げるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。目標に目を向ける。貢献は何かを問う。責任を中心に据える。

・肩書きや地位がいかに高くとも、権限に焦点を合わせる者は自らが誰かの部下であることを告白しているに過ぎない。

・「どのような貢献ができるか」を自問しなければ、目標を低く設定するばかりでなく、間違った目標を設定する。何よりも自らが行うべき貢献を狭く設定する。

・ゼネラリストについてのいいある唯一の定義は、「自らの知識を知識の全領域に対して正しく位置付けられる人」である。

・自らの貢献に責任を持つ者は、その狭い専門分野を真の全体に関係づけることができる。

・貢献に焦点を合わせることによって、①コミュニケーション、②チームワーク、③自己開発、④人材育成という、成果を上げるうえで必要な4つの基本的な能力を身につけることができる。

 

◯人の強みを生かす

・優れた人事は人の強みを生かす。弱みからは何も生まれない。組織といえどもそれぞれが持つ弱みを克服することはできない。しかし組織は、人の弱みを意味のないものにすることができる。

・弱みに配慮して人事を行えば、うまくいったところで平凡な組織に終わる。

・できることではなく、できないことに気を取られ、弱みを避けようとするものは弱い者である。おそらくは強い人に脅威を感じるのであろう。

・組織とは、強みを成果に結びつけつつ、弱みを中和し、無害化するための道具である。

・仕事を客観的かつ日属人的に構築しなければならない。これこそが組織が多様な人間を確保する唯一の道だからである。人に合わせて仕事を構築するならば組織は情実と馴れ合いに向かう。

・人に合うように仕事を設計するという陥穽に陥ることなく強みに基づいた人事を行う4つの原則

①適切に設計されているか

 特殊な気質を要求する仕事は、不可能な仕事、人を殺す仕事となる。組織を評価する基準は天才的な人の有無ではない。平凡な人間が非凡な成果を上げられるか否かである。

②多くを要求する大きなものか

③その人間にできることか

④弱みを我慢できるか

 

◯最も重要なことに集中せよ

・成果を上げるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果を上げる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。

・トップ本来の仕事は、昨日に由来する危機を解決することではなく、今日と違う明日を作り出すことであり、それゆえに、常に後回しにしようと思えばできる仕事である。

・状況からの圧力は、未来よりも過去を、機会よりも危機を、外部よりも内部を、重大なものよりも切迫したものを優先する。

・優先順位の決定の原則

①過去ではなく未来を選ぶ

②問題ではなく機会に焦点を合わせる

③横並びではなく独自性を持つ

④無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ

 

 ◯意思決定とは何か

・成果を上げるには意思決定の数を多くしてはならない。重要な意思決定に集中しなければならない。個々の問題ではなく根本的なことについて考えなければならない。問題の根本をよく理解して決定しなければならない。不変のものを見なければならない。したがって、決定の早さを重視してはならない。

・決定のプロセスで最も時間がかかるのは、決定そのものではなく、決定を実施に移す段階である。決定は実務レベルに下ろさない限り決定とは言えず、よき意図に過ぎない

・意思決定の5つのステップ

①問題の種類を知る

 一般的な問題か、例外的な問題か。基本的な問題は、原則と手順を通じて解決しなければならない。例外的な問題は、状況に従い個別の問題として解決しなければならない。

1)基本的な問題の兆候に過ぎない問題

2)当事者にとっては例外的だが実際には基本的、一般的な問題

3)真に例外的で特殊な問題

4)何か新しい種類の基本的、一般的な問題の最初の表れとしての問題

②必要条件を明確にする

 「決定の目的は何か」「達成すべき目標は何か」「満足させるべき必要条件は何か」を明らかにしなければならない。

③何が正しいかを知る

 決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、誰が正しいか、何が受け入れやすいかという観点からスタートしてはならない。満たすべき必要条件を満足させるうえで何が正しいかを知らなければ、正しい妥協と間違った妥協を見分けることもできない。その結果、間違った妥協をしてしまう。

④行動に変える

「誰がこの意思決定を知らなければならないか」「いかなる行動が必要か」「誰が行動をとるか」「その行動はいかなるものであるべきか」

⑤フィードバックを行う

 

◯成果をあげる意思決定とは

 ・成果をあげる者は事実からスタートできないことを知っている。誰もが自分の意見からスタートする。しかし、意見は検証の仮説に過ぎず、したがって現実に検証されなければならない。そもそも何が事実であるかを確定するには、有意性の基準、特に評価の基準について決定が必要である。これが成果をあげる決定の要であり、通常最も判断の分かれるところである。

・したがって、成果をあげる決定は、決定についての文献の多くが説いているような事実についての合意からスタートすることはない。正しい決定は、共通の理解と、対立する意見、競合する選択肢をめぐる検討から生まれる。

・最初に事実を把握することはできない。有意性の基準がなければ事実とういうものがありえない。事象そのものは事実ではない。

・意見の不一致が必要な3つの理由

①組織の囚人になることを防ぐ

②選択肢を与える

③想像力を刺激する

・意思決定は本当に必要かを自問する必要がある。何も決定しないという代替案が常に存在する。

・絶対にしてはいけないことがある。もう一度調べようとの声に負けることである。それは臆病者の手である。臆病者は勇者が一回死ぬところを1000回死ぬ。「もう一度調べよう」という誘惑に対しては、「もう一度調べれば、何か新しいことが出てくると信ずべき理由はあるか」を問わなければならない。

 

 それにしても、50年経っても本質的なことは色褪せないということを感じます。何度読んでも発見があり、その時の自分と照らし合わせて学びがある本書。数少ない自分の中での殿堂入り本ですが、今回5回目を読んでみて、改めて、やっぱり殿堂入りの一冊だということを実感しました。 

ドラッカー名著集1 経営者の条件

ドラッカー名著集1 経営者の条件

 

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